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ひみつのお話 その4

中学生のころ、とあるライトノベルでお腹が痛くなるほど笑った経験があります。
久しぶりにそんなことを思いだし、
ギャグものを書いてみたいと考え、とりあえず新しいお話を書いてみました。
ですが自分のギャグセンスに全く自信がありません。
とりあえずはこっそり読んでいただこうかな、と思った次第です。寒いと思ったら遠慮なく教えてください、お願いします。




「魔女っ子が恋のために色々するお話」


彼女の名前はリズ、彼の名前はナオト。
 二人はごく普通のロマンチックな出会いをし、ごく普通のラブラブカップルになりました。
 でも、ただひとつ違っていたのは……。
 彼女は魔女だったのです。

 あー。そうなったら良いなあー、と物思いにふける少女がひとり。
 くるりと跳ね上がった髪、アーモンド色の瞳、やたら血色のいい指先はスマホの上を行ったり来たり。
 好きな人のことを考えてると宿題がなかなか進まない、普通の中学二年生。

 それが私、雨宮理珠(あまみや りず)。——ただひとつ違っていることは、魔女であること。

「そうだよ、私は魔女。魔女なら恋愛の魔法くらい、使えなきゃダメだよ!」

 私はがばっと立ち上がった。
 部屋を飛び出て、階段を一足飛びに駆け降りて、キッチンへ。
 ジューっていい音、いい匂い。
 夜ごはんは唐揚げかな? って、そうじゃなくて。

「ママ、また魔法教えてくれない?」

 お鍋片手に振り返るママ。ママももちろん魔女で、私の師匠でもある。
 というか、うちは代々魔女の家系だ。
 ママのママ、つまり私のおばあちゃんも、ひいおばあちゃんも、みんな魔女。
 引きこもってる叔父さんもなぜか魔女らしいけど、それはちょっとよくわからない。
 男の人でも魔女になれるの? って聞いても、無言で目を逸らされるし。
 まあ、それはそれとして。

「いいわよ! 何の魔法が知りたいのかしら、皮膚が緑色になる呪文? 心臓に毛が生える呪文? おすすめはヤクルトが勝たないまでも引き分けになるおまじないよ!」

「うーんと、そういうのじゃなくて」

 スポーツに魔法を持ち込まないでほしいし、私、野球のこと詳しくないし。
 ちなみにママはヤクルトファンだ。
 そこは引き分けじゃなくて勝ちにしようよ、と思ったけど、やっぱりどうでもいいや。


「恋の魔法が知りたいの」

「……は?」 すんっ、となるママ。

「え、なに?」

「やめておきなさい」

 ママは真剣な顔できっぱり言った。

「中学生で恋愛なんてろくなことにならないわ。好きな人がいるくらいならいいけど、真面目に付き合おうなんて考えちゃ駄目」

 ……なんで? 私の恋なんだから、ママ関係なくない?
 むっとしてそう言ったら、チッチッチ、と指を振られる。
 うざー……。

「ママの経験から言っているのよ。そう、あれは入学式でのことだったわね……」

 いやママの恋愛とか聞いてないし。

「思えばあれが初恋だったわ……」

 知らないよ、てかどうでもいいよ!
 でもママは話し続ける。
 仕方ないから半分くらい耳を傾けた。

「三年間ずっと彼を想い続けて、卒業式の日に告白しようと思ったの。前の晩に手紙を書いて、朝一で渡そうと考えたわ」

「——それで?」

「風邪ひいて卒業式は出れなかったの」

「何でよ!」

「その手紙は今でも手元にあるわ」

「捨てなよ!」

 ため息をついて、だからね、とママは言う。

「結局、辛いだけよ。中学生の恋愛なんて」

 それは主にママ自身のせいでは。
 それに、とママが続けた言葉に、思わず私は大きな声を上げた。

「……もしあなたに彼氏ができたら、悔しいじゃない? 中学生の頃のママが負けた気がして」

「結局嫉妬じゃん!」




あれからあーだこーだ言い争いして、何とか教えてもらえることになった。
唐揚げでふくれたお腹をさすりながらママが持ってきたのは、分厚い魔導書。
表紙にでかでかと、金の箔押しで「魔導書」と書いてある。
正直、著者のセンスを疑うよね。

「恋の魔法、恋の魔法……後ろの方だったかしらね。お父さんに使った時以来だから忘れちゃってるわ」

ペラペラとページを繰っていくママ。
時々しおりが挟まっていて、「靴の手入れ呪文」とか「お塩とお砂糖変換呪文」とか、手書きで書いてある。
後ろの方にピンク色のしおりを見つけた。
これじゃない? と開いてみると。

「誠くん(パパの名前)を絶対オトす魔法♡」

……。
…………。
………………。

「……恥ずかしくないの?」

「効果は抜群よ」

私は見なかったことにした。




(一話おしまい)

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