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狐火 朔

  • @kitsunebi_saku
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  • 2025年1月31日

    小さな気まぐれ哲学者

    今でも覚えてる。 小学校2年生の授業参観の日。 学活の授業で自分の名前の由来と、将来の夢を発表した。 もちろん名前は言えないけれど。 将来の夢は「お金持ちに飼われている猫」だった。 今考えれば、ひどく非現実的であり、そしてひどく現実的でもあったと思う。 もちろんみんなからは笑われた。 母は何か恥ずかしそうな顔をしていた記憶がある。 最近の私の流行は、プロアマ限らず小説家の人とボイスチャットすること。 ただでさえ小説は流行りじゃないのに、わざわざこの界隈に入ってくる物好きは、こぞって面白い。 いつもみたく通話に勤しんでいると、ガラスの破断音が聞こえた。 ツン、と鼻につく赤ワインの匂いと共に。 重い腰を上げてリビングを見にいくと、凄惨な光景が広がっていた。 机の上に置いてあった赤ワインが猫が瓶に触れた拍子に、真っ逆さま。 幾筋もの赤い液体が床を這う。 反面、猫はご満悦である。 猫にしてみれば小突いた相手が落下死して血を流しているのだから。 これが野生の闘争本能というやつか、などと暫し関心した刹那、現実に引き戻される。 人間界でも憎めない相手、というのは一定数いる。 でもここまで憎めない動物も珍しい。 私の家の猫の異名。 「トイレットペーパー・デストロイヤー」 文字通りだ。 彼は事ある毎にトイレットペーパを駆逐していく。 私の家はトイレが複数個あるのだが、一週間に一回はどこかのトイレットペーパーが犠牲になってる。 恐ろしく鋭い爪で、心臓をひと刺し。 お腹を牙でふた噛み。 襲われたトイレットペーパーは例外なく細切れになり、残るのは茶色い骸のみ。 何人の犠牲者を出したことか… でも憎めない。それでも憎めない。 あの罪な動物をどうしてやろうか。 “猫というのはつくづく不思議な生き物だと思う。彼らにはルールというものがなく、ただそこにいるだけで完全な存在なのだ。” ——— 村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 あぁそうだ、私はこの社会から縛られない自由奔放な姿に憧れたのだ。 「人間とはこうあるべき」という人間が自ら構築した価値観は猫に存在せず、ただ生命として生きている。 そんな完全な存在。ニーチェの言葉を借りるならば、「超人」。 コクトーは、猫について「猫は気まぐれではなく、思慮深いだけなのだ」と表現した。 少なくとも私の家の猫はその限りではないように見えるけれど。 社会に縛られず、既存の価値観に侵されず、思慮深く、自由に生きる。 私の小学校2年生の時の夢は、未だに心の中で生き続けているのかもしれない。
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  • 2025年1月30日

    囚われのタコス

    「早く解放されたい〜」 今週と来週は高校のテスト週。 フィンランド語でのテストはそれなりに大変なのだ。 そういえばフィンランドにきてからより一層朝に弱くなってるなと感じる。 単調な繰り返しのアラーム音に嫌気がさしてパッヘルベルのカノンに変えたけれど、カノンまでも嫌いになりそうだ。 友達の誕生日会に来た。 友達家族の雰囲気はとてもいい感じ。 家......については、初印象は小さな家だな。と思った。 テーブルでスナックと飲み物を食べたり飲んだりしながら、友達とたくさんおしゃべり。 誕生日会も佳境になってきたところで、家の案内をしてくれることに。キッチン、リビングを経てトイレ、自室の順に紹介されていく。 そして辿り着いたのが、薄暗く狭い階段。 階段がギシギシと心もとない音を立てながら、恐る恐る下っていく。 蛍光灯が揺めきながら光を発した時、先に見えたのは、地下2階層を牛耳る地下帝国だったのだ。 古びた手すりを頼りに歩みを進めると、茶色の錆が垂れた大きなタンクがいくつか。 友達曰くシャワーのお湯を溜めているところだと言うが、何か怪しい。 なんてったって、地下帝国なのだ。 若返りの薬とか、そういった怪しげなものを作ってる可能性も否定できない。 低い天井とドアを潜り抜けると、別の現世への階段が。 上り切って、差し込んでくるであろう眩い光を見越し、半目になりながらドアを目一杯押した。 * 探検の最後に玄関を訪れて終わりの筈だった。 その時だった。 どこかから、まるで自分を誘っているかのような馥郁としたタコスの匂いが漂ってきたのだ。 キッチンからではない。自分の嗅覚が、地下からの匂いだと言っている。 そうだ。この地下帝国には囚われのタコスがいるのだ。 この帝国と戦争をしている、敵国の王の一人娘。 タ娘ス姫がいるのだ。 この物語は不思議なもので。 何かの巡り合わせで、囚われのタコスと共に始まったのである。 いつか、必ず。 私の腹の中に収めてやる。 そして聞こえる、タコスの声が。 「早く解放されたい〜」 ————————— あとがき ※奇妙なことに実話です。私のくだらない妄想がこの事象を物語たらしめていますが。
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  • 2025年1月29日

    ハーメルンの笛吹き集団

    私は人付き合いが苦手なのです。 相手の心情とか空気とか読むのがあんまり得意じゃないし、社会性も社交性もあまりない。 でもそれは、何か人付き合いが苦手なことを説明する免罪符のような気がして。 友達とご飯に行ったりとか、買い物に行ったりとか。 この何かノルにノレナイ感情に対する説明が欲しい。 誰か教えてくれると嬉しいのですが。 * 今週は、友達に誘われて10人ちょっとでヘルシンキに買い物へ。 中央駅のコンコースで待ち合わせ。 待ち合わせ時間ちょうどに行くと、薄着のフランス人が既に着いていて。 最近、フランス人はあんまり寒さを感じないんじゃないかと考えてる。 いつも薄着だもん。もしかしたら痩せ我慢なのかもしれないな。 十数分後、買い物旅の始まりだ。 集団、ましてや多国籍集団を率いていくほどの能力もないので、一番後ろから着いていった。 名前は忘れたけど、隣の奴に「ウェアーイズアワーディスティネーション?」と聞く。 予想通り答えは「わからない」と。う〜ん、想定どおりの展開。 騒ぎながら操られているゾンビのように、意味もなく大通りを練り歩いた。 ふと気になって、集団の一番前に割り込む。 左にいきそうな雰囲気だったから、右に行った。 そしたら従順に着いていく。 まるで子鴨の行軍のよう。 そのままどこかへ行ってしまうような、そんな気がした。 ” 皆必死でしたがもう騒ぐことすら遅いほどたくさんの子供達は行ってしまっていました。 すぐに町の人たちは捜索を始め何日も何日も長い事かかって捜したのですが、でも子供達のゆくえは誰にもわかりませんでした。 いまではもう子供達の行方を知ることもなくあの男の事も夢の中の出来事のように遠い昔の話になってしまっていますが、町では時折山のほうから楽しそうな子供達の笑い声や歌声が聞こえる時があるそうです。 “ ————ハーメルンの笛吹き男より 自分が何かをするときに、特に目標とか目的を持つことはない。 けれど、目標とか目的がない集団に属すのは、心の底から嫌なのだ。 自分はぼっちが1番性に合っているというのはすごく感じている。 それは自分の性格からも自明のことではあるけれど、何か自分のプライドが邪魔をしている感じがして。 でも集団に何か合わなくて、痩せ我慢をして。 レストランに行くと相手の注文したものが羨ましく思えてくるというのは人間のさが。 だけれど、だからと言ってその料理を注文したらしたで、またなんか違うな…となる。 どっちも疲れてしまうから、私の理想は集団と自分の間で都合のいい関係性が作りたい。 相手の料理から”ひとくち”もらえるような人生がいい。
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  • 2025年1月28日

    小説を書く元気がないので、近況ノートに日記を定期的につけます。

    明日からぼちぼちと〜
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