三巻は執筆を終えているのですが、次のけもケットが九月なので当分おあずけ。悲しい。早く発行してBOOTHに出したい気持ちもあるのですが(ていうか二巻も増刷したいんですが)、いつも表紙をお願いしている方が多忙のため頼めず。無念。
三巻は一巻の直接の続きになります。ハインたちがベルテンスカへ潜入し、諜報を試みるが……という感じです。一巻を書いていた段階ではほんのモブにすぎなかったアントンが準主役級になっているので、私個人としても楽しかったです。
「犬の騎士」は一巻を起点にして、偶数巻は過去、奇数巻は未来、巻数が大きいほどより一巻より遠くなる、という感じに全体の構成を設計しています。なので、四巻は二巻よりさらに過去の話になるわけですね。英雄譚をやる上で、過去と未来が入り混じるのはぜひやりたいという点、それはそうと今の主人公の先の話が知りたいだろうなあという読者の気持ちを天秤をかけてこうしました。
せっかくですので、各巻のテーマなども覚書程度に。
一巻は「犬の騎士」の舞台となる世界の紹介として書いたため、けっこう短いです。「犬の騎士」シリーズの元々考えていたタイトルは「悪徳の這いずる夕に」なんですが、その名の通り、悪徳を突き詰めることで人の善性を炙りだす、という大きなテーマを構想しています。そこでまず、「幼子」、特に彼らへの暴力をテーマにしました。幼子は庇護されるべき存在ですが、搾取されることも多くあります。そこで、今ではFateシリーズなどで使い古された感もありますが、青髭伝説を参考に書いた話です。今思えば、こんな感じのスカウトとして戦っているころのハインとルオッサをもう少し書けばよかったのかなあ、と思わないでもないです。
二巻は「信仰」をテーマに書きました。私自身は無宗教と言っていいほどのゆるい仏教徒で、信仰、信じることの意味をよく分かりませんでした。そのため、キリスト教を中心に勉強し、何千年にもわたって論じられてきた神の姿を知ろうとしました。二巻には、私の得た回答を盛り込んだつもりです。神とは何で、人とは何だろう。救われるとはなんだろう。その答えを追い求め続けたルオッサが、死より重い苦悩の果てに得た答えは、果たして真実なのでしょうか。
ただ、余談ながらこの巻を書いていたころは鬱病に片足突っこんでいた時期ですので、私個人は出来に納得していないです。重い話を書く人は、鬱になっていてはダメという教訓ですね。
三巻はこれまでの一、二巻のテーマの決算なのですが、強いて言うなら「因果」でしょうか。一巻、二巻であった過去が実を結ぶ、なるべくしてなった物語です。ハインにほだされはじめたルオッサが、ハインにおびえる姿は書いててとてもいとおしかったです。「犬の騎士」はハインとルオッサのバディものなんですが、ある部分ではとても似ていて、逆に別の場所では正反対の考え方をしている、そんなふたりが相手を見直したり、嫌悪したりする姿はやっぱり尊いものがあります。ルオッサはまた別の人物と対比しているのですが、どうもその因果は四巻へ持ち越しになりそうです。
四巻のテーマは「従属」で、これまでに登場しているある人物の過去話になります。これまでの物語の根底に関わる話なので、ここを書くことで最終巻になる予定の五巻の展開も決まることになりますね。
五巻でこれまでの戦いに決着がつくことになるのですが、ハインが生存できるのかはとても迷っています。生死不明の方が英雄譚としてとても美しい気がするのですが、それはそうとこれだけ死ぬのですから、生きていてほしい気持ちもあります。とはいえ、彼自身、自分の命で誰かが救えるのなら何も惜しくなさそうなので、なんとも。
あー、どうして私が書かないと四巻も五巻も読めないんでしょうね。気づいたらできてたりしないでしょうか。私はただ、ハインとルオッサがどんな旅路をゆくのか知りたいだけなんですが。