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レベル1の最強賢者 SS 『ウンディーネとの召喚契約』

 
 私は水の精霊王、ウンディーネ。

 今、私の目の前で信じられないことが起きている。四大神の一柱である海神ポセイドン様が、人族の少年に追い詰められていた。

 意味がわからない。

 ここは深海。すさまじい水圧がかかっているので、普通のヒトなら数秒でつぶれて死んでしまう。そんな場所に人族が来ているということだけでも信じられないのに、その少年はポセイドン様と戦闘を始めた。

海で──いえ、湖底や川辺を含むあらゆる水がある場所において、最強の存在であるはずのポセイドン様と戦いはじめたの。水中でポセイドン様より速く動ける存在なんていない──私はそう思っていた。少なくとも私がこの世界に生を受けてから、そんな存在は見たことも聞いたこともない。


 その最強最速であるはずのポセイドン様が、まだ幼さの残る少年の魔法から逃げていた。

「おい、ちょっと待てハルト! そ、それはさすがに無理だ!!」

 少年が放とうとしていた極大の魔法を見て、ポセイドン様が焦っている。

 あの規模の魔法を、たったひとりで……。
信じられなかった。

 少年の名前はハルトというらしい。
私は彼に興味を持った。

 私は水の精霊王で、この世に溢れるマナを水属性に変質させる役割を担う水の精霊たちの王。だから純粋で力強い水属性魔法を見ると、心惹かれてしまう。

「海神様、いっきまーす!」
「ちょ、やめっ──」

「ウォーターランス!!」

 回避が確実に不可能なほど巨大な水の渦が、超高速でポセイドン様に向かっていく。ハルトが最下級魔法の詠唱で究極魔法クラスの魔法を発動させられる意味がわからないけど、そんなことはどうでもよかった。

 私は彼と繋がりたい!

 なんとしてもハルトと召喚契約を結びたいと考えはじめていた。


 ──***──

「私と召喚契約を結んでくれない?」

 ポセイドン様との戦闘が終わったようなので、さっそくハルトに召喚契約を結びたいと話しかける。ちなみにポセイドン様は、ハルトに降参してしまった。ハルトが呼び出した千にもおよびそうな魔法の騎士を見て、勝てないと悟ってしまったみたい。

 うん。仕方ないと思う。
あれを見たら、私だって即座に降参する。

「いいですけど……お姉さんは、精霊なんですか?」

「そう。水の精霊王、ウンディーネ」

 自分から召喚契約を結びたいなどと言い出すことは初めてで、少し緊張する。

「精霊王……あっ、イフリートと同格の、すごい精霊さんですよね!?」

 ハルトのテンションが上がっている。私との契約を前向きにとらえてくれているみたいで嬉しいのだけど、少し気になることがあった。

「あの、もしかしてだけど、イフリートとも──」

「はい! 召喚契約を結ばせてもらいました」

 そう言ったハルトが突然、魔力を放出し始めた。

「ちょっと来てくれイフリート。ファイアランス!」

 深海に炎が渦巻き、赤い髪の大男が現れる。

 現れた男は、周りが水に囲まれていることに気づきかなり慌てていた。

「は、ハルト殿。急に呼び出すのはいいが、俺は火の精霊だ。水中に呼び出すときは前もって言ってくれると助かる」

 中級クラスまでの火の精霊であれば、周りを水で囲まれた空間に召喚された時点で消滅してしまってもおかしくはない。イフリートがここで存在を保つことが出来ているのは、彼が精霊王だから。

「あっ、ごめん」

「うむ。わかってくれれば良い。俺以外の火の精霊を呼び出すときは、くれぐれも気を付けてくれ」

「はーい!」

 そんな会話をしているふたりを見ながら、私はまたあることに気づいてしまった。

「ねぇ、イフリート」

「ん? おぉ!! ウンディーネか。久しいな」

「久しぶり。それよりあなた今、ハルトに強制召喚されてなかった?」

 精霊王を強制召喚──そんなこと、絶対にありえないってわかっている。強制召喚って、どう考えてもひとりの人族が持てる魔力量でできることじゃないのだから。

 それなのに──

「そうなんだよな……。とりあえず普通の契約も結んでいるが、ハルト殿はいつも俺を強制召喚する」

「えっ」

 どうやら、私の勘違いじゃなかったみたい。

 その後イフリートと話し合って、どうやらハルトが召喚契約のことを『精霊を自由に呼び出せる口約束』だって認識しているということに気づいた。

「へぇ。ちゃんと契約を結べば、そんなに少ない魔力で呼び出せるんだ」

 ハルトに召喚契約のことを説明したら、彼はそんなことを言い出す。

 彼は『少ない』っていうけど、それは上級魔導士が十数人は必要な魔力量。

「……私たち、もしかしたらものすごいバケモノさんと契約しちゃった?」

「今更遅いぞウンディーネ。一度強制召喚された時点で、我々がハルト殿を拒絶することは不可能だ」

「あっ、都合が悪いときは、呼び出しを断ってくれて大丈夫ですよ」

「えっ、いいの?」

「えぇ。それでいいんです」

 強制召喚できるのだから、私たちを無理やり使役して世界の覇権を握ろうと企ててもおかしくない。彼にはそれを可能にする力がある。そもそもポセイドン様に勝っちゃう時点で、ハルトを止められるヒトなんていないのだから。彼がその気になれば、世界は彼のもの。

「困ったことがあれば呼ぶから、その時は助けてね」

 ポセイドン様に勝てるバケモノが『困った状況』になったとしても、その状況を呼び出された私たちがなんとかできるとは思えない。まぁ、そんなこと思っていても、断ることはできないのだけど……。

「ハルトがそれでいいっていうなら、私は問題ない」

「ありがと。それじゃウンディーネも、これからよろしくね」

 こうして私は、ハルトとの召喚契約を結んだ。



──***──

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