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ミドクサマ裏話

みつなつさんの企画に参加するために書いたホラー「ミドクサマ」の裏話をちょろっと書いていこうかなと思います。

初めての民俗学的ホラー。
フォロワーさんも何人かこの手のジャンルのホラーを書いていて、どれもすごくおもしろいので、今回わたしも初挑戦してみました。
冒頭の「えぇ、そうです。私がやりました」というセリフから始まることと、祟り神から逃げられないラスト(なんか不穏に)は決めていたんですが、語り口調にするか三人称にするか…完成するまで何度も書き直しました。書いてるうちに「なんか違う」ってなるんですよね。これは私がちゃんと決めずに書き始めちゃったからなんですが…。
「村から持ち帰った気味の悪い像」とか「どこからか漂う線香の匂い」とか四つの兆候とか、そういうのを全部入れちゃうと三人称では文字数膨れ上がるなってことで、今回は終始語り口調に。まるで読者が語りかけられている感じになっていると余計に怖いかなって。なのでぜひ刑事さんになりきって、読んでみてください♡

木箱に収められていたのは、最初はムンクみたいな顔の像だったんですが、途中で腕に変更。顔より腕の方が殺傷能力ありそうだなって言う理由です。三本指にしたのは人外を強調するためでしたが、あとで調べてみると三本指の妖怪ってあまりいい意味がないらしいですね。
欲、怒り、愚かさを合わせて三つの毒というとかなんとかWikipedia先生が言ってました。検索すると三毒(さんどく)と呼ばれているようですが、ここでは三毒(みどく)と読むことにしてミドクサマの誕生となりました。
後で思ったんですが、ミッドサマーと見間違えますね、これw
皆でグラス掲げて「とぅるるるるる!」って乾杯しなきゃかしら。

ちなみに三人称で書いていたものはこちらになります。
途中までなんですが、なんかこっちもこっちでわりと好きだったので、ここで供養させて下さい。(1000文字くらいあるよ!)




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「えぇ、そうです。すべて私がやりました」

 目の前に座る顔色の悪い男は、抑揚のない声で自身の罪を告白した。
 薄暗い取調室。満ちる空気は重く、雨も降っていないのに湿気を含んでじっとりとしている。

 高山健二。五十二歳。妻と二人の子供を殺害したのち、刃物を振り回して近隣住民たちにも襲いかかった。
 事件が起こったのは一週間前。男の住む地区では夏祭りが開催されており、そこに集まった住民たちを狙った無差別の犯行だと思われる。駆け付けた警察官に取り囲まれた男は自らが殺害した者たちの体で二重の円を作り、その中心に蹲り、泣きながら何度も謝罪していたという。

「妻と子供だけは何としても助けなければと思ったんですが……無理でした」

 男の発言には、ところどころ腑に落ちない点が見受けられた。住民の死体を二重円にしたことからも、男の精神は壊れているのだと思われる。妻子を殺害した時から正常ではなかったのかもしれない。
 名のある民俗学者だというのに、何が原因でこのような凶行に及んだのだろう。目の前に座る男からは、生気のかけらも感じられなかった。

「もうダメだ。みんな祟られる」

 祟る、とは非現実的なことを言うものだ。とはいえこの事件には確かに奇妙なことが多すぎる。男が殺害した妻子と近隣住民たちの体にはいくつもの切り傷が刻まれていたが、どうやらその中には獣の爪跡らしき三本傷も多く含まれていた。それは犯人であるこの男の体にも刻まれている。けれども辺りにそのような獣の報告は一切ないのだ。
 それに一番の疑問は、女性の遺体から体の一部が持ち去られていることだった。左手、両足、両目に頭髪、そして内臓。違う部位がひとつずつ、遺体から抜き取られている。そして抜き取られた遺体の一部は、現在も見つかっていない。

「アレから逃れるための結界をあなた方は撤去してしまった。私はもう助からない」

 男が言う「アレ」とは、おそらく証拠品として押収した不気味な腕のことだろう。男の書斎で見つけた、古びた木箱。蓋を閉じるために貼られていたお札は、長い年月を経てぼろぼろに腐りかけていた。
 箱の中に収められていたのは、黄ばんだ布にくるまれた異形の右腕だ。ミイラのように干からびた茶褐色の右手には三本の指が生えており、鋭く尖った爪は闇を押し固めたように黒い光を宿していた。

 証拠品として押収された腕を見た時、背筋に冷たいものを感じたことは認めざるを得ない。何のものかもわからない干からびた右腕。鋭い爪を生やした三本の指は、奇しくも遺体に残された傷跡と合致した。


(ここまで!)
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最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!

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