✽まえがき✽
いつも作品を読んで下さり、ありがとうございます✨✨本作10万pvを達成しました!
応援下さった読者の皆様、本当にありがとうございます!(;_;)
お礼の気持ちを込めておまけ話を投稿させて頂きますので、よければご覧下さいね。
見合いの時点での、さくらちゃん視点のお話になります。
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「石藤さん、奥さん、ここ(櫻花亭)のお料理はお口に合いますか?」
「「は、はい…。むぐむぐ…。大変美味しゅうございます…。||||」」
お父様が食の進まない様子の石藤良二さんのご両親に問うと、お二人は慌てて箸を進め、気まずそうな笑みを浮かべた。
「特に、この料亭の魚料理は、抜群に美味しいとさくらが気に入っていましてね。ぜひ皆様に召し上がって頂きたいと思っていたんですよ。ねぇ、さくら?」
「え、ええ…!このお店のお魚は、市場に直接買い付けに行っているそうで、とても新鮮なんですよ。」
お見合い開始時間を40分経過しても、私のお見合い相手、石藤良二さんの姿が見えないことに不安を感じながらも、私は精一杯笑顔を浮かべた。
どうなさったんだろう。
交通機関の遅れ…とかかと思ったけれど、さっき、権田さんに調べてもらったら、この付近で交通機関が止まっている情報はないとの事だった。
とすると、やはりこのお見合いが嫌でいらっしゃらないのだろうか。
もしかして、私の趣向がバレてしまった?
→でも、その事はお父様、権田さん、お兄様、お友達の秋桜ちゃん以外知らない筈…。
もしかして、青い目、銀髪の容貌が好みでなかった?
→でも、見合い前に12年前に助けたあの小学生だと知られたくなくて、顔写真等の情報はお渡ししなかったのに…。
それとも、ほかに好きな人でもいらっしゃったんだろうか?
→それは、十分にあり得る事のように思えた。
石藤良二さんみたいに素敵な男性は、きっと他の女性が放っておかないに違いない。
10才年下の子供っぽい私より、大人で素敵な女性のを選ぶのは当然かもしれない。
彼との見合いが決まってからずっと浮き立っていた私の心はみるみる内に萎れていった。
「良二さんにもお魚料理を、ぜひ味わって頂きたいとお父様にこのお店にお願いしてっ…。あっ…。」
言いながら、ポロッと零れてしまった涙の雫を慌てて着物の裾で拭った。
「さくら…。」
お父様は困ったような笑顔で私の肩をポンと叩いた。
「す、すみませっ…。ふっ…。うっ…。」
ただでさえ、死にそうな顔をされているご両親に余計心労をかけてしまう。いけないと思いつつ、涙が止まらなかった。
例え想いが敵わないとしても、ここのお店の料理を良二さんに食べてもらいたかった。
彼の為におめかしをした今の私を見てもらいたかった。
無念で悲しい気持ちでいっぱいになっていると…。
「「申し訳ありませんっ。」」
「「…!」」
案の定、良二さんのご両親にいたたまれない思いをさせてしまったようで、お二人は、私達の前に土下座をした。
「この度の息子の不始末は、私の責任です!どうかクビにでも手打ちにでも何でもなさって下さい。」
「いや、石藤さん?」
「良二さんのお父様?」
良二さんのお父様は、涙を流してカタカタ震えていた。
「いや、石藤さん、顔を上げて下さい。今回の件が、仕事に影響するとか一切ありませんから、ご心配なさらないで下さい。
こちらこそ、申し訳ないです。仕事の取り引きがある相手からの縁談なんて、断りにくかったですよね。
さくらも私も、昔、石藤くんに助けて頂いた事がありまして、大変感謝しているんです。
今日は縁談ではなく、そのお礼の食事会だったとそういう事にしましょう。ねっ。」
「財前寺さん…。」
お父様が、良二さんのお父様を宥めるように声をかけていると、良二さんのお母様も涙ながらに頭を下げた。
「財前寺様、お嬢様、今回の事は本当に申し訳ありませんでしたっ。
母親から見まして、息子は、一度した約束を平気で破るような奴ではないのですが、いつもとても間の悪いところがありまして…。
小学生五年生の時、T市科学館の社会見学をすごく楽しみにしていたんですが、当日風邪を引いて行けず、
中学の修学旅行も行った先で怪我をして途中で帰る事になり、
高校の文化祭の最中には盲腸で倒れてそのまま入院する事になりました。
期待しているイベントに限って、そんな事ばかりありまして…。
今回の見合いも、私の目からは息子は楽しみにしているように見えまして…。」
「えっ。良二さん、楽しみにして下さっていたんですか?」
一瞬涙が止まり、良二さんのお母様の神妙なお顔を見返した。
「え、ええ。10才年が違うから、話題が合うかなとか、スーツ、相手に合わせてもっと明るい色に方がいいかなとか、色々心配してソワソワしていました。」
「そっ、そうなんですね…。」
私は良二さんのお母様の言葉に、胸に小さな希望の火が灯るのを感じていた。
もし…もしもだけど、ここに来られなかった事情が、私を嫌っているとかでないのなら、どうにかお会いする事が叶わないかしら?
この場所でお会い出来なかった事も、
良二さんが、今までのイベントを逃してしまった事も、一緒に何かの機会に取り戻す事が出来たら…。
そんな夢みたいな思いつきが頭に浮かんだ時…。
「ですから、今回も何か想定外の事が起こった可能性があるんです。
いずれ、息子には事情を問い糾して謝りに参りたいと思いますが、どうかご理解とご容赦の程を…。」
「分かりました。もうお気になさらないで、奥さんも頭を上げて下さい。」
良二さんのお母様に額に汗を浮かべて再び頭を下げられ、お父様が声をかける中私はまた別の不安が湧いてきた。
もし、本当に想定外の事が良二さんに起こっていたとしたら、彼は大丈夫なのだろうか?
✽
その後ー。
事情を聞いた私は、顔色を変えてお父様の書斎に飛び込んだ。
「お父様、良二さんが猫を助ける為に事故に遭われたって本当ですかっ?」
「ああ…。ほとんど無傷だったらしいというのだが…、見合いを断る為の方便かもしれないと思ってね。謝罪はしなくてよいと先方に伝えたよ。」
「本当だったらどうするんですかっ?
事故に遭っただなんて、ほとんど無傷というけど、心配です…!
それに、ちゃんと彼の口から真実が知りたいです。」
「いや、さくら…。ちょっと落ち着きなさい。こちらは仕事上、向こうに気を遣わせる側の立場にあって、既にこの縁談はなかったものになっている。これ以上踏み込むのは…。
それに、他の理由があったとしたら、傷つくのはさくらだよ?」
「傷付くのは覚悟の上です!私はお父様が何と言っても、ちゃんと理由を聞きたい。どうしようもない状態だったら、ちゃんと彼の幸せを思って身を引きます。止めないで下さいっ!!」
「さくらっ!ちょっと待ちなさいっ!」
私はお父様が呼び止めるのも聞かず、私は部屋を飛び出した。
お見合い時点で頂いていた資料を元に、自分の荷物をまとめて、玄関へ向かう私を権田さんが呼び止めた。
「さくらお嬢様!お待ち下さい。こんな遅い時間に一人で外出されるなんて危ないですよっ?」
「止めないで下さい。誰に何と言われようと、私は…!」
「石藤様の元へ行かれるのですね?」
「!」
権田さんは驚く私に、車のキーを見せてニッコリと笑った。
「お送りしますよ?」
「権田さん…!✨✨」
財前寺家に雇われている立場なのに、お父様に逆らう私に協力を申し出てくれた権田さんに、私は目を潤ませた。
ブロロロ…。
夜道を走る車の中で、私は不安と期待に胸を高鳴らせていた。
良二さん…。小さい頃から憧れの人だったあなたに、とうとう会えますね。
あなたの口からどんな言葉が出ても、私はそれを受け止めよう…!
そう決意して、両手拳を握り締めた私だったが…。
まさか彼の口から「デリバリーの娘だろ?」なんて言葉が飛び出し、お店から派遣された新人『チェリーちゃん』を演じる事になろうとは、この時の私はまだ知らない…。
※今回のお話には全く関係ないですが、お礼入りのさくらちゃんのバニーガール姿をイメージしたAIイラストを添付させて頂きますので、よければそちらもご覧下さい。
(もし運営様にご指摘頂いた際には、すぐ他のイラストに差し替える予定です💦
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いしますm(_ _;)m)