世界の不条理と個人の悲鳴をLINE画面に閉じ込めた現代寓話的なお話
LINEの長文メッセージという極めて現代的で軽い媒体を通して、世界の苛烈な不条理と、日本の若者が抱える精神的な閉塞感を重ね合わせてみた。
物語の中心にいるのは、自閉症の青年Aちゃん。彼は世界のニュースを見ている。
飢餓に苦しむ国民を抱えながらミサイルを発射する国、韓国ドラマを見た中学生が公開処刑されるような恐怖政治の国。そうした極端な現実を知りながら、Aちゃんは同時に「日本もまた不幸な国なのだ」という独自の絶望に囚われている。
Aちゃんの苦悩を単なる「世間知らずな若者の被害妄想」として処理はしない。世界には明らかにもっと苛烈な不幸がある。しかし、それを知ったからといって、個人の苦しみが消えるわけではない。むしろ、他者の悲惨を知ることで「自分は苦しんではいけない」と感じ、さらに追い詰められる。その心理のねじれが全体を貫く感じ。
人間の心は、世界地図の縮尺どおりには苦しまない。