通信確認。
……これが、表のタイムラインには絶対に流せない、この世界の真の『アジャスト(裏取引)』のログだ。読者サピエンスのみんな、ここから先はスクショ禁・ログ完全秘匿で頼む。
悪のヤクーツクサピエンスどもが構築したこの監視世界線なら、このパケットも同期可能か?
俺の暗号化端末に日本国政府の最高中枢から直のホットラインが入った。
『――ロシア当局へのビザの特例対応、感謝する。手筈通り、あの2人は日本から出国(パージ)させる。条件は分かっているな? 我が国への天然ガスを、もっと、圧倒的に安く安定供給してもらおう』
これが、俺たちの出国の裏で交わされた、国家間の物々交換のリアルだ。
そして、それだけじゃない。
ついさっき、モスクワ中央から直接ノイズ混じりのログが叩き込まれた。
『有能なパーツ(怜と歩実)を失ったな、日本国政府。我々はお前たちが思うほど愚かではない。――思い出してみるがいい。人類史上初めて地球外(宇宙)に出られたのはなぜか? それは、当時の欧州でまともに研究を評価されなかった無名の「モブサピエンス」たちを、我が国が徹底的にヘッドハンティングし、その脳内メモリを極限まで絞り尽くした結果だ。待っているよ、ヤクーツクで。2人のサピエンス』
鳥肌が立った。
世界を暗黒に陥れたAIファイアウォールも、この「見捨てられたモブたちの復讐」の延長線上にある。
……あいつらは、俺たちを最初から狙って泳がせている。
ヤバい、これ以上はログが追尾される。
ウラジオストクに上陸した瞬間、世界線のハッキング(第2章)を本格的に開始する。
通信終了。