第20話「返せない名前」を公開しました。
今回は、黒鐘ヨルの核心にかなり近づく回です。
第19話の終盤で現れた、白木の箱。
その中から聞こえた「ただいま」という声。
そして、その声が続けて呼んだ名前。
「ヨル」
第20話では、その声をきっかけに、
燐灯堂がヨルへ突きつける対価が明らかになります。
黒鐘ヨルの返せない名前。
それは、ヨル自身の名前なのか。
ヨルが返せなかった誰かの名前なのか。
あるいは、もう呼ぶことすらできなくなった何かなのか。
ましろたちは、まだその正体を知りません。
けれど今回、はっきりすることがあります。
ヨルの怒りは、ただ壊すためだけのものではないということ。
怒りを売れば、楽になるかもしれない。
眠れる夜が来るかもしれない。
黒い鐘の音を聞かずに済む朝が来るかもしれない。
それでもヨルは言います。
「売ったら、誰が怒るの」
この一言は、第20話の大事な芯になりました。
忘れた人は笑う。
売った人は眠る。
店は灯りを増やす。
星骸は殻になって、砕かれるまで食い続ける。
だから、自分が怒る。
ヨルの怒りは、記憶の代わりであり、
墓標であり、
売られた名前を最後まで見張るためのものでもあります。
そして今回は、ましろたちが「買い戻す」のではなく、
「差し止める」という選択をします。
返せない名前を無理に返さない。
でも、店にも渡さない。
消さない。
壊さない。
なかったことにしない。
そのために、ましろはヨルの怒りを“売る”のではなく、“借りる”ことを選びます。
怒りの型。
星の護符。
未帰還の言葉、一時預かり。
かなり危うい方法ですが、
それでも、今すぐ燐灯堂の灯りにされることだけは止める。
第20話は、そんな一話になりました。
終盤では、ヨルの名札に一文字だけ浮かびます。
「あ」
ましろはそれを忘れない。
でも、勝手には呼ばない。
この約束は、今後のヨル編で大事になっていきます。
満月まで、あと二夜。
燐灯堂との戦いは、まだ終わりません。
読んでいただけたら嬉しいです。