以下本文のサンプルです。今回は、全体的にダークで湿度高めだった「朧月」に対して、「明るく爽やか」になったのではないかな、と思います。(当社比)個人的初の試みで、ダークな要素をほぼ完全に排除し、甘々を目指しました。宜しければ参考にどうぞ。
成人×未成年(性描写は成人後まで無し)BLです。
「恋患い」
砂糖菓子みたいに甘いキスがしたい。
その視線で、声で、指先で、蜂蜜みたいに蕩けてみたい。
そう言ったら、きっといつもみたいに溜め息を吐くのだろうけれど。
触れた指先から僅かに伝う温もり。甘く掠れた低い声。慈しむようなその瞳。
貴方に出会ったあの日から、俺は恋の病にこの身を蝕まれた。
(中略)
夕食後、入浴の時間。俺は千歳さんの服の裾を掴んで甘えながらこう言った。
「一緒に入ろ?」
「期待しても何もしませんよ」
「うっ……」
「そんな事だろうと思いました。全く、油断も隙も無い……」
呆れたように千歳さんが言う。
「じゃあ……じゃあ、それでも良いから一緒に入りたい……」
俺は食い下がる。千歳さんは冷ややかな視線と共に、
「良いですよ。但し本当に何もしませんし、させませんからね」
「分かった。ありがとう」
シャワーを浴び、千歳さんと湯船に浸かる。
「ねぇねぇ、本当に何も感じない?」
そうですね、と興味が無さそうに千歳さんは俺の身体を上から下まで眺めて、
「色仕掛けをしたがる割にはガリガリですね……としか」
と、鼻で笑った。
「うぅ……」
俺は悔しさに膝を抱え、呻く。
「千歳さんは色気があっていいなぁ……」
「はいはい」
溜め息を吐きながら、千歳さんは俺の頭を優しく撫でる。
「私の好みになりたかったら、もっとしっかり食べなさい」
「君は偏食傾向がありますから……そんなのでは色気の前に身体を壊しますよ」
「はい……」
(中略)
「千歳さん、キスしたい」
「ねぇ一回だけ、一回だけで良いからしようよ」
「駄目です」
貴方まだ未成年でしょう、と千歳さんは本を読みながらそう言った。
「友達はこの前したって言ってたよ」
「それは学生同士で、では?」
「そうだけど……」
千歳さんはこちらを向いてじっと俺を見つめる。
「……どうしたの?」
「来なさい」
言われるままに、俺は千歳さんの目の前まで歩みを進めた。
千歳さんが俺にそっと手を伸ばす。俺の頬に手を添えた千歳さんの冷たい指先が、唇を静かになぞった。俺は五月蝿いくらいに脈打つ心臓の音に耳を澄ませる。頬が、熱くなる。
俺は幾度も唇をなぞる千歳さんの指に焦れて、そっと両手で包み、柔く喰む。
一瞬、千歳さんの瞳が僅かに揺れるのを、俺は確かに見た。
すると、指がぐっと深く挿し込まれ、俺は少しだけ驚く。
「目を閉じて。口を開けてなさい」
甘く掠れた低い声で、千歳さんはそう耳元で囁く。胸の高鳴りを止められないまま、俺は大人しく千歳さんの言葉に従った。
静かに指が引き抜かれ、その代わりにコロン、と音を立てて硬い何かが口内に入れられた。
舌先で転がすと、ゆっくりと甘味が広がる。葡萄の味。飴玉だ。
「……千歳さん?」
貴方にはまだ早い、そう言って千歳さんは深く溜め息を吐いた。
「子供はそれでも舐めてなさい」