ご維新を経ておよそ五十年。美しく色鮮やかな品にあふれる大正時代の片隅にて、素直になれない男女がふたり。
病弱な身の箱入り娘・はなと彼女の年の離れた婚約者である男・誠志朗との、サナトリウムで紡がれる恋の物語。起承転結を重視した作品というより、よくもわるくも雰囲気に重きを置いた小説です。
言っていることと思いがちぐはぐな男女の秘めやかなやりとりを書きました。
<登場人物紹介>
はな:大きなお屋敷の箱入り娘。五年ほど前、十二も年の離れた男との婚約が決まった。
彼女は「夫の半歩後ろを楚々と歩く奥方」というより、誠志朗の一歩も二歩も前をどしどし歩いていくはつらつとした女性です。持ち前の向こう見ずさで婚約者を振り回しつつ、年相応にわがままも言いつつ、だけども芯はしっかりと持った女の子。
誠志朗:物静かで柔らかな物腰の男。いつもはなに翻弄されている。