筆者は大阪出身ですので、作品の中でも大阪弁を話す人物を登場させています。ところが大阪の方言にもいくつかあって、摂津、河内、和泉という分類があります。さらに大阪市内の商業地域で使う船場言葉というのまであります。大阪、狭いんですけどね。日本の都道府県の中で2番目に狭い。しかも摂津、河内、和泉の間に山があるわけでもなし、川があるわけでもなし。なぜ分かれるのか、不明です。でも、大阪の人は聞いてて違いがわかります。微妙ですけどね。境界地域に住んでいる人は、方言が混ざった言葉をしゃべっていると思います。だから大阪の読者が「この大阪弁は何か違う」と感じても、「混ざってる」「他の地方から来た」と言い訳が可能なわけです。それに、場合に応じて方言の度合いが変わる場合もあるでしょうし。
さて、大阪弁がわかっても、他の方言はよくわかりません。しかし、長編ミステリーを書くと、大阪以外の地方を舞台にすることだってあるわけです。その時に、その地方の登場人物の方言をどうするか? 筆者の場合、まずは標準語(に近い言葉)でいったん全部書いてしまいます。で、その後で方言に変換します。幸いにして、言葉を入力すると方言に変換してくれるというサイトがあるのです。もっとも、それで大阪弁を試したら「なんか変やな」という場合もあるわけですが、先に書いたとおり、全ての人が正確に方言をしゃべるわけではありませんし、場合に応じて標準語が混じることだってあります。また、プロの作家でも、方言部分はその地方出身の人に校閲してもらうこともあるようですが、その校閲者が完璧な方言を使えるとも限りません。だから、方言が一部不正確でも構わない、と思っています。文句を付けてくる人がいたら、「じゃあ、あなたは誰からも文句の出ない完璧な方言を話せるのですか?」と訊き返せばいいわけです。
ですので、「全員が標準語で話している」という不自然な状態さえ回避すればそれでいいと。ただし、方言の雰囲気「だけ」というのはやはり方言話者に失礼ですから、なるべくその方の人がしゃべりそうな言葉を書くようにはしたいです。ただ、方言のポイントはイントネーション(アクセント)にある場合も多いので、それは文字では表現できませんけどね。