書いたあとAIに添削してもらうのが日課ですが、今日のはあまりに出来が良いんで、修正せずにAIフル版をこっちに載せます。
うーむ、私の完敗や。
「ご隠居! 大変だ、ご隠居!」 うるさい男は足音さえやかましい。ガラリと障子が開く。 息をきらせて飛び込んできたのは、長屋の八兵衛だ。額にはだらだらと汗をかいている。「どうしたんだい八、そう血相を変えて」 ご隠居は渋い顔で、手元の湯呑みを置いた。「アメリカの大統領がお縄になったって、瓦版に出てまさぁ!」「なんだって!?」 八の言うアメリカの大統領ってのは、なかなかの曲者(くせもの)だ。 なんでも「地球ってのは平べったい板のようなもんで、アメリカの奴らが太陽を脅しつけ、無理やり空を行ったり来たりさせて丸い球体に見せかけている。人類は騙されているんだ!」と主張した学者先生たちを、「デマを流して民を惑わした」ってな罪で、次々と牢屋にぶち込んでいたらしい。 よその国のことなんざ知ったこっちゃねえ江戸の町民たちも、これには「そりゃあ横暴だ!」と怒り心頭だった。 その大統領が、とうとう失脚したという。「ってぇことはご隠居、地球は平てぇって言ってた学者先生たちもシャバに出てくるね。そんで、無理やり働かされてたお天道(てんとう)さまも、ようやく自由の身になるわけだ」「なんだい八、お前さん、地球平面説(ふらっとあーす)を知っていたのかい?」「あたりまえよ! あっしを誰だと思ってやがんでぃ」「いやいや見直したよ。八のくせに感心感心。……だがねぇ、八。自由になったお天道さまがどうなるか、考えてごらん。空のどこに腰を据えるかは分からねぇが、しばらくは疲れ果てて動きたかねぇだろうよ」「じゃあ、お月さんや星はどうなるんで?」「そりゃあみんな、どっかでピタリと止まるだろうねぇ」 翌日、ご隠居の予言は最悪の形で的中した。 お天道さまは、江戸の空の西側、ちょうど夕暮れの手前あたりでぴたりと止まったきり、びくとも動かなくなってしまったのだ。 さあ、困ったのは人間だ。これまで太陽の動きに合わせて「暮れ六つ」だの「明け六つ」だのと決めていた日時計が、丸っきり役に立たねぇ。 そこで御公儀(ごこうぎ)が引っ張り出してきたのが、オランダ渡りの「振り子時計」ってぇ機械だ。これからは、この機械の刻む秒針に合わせろという。 これが、すべての時計が同じ時間を指し始めた日の始まりだった。 お天道さまが西に張り付いたまま、街が静まり返っている朝。 外は夕焼けのように赤いのに、振り子時計が「朝の六ツ」を告げれば、江戸っ子は無理やり起きて飯を食う。空がどれだけ明るかろうが、時計が「夜の九ツ」を指せば、布団を敷いて寝る。 おまけに困ったことに、時差というものが消えちまった。「ねぇ、ご隠居」 大きなあくびをして、八兵衛がボヤく。「アメリカの大統領、早く釈放されねぇかなあ。寝不足で頭がおかしくなりそうだ」「いつかはされるかもな。地球は丸いってことにしたいお偉方の頭の中じゃあ、またお天道さまに空を駆け回らせて、朝が来て夜が来て、地球の裏側は真夜中でいて欲しいもんだろうからさ」「でも、そうじゃねぇんでしょう? 今やアメリカもブラジルも、みーんなこれと同じ時間なんだろう?」 八兵衛は、文机の横でチクタクと一定のリズムを刻む振り子時計を指差した。 世界中、どこにいても、まったく同じ時間を教えている奇妙な時計を。 ご隠居は渋い茶をズズッと音を立てて飲み干し、八兵衛に向き直った。「八、覚えとけよ。この世ではな、お天道さまの光より、振り子の歯車より……人間が『何かを信じ込む心』の方が、何より強くて恐ろしいってな」