完結しました。ずっと短編しか書いてこなかった作者の、初めての中編です。
一応、素人なりにも真剣に小説と向き合っているつもりではありました。しかし小説を書く人間として、自分には沢山の課題がある。
①沢山の文字数を書けない。6000字ぐらいで息切れする。
②こまめに書けない。
③ストーリーを仕立てる力が弱い。
これらを克服する、あるいは少しでも改善するために、今回の連載に挑戦した。
①中編を書く。目安としては、メフィスト賞の応募企画である34000字越えを目指した。達成できた。やったね。
②毎日投稿という連載形式にした。理由は2つ。
1つ目は単純に毎日書く習慣を付けるため。自分はいつも思いついたらわっと短編を書いて、その後半年ほど何も書かない。筆を執ることすらしない、ということを繰り返していた。知り合いの物書きさんは毎日少しずつ書いているらしく、素直に尊敬した。そして自分もそんな風になりたいと思った。
もう1つは話を面白くするためだ。というのも、普通に書いているといつもの癖で1話6000字でその中に起承転結がぎゅっと入っているような少しカロリー高めの構成になってしまう。「天下一品」のラーメンは美味しいが毎日食べられるかと言われると難しい。
毎日投稿という制限をかすことで、無理矢理1話2000字ほどにせざるを得ない状況にした。また、2000字程度ではその中で1つの話を終わらせることは難しい。途中で話が切れることになってしまう。そこで、2000字置きに読者を楽しませるための「引き」を作る必要がでてくる。起承転結という大きな波の中に、さらに小さな波をつくることで読者に楽しんでもらう。これは長編を書くときにも必要になってくる技術だと思っている。そういう書き方を身につけるために、毎日投稿という形式を採用した。まあ出来なかったんですけどね……。
ちなみに日本で伝説的な人気を誇る夏目漱石の小説『こころ』も連載形式だったらしい。やっぱり連載形式は最強なんですよ。
③短編を書くときはいつも、思いついたことをそのままわーーっと書き切ることで完走していた。しかし中長編となってくると、そう簡単にはいかなくなる。特に自分は脳のメモリが少ないため、頭の中で整合性を取りながら文章を書き続けるということが出来ない。致命的に出来ない。
そこで文章のファイルとは別にプロット用のファイルを作り、そこに全てのシーンを書いていった。そうして入念に準備した上で書き始めるという経験を積んでおこうと思った。
これについては、本文を書いているうちに小説の動力のようなものに引っ張られてしまいプロットから乖離したため、1週間休刊するはめになってしまった。
今回の小説にチャレンジした技術的な理由はこのような感じだ。
あとは小説の内容についてすこしだけ。読んだことがある人がどれだけいるかは分からないが、今回の小説はスタニスワフ・レムの『ソラリス』と坂口安吾『白痴』からインスピレーションを得て書いた。
ソラリス成分。好きな人について自分はどれだけ理解できているのか。外見以外がそっくりそのまま変わってしまったとして、その人を愛することは出来るのか。愛することは正しいのか。その愛は誰に対して向いているのか。そんな感じの問いを立てました。
白痴成分。コミュニケーションが上手く取れない相手との愛は正しいのか。という問い。そして逃避行。愛のために行動しているものの、どこか自分本位な主人公。その辺りを書きたいと思った。
これらの問いやシチュエーションを書きたいと思い、本作が生まれることになった。アイデア自体は、物書きの友人に語ったことがあるものをベースにしている。あの時「いいじゃないか」と言ってくださったことが今に繋がっています。
ただ、自分は「問いを立てるのは好きだが答えを出すのは苦手」というホーキング博士タイプなので(思い上がりが過ぎる)きちんと答えを出せずにうやむやになってしまった問いも多い。読者の皆さんがその先について思いを馳せるお手伝いが出来ていたら幸いです。
自分は二次創作でも一次創作でも短編しかやってこなかったこともあり、「上げて落とす!」「下げて突き上げる!」という構造の話しか書けなかった。世界中の人々を楽しませている映画のような、プロットと構成によって観る人を振り回して楽しませるようなストーリーを作りたい。自分は小説という媒体を通して現実世界に訴えたいことが沢山ある。しかしそのまま文章にして世に送り出してしまえばそれはただのプロパガンダだ。自分がやりたいのはそういうことではない。
「伝えたいこと」という「薬」を「ストーリー」という「おくすりのめたね」によって包み込んで、美味しく飲み込んでもらいたい。楽しむと同時に世界に対する何らかの問いかけをほんの少しでも読み取ってもらえたら、物書きとして、そしてこの時代の参加者として、こんなに嬉しいことはないです。
最後に。
読んでくださった方、応援してくださった方、感想を送ってくださった方、皆さん本当にありがとうございます。皆さんの助けがあったからこそここまで完走することができました。さらに精進して、より楽しめる小説を目指していきたいと思います。よろしくお願いします。