最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
「遠い記憶の家」は、約12万字に及ぶ長編となりましたが、無事に完結することができました。これも、最後までお付き合いいただいた皆様のおかげです。
この物語について
この物語は、いくつかのテーマを織り交ぜながら書き進めました。
罪と償い──子供の頃に犯した過ちを、大人になってどう償うのか。
記憶と真実──忘れられた記憶の中に隠された、痛ましい真実。
赦しと再生──被害者と加害者という境界を越えた、本当の赦しとは何か。
愛の力──憎しみや呪いを超える、愛の力の可能性。
特に力を入れたのは、冬子というキャラクターの描写でした。彼女は単なる被害者ではなく、自らの運命を受け入れ、それを意味あるものに変えようとした強い少女として描きたいと思いました。最初は恨みの対象として登場した彼女が、徐々に物語の核心となり、最終的には希望の象徴となっていく──その変化を丁寧に描けたのではないかと思います。
キャラクターたちについて
美咲は、この物語の中で最も成長したキャラクターです。過去の罪に苦しみ、自分を許せなかった彼女が、冬子の真実を知り、仲間と共に償いの道を歩み、最終的には母となり、次の世代に想いを繋いでいく。その成長の軌跡を描くことができて、作者として嬉しく思います。
健二は、美咲を支える存在として登場しましたが、彼自身も物語を通じて成長しました。理性的な精神科医でありながら、超自然的な現象を目の当たりにし、愛する人のために戦う──そんな彼の姿を描けたことは、大きな喜びでした。
太一とゆかりは、美咲と共に罪を背負った仲間として、それぞれの形で償いの道を歩みました。彼らが最終的に結ばれたのは、過去の痛みを共有した者同士だからこそ、互いを深く理解し、支え合えると考えたからです。
雅人は、当初は復讐者として登場する予定でしたが、書き進めるうちに、彼自身も苦しんでいる被害者であることに気づきました。妹を失った悲しみを抱えながらも、妹の想いを実現するために尽くす──そんな彼の姿は、作者自身も予想していなかった展開でした。
桐谷は、物語の中で冷静な視点を提供する役割を担いました。カウンセラーとして、また霊的な存在との橋渡し役として、彼女がいたからこそ、物語が深みを持てたのではないかと思います。
そして翔や麻衣──彼らは直接登場することは少なかったですが、彼らの存在が、この事件の重さと広がりを示してくれました。
「冬子の家」について
物語の核となる「冬子の家」は、単なる児童福祉施設ではありません。それは、過去の痛みを未来の希望に変える場所であり、罪と償いの象徴であり、そして愛の具現化です。
実在する多くの児童福祉施設や、虐待やネグレクトから子供たちを守る活動をされている方々へのリスペクトを込めて、この施設を描きました。現実の世界でも、「冬子の家」のような場所が増えていくことを願っています。
ホラーと希望の両立
この物語は、ホラー小説として始まりましたが、最終的には希望の物語として終わりました。
恐怖や絶望だけで終わらせるのではなく、それを乗り越えた先にある光を描きたかった──それが、私の最も強い想いでした。
冬子の呪いは、実は愛だった。
鬼との戦いは、実は自分自身との戦いだった。
過去の傷は、未来への糧となった。
そんなメッセージを込めることができたなら、作者として幸せです。
書き終えて
三十話という長い物語を書き終えて、今は達成感と同時に、少しの寂しさも感じています。
美咲たち、冬子、そして「冬子の家」の子供たちとの別れは、作者にとっても感慨深いものでした。
でも、彼らはきっと、この物語の世界の中で、これからも生き続けているでしょう。
「冬子の家」には、今日も新しい子供たちがやってくる。
そして、スタッフたちが温かく迎え入れる。
夜空には、冬子の星が輝き続ける。
そんな光景を想像すると、自然と微笑みがこぼれます。
最後に
この物語を読んでくださった全ての方に、心から感謝申し上げます。
もし、この物語が少しでも皆様の心に残るものであったなら、それは作者にとって最高の喜びです。
そして、現実の世界で苦しんでいる子供たち
が、いつか「冬子の家」のような場所で笑顔を
取り戻せることを、心から願っています。
みんなが笑顔でいられる世界になりますように
──冬子
この言葉が、読者の皆様の心にも、小さな光を
灯すことができたなら幸いです。
本当に、ありがとうございました。
「遠い記憶の家」
作者:菊池まりな