今回描いたのは、病気や障害が残り、以前と同じようにはできなくなったあとに、その人の生活とどう向き合うのか、という物語でした。
福島の右手は、最後まで元には戻りません。
冬木も、以前のようにピアノを弾けるようにはなりません。
それでも、仕事を続ける方法を探すことはできる。
自分で音を鳴らせなくても、音と関わり続けることはできる。
そして、ときには誰かに託しながら、大切にしてきたものとの関係を続けていくこともできる。
最後に宮本が言った、
「調えただけです」
という言葉には、この章で描きたかったことを込めました。
そして國井も、少しだけ変わりました。
何か一つの正解を見つけたというより、簡単に答えを決めなくなったのだと思います。
ただ、その問いはここでは終わりません。
次の第2章で國井が向き合うのは、ALSという進行性の病気を抱えた人たちです。
今回のように「元には戻らなくても、別の方法で続けられる」と言うだけでは、答えにならないかもしれない。
できることが少しずつ失われていく人に、リハビリテーションは何ができるのか。
「よくする」とは、いったい何なのか。
第2章では、國井にもう一度、その問いと向き合ってもらいます。
第1章をここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
少し準備を整えてから、第2章へ進みます。
引き続き『語らない仕事』をよろしくお願いします。