初めまして、凪々卯です。なぎなぎうさぎ、略して、ななぎです。
本日はツキヨムコンテストも終わりましたので、私が投稿した三作品について、必要過多にならない程度に解説をしていこうかなと。
三作品を読んだ上で、皆様の想像力の導線になることを意図しています。
したがって、作中のネタバレはご容赦ください。
◯
『Une Deuse Troise』
コンテストとしては一作目、作者としては二作目となる作品で、かなり挑戦的なタイトルになった感じがありますね。実際、タイトルの受けはあんまり良くないと思う……(笑)。
もちろん意味は「Un Deux Trois」ですね。フランス語で一、ニ、三です。ホップステップジャンプと取ってもらってもいい。
それを「e」をつけて女性形にした形です。ただ、「deux trois」に女性形はないので、完全な遊びですね。とはいえ、本場にもそういうことしてる人はいるような気がしますが。でも、もしかしたら、日本人的なエッセンスかもしれない。
読み方は「ユニュ ドゥーズ トロワズ」かな。そこはすんなりとって感じです。
「Un Deux Trois」を、タイトルにした理由はいくつかありまして。
まず、成田良悟さんの序章を読ませていただいたときに、私が本コンテストで投稿した三作品が同時に思いついたのですよね。
三つあるので、それを象徴するように「Un Deux Trois」と、ここはある種安易に付けました。そして、後ろ向きなイメージは持たせたくなかったので、パッと明るい感じにしたかったのもありますね。「Un Deux Trois」はバレエ(パブリックなイメージ)を想起させてくれるので。
ただ個人的には、計算されたバレエの幾何学的な美ではなくて、もっと本能的な躍動を思い浮かべています。
これは、自分の中で三作品の方向性を決定づけられた自負があります。テーマとはまた違いますが、成田良悟さんが作ってくださった世界観に対する自分の解釈やアンサーなのは確かですね。
よって三作品は、この物語の方向性、タイトルの意味を常に受け継いでいくことになりました。
そして「e」をつけた理由ですが、これに関しては女性性をガンと打ち出した物語にしたかったからですね。作劇上でアイコンになっている月や蛇は、やはり女性的なシンボルなので。だからこそ、七巳の視点で動かしました。
それと、もう一つは呆れられるような理由ですが、「e」と「巳」の形が似てるからつけました(笑)。
タイトルでどこまで語るんだって感じですが、ここからは内容の方へと移りましょう。書く内容は、序章を読んだ時点でだいぶ煮詰まっていました。最終話は数十分ぐらいで書き殴った(七巳の)セリフを、ほぼ過不足なく使って作ったので、その点からも着地点の鮮明さが極まっていたのが窺える。我ながらすごいなと感心。
ストーリー構成のところは、上手く緩急が作れたのかなと思っています。宝探し→水切り→七巳の失踪→謎解きパート→ラストの語り、と。
古地図の示すものが「七巳」というのは、意外とありそうでなかったところを衝けたかな?
謎解きパートは、なんと謎の製作者である七巳が解説して、夜の思考パートを削るという、ミステリーなら「どういうこと?」となるような手法で面白いですね。
理由は、やっぱり夜の視点を書きたくなかったからですね。彼の心情は読者に委ねて、群像劇を完成させると。彼が何を考えていたか、七巳に何を思ったかを想像するための言葉は残したつもりです。
最後は、二人で日常に帰って終了と。
こうした日常と非日常という対比関係は、後の『星界のサイエンス』でも多分に忍ばしました。
何が日常観を紡ぎ上げるのか、何が非日常観を決定づけるのか。人は生来的にどこにいて、そして、いずれどこに行くべきなのか。
おそらくそれは、人によって違うのだろう。
『Une Deuse Troise』は、それを問いかける素敵な言葉です。
この話は、私にとってすごくお気に入りの話ですね。
◯
『星界のサイエンス』
七巳×夜の高校生組とは翻って、葵×一歩希の大学生組の話でした。
これは『Une Deuse Troise』ほど煮詰まった感じで思いついたわけではなく、これ一歩希を天才設定にしたらいいかもなぁから始まりましたね。
そこから、成田良悟さんのキャラクター設定にあった「知識」と「理性」というワードを転がしつつ、同時にステレオタイプである「科学」と「オカルト」の対立なんかも混ぜられたらなと。とはいえ、モチーフはそんな時代から少し進んだところを背景にしましたが。
ズバリ言うと、ルネ・デカルトさんですね。
彼を選んだ理由は実は本編で言っていて。本来ならばそこを二十字以内で書き抜きなさいなんて問題を出すべきですが、ここは模範解答を。
「デカルトとオカルトは一字違いだ。」
一歩希の天才設定と同時に、この台詞が思いついたので、デカルトさんのお話なんかも引っ張りつつ書き上げました。
しかしながら、最初は『五;An Intellectual Biography』に、彼の話は丸っきりなかったんですよ。なんか、流れ的に入れられなかったなーと。
だけど、書き終わってから予約投稿すると、やっぱり必要だなと感じて、世に出る前に急遽追加した感じですね。とはいえ、背景には常に忍ばせていたので、組み込んだけどなんか浮いてるみたいなことにはなってないと思います。
「白衣と浴衣は漢字で一字違いだ」なんて話を一話でしていましたが、これは五話の内容をあらかじめアドバタイジングしていたんですよ。それもあって、やっぱり書いて良かったですね。
ちなみに、一作目と違って各話にサブタイトルがついているのもそれが理由で。
これ伝わらないなって危惧を感じて、背景を想像する導線として追加したのですよ。
つまり、時系列的には、五話でデカルトの話なし→サブタイトルでデカルトの示唆→やっぱり五話でデカルトの話書いたって感じです。
だから、サブタイトルは消しても良かったけど、ここはなんとなくで残しました。意外と面白い意味合いも出てるので、つけて悪かったってことにはなってないかな。これは私の中では無駄じゃないという判定ですね。
個人的に、こうやってこねくり回した文章は、あまりよくならない印象があるのですけれど、最終的にはいい形になったなと思いますね。編集のスパンが短かったのもあるかな?
ただ、視点を一つに絞ったにしては要素が散漫になった感じもあるので、そこは反省点ですね。
内容の話をすると、場面の移り方が上手くできたかなと。
研究室→辻文神社→砂原湖と、私が勝手に象徴的に使ってある湖に帰ってくる構成なので。これは砂原湖から始まった『Une Deuse Troise』に対比させています。
他、時間の移り方も対比させていて。これの、夜→夜中→朝に対して、『星界のサイエンス』では、昼→夕方→夜のようにシフトさせています。
あと、季節とかも冬と夏で逆だったり。もちろん対比は情景に関してだけじゃないですけど。
要するに、土台としては同じところから生まれているので、連関は考えざるを得ないのですよね。とはいえ、それは数百ある全ての応募作品に共通するといえばしますが。
自分の中では別作品という立ち位置ですけど、『蛇よ、どうか今宵は月に溺れぬように』という作品の中でトータライズはしていますよと、これはちゃんと明記しておかねば。
最後に和歌の対訳を載せて終了。
個人的には上手く作れたと思っているのだけれど、どうでしょう?
たぶん、そんなトンチンカンなことは言ってないはず。そう信じています。
「みをつくし」の掛詞(澪標・身を尽くし)が大好きなので、また、作中で水はかなり印象的に使っていることもあり、ここを基軸に考えを広げました。
「うつせみの」は命を導く枕詞で、さらに脱皮なんかを示していたり。影や月は作品世界観のために入れて、「わたる」は澪標の縁語と。かなり、頑張った方では!
ただおそらく、対訳の方にだいぶ現代人的なエッセンスが混ざっているかもしれない。有明の月の部分とか!
あらすじにも載せているので、ある種これは『星界のサイエンス』の内容の先バレのような使い方をしていますね。
だけどこの和歌は、蛇に対してであって葵さんに直接的に向けたわけではない。
故に大事なのは、和歌というより葵さんや一歩希さんがそれに対して、何を思っていたのかを考えてくれることかな。
これは模範解答なしで!
あと最後に一つだけ言い忘れていたのですが。
ルネ・デカルトさんについてです。
これも、言っておきましょう。
「ルネとルナって一字違いだ」
やはり、必然的なものだったのかもしれないと思う今日この頃。
◯
『Spill over』
どちらかと言えば、町で起こっている『異変』にフォーカスを当てるという目的で書きました。
後は、一作目二作目であえてしていなかった二人分の視点を書くということも意識していましたね。
それに、こういう話は蛇や月を題材にしている手前、あって然るべきという考えもありました。月の満ち欠けや、蛇の脱皮から想起されるものに関しては、どうしてもこういう機会じゃないと書きにくいですから。
まず初稿八万字あって絶望。冗談です。
だけど、それぐらい書けてしまう題材なので、ここは上手くプロットで調整しました。
全十話。これは最初の段階で見えていましたね。
祈視点が五話、命視点が五話の半分こです。英語タイトルが祈視点で、日本語タイトルが命視点ですね。
ここは実は、ミュージカル的な掛け合いを意識しています。だから、英語は口語的に使ったりしています。
一方で日本語の方は、視覚的なものが想起するように丁寧に紡ぎました。
作劇上破綻しないようにや、含ませている意味も多分にありますが、ただやってみたくてやったが大きな理由ですね。
サブタイトルは本文に影響を受けて変えたりと二転三転しましたが、良いところに着地したかな。
最終話の『零月』というサブタイトルは十話を書く直前に、わりと突発的に思いついたのですが、かなりお気に入りです。意味と内容のリンクや、『Spill over』との連関も見えてきますし。
でも、作者本人は十話を書くまで『零月』というワードを脳裏に掠めてもいないのだから面白いですね。これが創作の楽しいところでもあります。
ちなみに作品タイトルについては、まあそのまま受け取ってもらえればと。化石の発見が及ぼすエフェクトについて直截的に書いた感じです。もちろん深い意味もあるし、馬鹿みたいな意味もあります。
overが蛇の形似てるとか。Spillが蛇の舌を出す音に似てるとか。…てか、さっきからこんなことばかり言ってますね(笑)。
ある種『蛇よ、どうか今宵は月に溺れぬように』のコンテストを包括的に象徴している言葉とは思いますね。そう言うとかなり尊大に聞こえてしまうので、ここは小声でボソッと呟いておきますが。
内容はジュブナイルともアダルトともつかないような雰囲気で書けたかなと。
言ってしまえば、一話の喫茶店の雰囲気が、そのまんま作品の空気感です。
物語としては、一話の最後で命さんが妊娠を告げて……。というところから始まります。
人と人との話を書きながら、ラストはややファンタジックに。
人間が及ぶことができない月と太陽と星。内省的な憧憬や懐古。有限と無限の垣間。頬張れそうなほど近くても、そこにはいけない。でもね、、。みたいな。最後の描写はそんな感じです。
作品を通して言えば、今まで書けていなかった男性性と、今まで書いていた女性性の新たな視点を紡ぎ上げられるように意識しました。
だから、二人の視点が交互にくるというプロットを書き上げた感じです。
それが先行した故、要所要所で落とし所が見えていなかったりもしました。ここは反省点ですね。
とはいえ、コンセプトは固まっているのでどうにかなるよねーというマインドも大事かなと。
走り出せば書いてしまえるものですから。
作劇のアイデアとしては、そこまで奇抜なものではないかな。
'不染懐胎'。世界で一番売れた書籍にも書いてある話です。ちなみに梟'告'や'影'見といった名前は、それをサブリミナルで仄めかしていました。
そしてこのアイデアが、さっき言っていた、あって然るべきというところになってきますね。
もちろん、あくまでも私のアングルではありますが!
ただまあ、使命感なんてものはさらさらなく、好きなことを楽しく書きました。
なんとか形になって満足です!
◯
さて、この辺で三作品の解説は終了です。
改めて、全部合わせて五万字ぐらいバーっと書いたんだなあと実感します。
しかし、序章を読了した瞬間に三作品が思いついてしまったのだから仕方がない。これは自分の中で稀有な体験でしたね。
でも、本当に楽しかった! 与えられた土台の上で、ああでもないこうでもないと試行錯誤するのは、意外と性に合ってたのかもしれないですね。
ともかく、かなり凝って作った自負はあるので、作中の色々な仕掛けを考えてくれると嬉しいです。
それと、もう少しだけ。
今回、私が執筆するにあたって心がけたのは'suggestion'です。
個人的にコンテストを分析するのなら、そういうことが求められているのかなと思いまして。後に楽曲になることも加味すれば、多彩な含みがあった方が良いのかなと。
全員でシェアしている世界観があるのも、そういうのをやりやすくするためだったり…。ぶっちゃけ何書いても、基本的にぼやけないですからね。
なんてたって町が主役ですから!
——さてと、長くなりましたが、そろそろ締めに入ろうかと。
こうして作品を書く機会を作ってくれたツキヨムプロジェクトの皆様や、イマジナティヴな素晴らしい序章を書いてくださった成田良悟様。また、読んでくださった読者様。
本当にありがとうございました!