『孤児院の魔法少女は、本当の名前を知らない 〜未明のルミナリア〜』
第69話「二度目のおかえり」を公開しました。
※今回は、第69話の内容に少し触れています。
前話の橋に続いて、今回は紙の舟です。
「舟なら、橋がないところも渡れる」
悠太のこのひと言から、窓際の卓で舟作りが始まります。
ただ、ましろが折っている途中の紙は、ねむには帽子に見える。悠太はレムならかぶれるかと考え、離れた卓からレムが話に入ってくる。
舟を一つ作るだけなのに、ずいぶんにぎやかになりました。
こういう場面では、誰かが面白いことを言おうとしているというより、それぞれ気にしているところが違うのだと思います。ましろは舟を完成させたいし、悠太は早く形を見たい。レムは、自分の知らないところで帽子をかぶせられる相談をされたくない。
その少しずつ違う目線が、会話になっていくところを書いていて楽しいです。
ヨルも相変わらず短い返事ですが、必要なところではちゃんと手を貸してくれます。レムとの言い合いを楽しんでくださっている方には、今回も読んでいただきたい場面があります。
さて、題名は「二度目のおかえり」。
前話で交わした短い挨拶が、今回は別の響きを持ちます。
聞き覚えのある言葉なのに、安心して振り向けない。
ついさっきまで笑い合っていた場所で、その感覚が生まれてしまう。
ただ、不思議な出来事が起きたからといって、最初に挨拶を交わした二人の時間まで、なかったことにはしたくありませんでした。
帰ってきた相手へ向けて言ったこと。
その相手が、確かに受け取ったこと。
声の仕組みについては分からないままでも、二人の間で確かめ直せることはあります。今回は、そのやり取りも大切にしています。
そして、途中になってしまった紙の舟。
名札の持ち主が角を押さえ、ねむが折り目を見て、悠太が手を動かす。一枚の紙に、それぞれの手が加わっていきます。
最後にヨルが何をするのかも、見届けていただけたら嬉しいです。
いつも、ましろたちの続きを楽しみにしてくださってありがとうございます。
これまで読んできた方にとって馴染みのある呼び方や話し方、その人らしい振る舞いを大切にしながら、物語を進めていきたいと思っています。
第69話「二度目のおかえり」、どうぞお楽しみください。