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【くま猫語り】4000文字で『最強転生者』を解説してみる

3年前の26万文字完結の作品『最強転生者は『超』難度異世界で無双する』について、ふと語りたくなり、近況ノートにまとめてみました。

基本的にくま猫は、物語は〈了〉と作者が書いた時点で、物語は作者から分離され、完全に自律した存在になる。 完結した作品は、作者の意見すら一意見にすぎなくなる、みたいな考え方が好きです。

なので作者が、作品を解説するという行為はあまり粋ではないと思ってはいるのですが、3年前の作品ですし、新作も完結したばかりですし、……無職のヒマ人なので、ちょこっと 「こんな見方もできるよ」 みたいなのをやってみたいと思います。

それでは、劇中では幻想のヴェールに覆われていたカグラ少年の生前のできごとについて、時系列を追って説明してみたいと思います。 



◆カグラ〈事実 :生前に現実に起こっていた出来事〉


①格闘技ブームの衰退。もともと経営の怪しかった神楽流の道場の門下生がゼロに。 少しずつ減っていく預金残高。 カグラの父は酒におぼれ、少しずつ生活が乱れていく

②カグラの父が母に暴力を振るうようになる。 近隣住民からの通報。 カグラ母はシェルターに保護される。 カグラは父と二人で暮らすように

③カグラの精神が少しずつ不安定に。 カグラは唯一の肉親の父との会話はなくなり、不安定な精神状態がたたり、クラスメートの仲も悪化していく。 休み時間は寝たふりで過ごし、昼休みは逃げるようにして、図書館で時間をつぶす日々

④カグラは家に居場所はなく、学校にも居場所がなくなる。そんな灰色の日々が続く

⑤過度のストレスによる、めまい、耳鳴り、頭痛に悩まされるように。 幻聴が聞こえるようになり、その幻聴に従い行動するようになる

⑥カグラは狐の面を被り、夜の街に繰り出す。 女性に暴力を振るう半グ○やヤ○ザに、決闘をいどみ、ナイフや時に銃を持った相手に身一つで私刑をくだす、非常に危険な行いに没頭するようになる

⑦繁華街のゴロツキに私刑を加え家に帰ると、酔っていた父の虫の居所が悪かったからか、ビール瓶で殴打される。 自衛のために反撃。 相手が酔っていたせいもあって当たりどころが悪く、あばら骨を数本折るほどのケガを負わせてしまう

⑧カグラの父に対する傷害行為と、カグラの意味不明な言動から、重度の心の病と判断され、拘束をされた上で閉鎖病棟に緊急搬送

⑨閉鎖病棟でアルビノ症の少女と仲良くなる。この少女はこの病院の院長のひとり娘であった

⑩カグラは少女の語る〈異世界〉、〈都市伝説〉、〈SF〉、〈クトゥルフ神話〉の世界にのめり込む

⑪看護婦の立ち話からアルビノの少女が、非常にリスクの高い手術をしなければならないという事実を知る。 執刀医は、少女の父の凄腕外科医の院長。 だがRH-のAB型の血が足りず、手術の成功率は1%にも満たないと知る
 
⑫少女の手術の日が決まる。✕月✕日。 少女が語る〈黙示録の日〉とは、自分の手術の日のことであった。 少女は自分が助からないという現実を無意識に認め、その日に世界が終わると信じるようになっていたのだ

⑬自殺のために必要な道具、ナワ、キャタツ、首をくくるのに適した頑丈な木を探す。 この件の一切の責任とその否は院長にはなく、カグラにあると書いた自筆のノートを残す

(カグラノートの記述には虚偽や妄想を含んだ記述は一切なく、淡々とした文章で事の経緯が書かれており、証拠として採用に足ると判断。 少女の父、執刀医の院長の減刑につながることになる)

⑭閉鎖病棟を抜け出し、自分の死体が鮮度の良いうちに院長にみつけてもらえるように仕掛けをした上で桜の木で首をくくり死ぬ。 最期に願ったことは、わずかばかりの時をいっしょにした少女が、命をつなぐこと、ただそれだけ

⑮カグラが残したノートを読み、法律的には誤った行いであり、院長も職を辞さなければならない行いであったが、一人娘を助けるためには、悪を為す決意を決める。 院長は手にメスを持ち、緊急オペを開始する

⑯少女の手術は成功。 少女は大人になり、天寿をまっとうする




◆カグラ〈虚構 :カグラが見ていた妄想、あるいは、カグラがこうであって欲しかったと思っていた現実〉


①カグラは、千年の歴史を持つ古武術道場の息子である

②千年の歴史を持つ、魔を祓う神楽流の正当継承者として日々、厳しい訓練に耐え、心と体を鍛え上げる

③ある日、学校の図書館の本棚が揺れる、悪魔が封印されている魔導書が落ちる。 偶然、その魔導書を手にしたカグラはソロモンの72柱の1柱。 人の心に悪意を植え付ける悪魔、〈ダンダリオン〉の声が聞こえるようになる

④父やクラスメートがダンダリオンの〈悪のタネ〉を埋め込まれているせいでおかしくなっている事に気づく。 〈悪のタネ〉を植え付けられた人間は心に根を張ったタネに心を吸いつくされると胸から〈悪の華〉を開花させ、他者に危害を加える、つまりダンダリオンの忠実な手駒になるのであった

⑤ついにカグラは覚醒する。 ダンダリオンを視認できるようになる。 頭痛やキーンとしたガラスを引っ掻くかのような不快な音は、〈神楽の血〉の覚醒の前兆だったのだ

⑥ダンダリオンの〈悪のタネ〉を植え付けられ、タネに心を寄生され、〈悪の華〉を咲かせ、道を外れてしまった者達を、カグラは魔を祓う神楽流の神拳で禊いで、祓う

⑦ダンダリオンが課す数々の試練をすべて成し遂げたカグラ。 業を煮やしたダンダリオンは、神楽の流派を滅するために、カグラの父の体を乗っ取ることで、悪魔でありながら魔を討つ神楽流の力を使い、カグラを殺そうと試みるも、覚醒したカグラの魔を穿つ必殺の足刀〈沈丁花〉に体を貫かれ、敗れ去る

⑧瀕死のダンダリオンは、カグラに復讐するため、ソロモンの他の悪魔に協力を要請。 カグラは悪魔の牢獄に閉じ込められる

⑨悪魔の牢で、神聖で高貴な光をまとった天使と出会う。 燃えるようなルビーの瞳、穢れを知らぬガラスのような白き肌。 シルクのようにツヤのある銀色の髪。 目の前の少女が、疑いもなく、紛れもない本物の天使だと確信する

⑩天使から〈黙示録の日〉が訪れ、この世界はまもなく終わることを告げられる。  カグラはソロモン72柱よりもはるかにやべぇヤツが居ることを知り、驚愕するダンダリオン。 カグラも最強の敵として戦っていた巨悪ソロモンの72柱の1柱、ダンダリオンなどは全体からみれば、オワコンのザコ。 街のチンピラ程度のカスと知る。 本当にヤバいのは宇宙から攻めて来る外宇宙の神達だと理解する

⑪カグラ相手に傍若無人な魔王のようにイキっていたダンダリオンさん、事実を知り急激に自信をなくしてしまう。 ついには「所詮、わたしは72柱の中の71柱目ですし、人を操らなきゃ戦えないゴミですしおすし」 というような自虐ネタを吐きだす程弱気になっていく。 あまりに情けない、かつての凶悪なライバルの姿に、あわれな気分になり、カグラは落ちこんだダンダリオンを励ます側にまわる

⑫外宇宙の神の侵略により世界が終末する日が、✕月✕日と知る。

⑬外宇宙の神と戦うためには異界の力が必要だと知り、異界渡りに必要な禁具、三種の神器を集める

⑭敵対していた、ダンダリオンと力をあわせ、強制的に異界への門をこじ開けるために、悪魔の牢を抜け出す

⑮しめ縄を、枯れ木だった桜の木に結びつける。 すると桜の木の花が満開に。 しめ縄で作った〈円〉の先を覗くと、そこには光り輝く異世界。 カグラは〈ゲート〉をくぐり異世界へ至る

⑯本編開始



【解説】 ダンダリオンはカグラが作り出したイマジナリーフレンドです。 誰の目にも見えず、カグラの脳内にしかいません。 カグラは繊細で優しい人間でした。 非常に残酷な言い方で言い切るならば、カグラはこの世界で生きる人間としては弱かったと言えるかもしれません。

カグラは、父、反社会勢力、クラスメートの持つ残虐性、無関心、冷酷さ、被虐心、悪意、そういった人が生来持つ特性の一部を、カグラは、認めることができませんでした。 人の悪意は、悪魔のせいだと、思い込もうとしていました。

病院で知り合った、アルビノ症の院長の娘の少女と出会い仲を深めていくなかで、彼女が不治の病に犯された少女だと知ります。 もう、自分だけが逃避できるダンダリオン(妄想)で逃げられない、少女は救えない事態にあせり、救うための方法を見つけるためにあがきます。

法を犯してでも娘を救いたい院長とカグラの思惑が一致。 一種の共犯関係に。 新鮮な死体として回収されたカグラの血を使っての手術は成功。 少女はカグラの分まで生を全うしようと心に決めます。  カグラが残した遺書と、日々記していたカグラ日記には、一切の妄想や虚構、イマジナリーフレンドのダンダリオンなどの記述はなく、淡々とした日々の現実で起きていたことしか書かれていませんでした。 






  ◇  ◇  ◇







最終的にこの二つの事実と虚構を理解することで、〈真実〉という究極の力を獲得し、〈異端審問官〉という本作の魔法や神秘に絶対耐性を有する、残酷な殺戮者を滅するといいうようなバトル展開になっています。 

基本的にバトルと、女の子とのイチャつきばかりの本作で、エンタメでもありますので、↑のような、考察をする必要はなく、そもそも、ノイズをかけまくっていたので、実際に悪魔が居る前提で読み飛ばしてもまったく問題ない部分ではあるのですが、とはいえ「アレって時系列的に現実ではなにが起こってたん?」と、思われた方も居るのではと思い、解説してみました。

ちなみに、↑は、くま猫が言ってるだけの事です。 作者(ごとき)がなんと言おうと、結局は読まれた方が感じた読み方が正解なのだと思います。 あくまで解釈のひとつとしてお納めいただけますと幸いです。 26万字の超長編にお付きあいいただいた奇特な読者のみなさまには深い感謝を。



追伸

この作品以外は、面倒な構成にしている作品はありませんので、ご安心を! それにしても、『最強転生者は『超』難度異世界で無双する』、タイトル……ダサいなぁ(=o=;)……、試行錯誤感が凄いです。 まったく効果はありませんでしたが、Twitterのヘッダーとか作ったのも、いまはいい思い出ですw 

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