今日は第二章『神に選ばれなかった勇者』のお話です。
第一章では「勇者とは何か」を描きましたが、第二章でやりたかったのは少し違います。
テーマの一つは、勇者でなくなった人間は、何になるのか。
でした。
レオンは魔王城へやって来ます。
ところが待っていたのは、華々しい勇者生活ではありません。
畑。
城壁修理。
食堂当番。
水門。
そして大量の規則(笑)
個人的に、レオンにとって魔物との戦闘より難しかったのは、たぶん魔王城の日常生活です。
ということで、ここで短いおまけを。
――――――
【小外伝 勇者と食堂当番】
「レオン」
「はい」
「鍋から煙が出ている」
「料理なので当然では?」
「黒い」
レオンは鍋を見る。
確かに黒い。
横からセラフィナが覗き込んだ。
「勇者殿」
「はい」
「本日の担当は?」
「俺です」
「敵襲ということにしてよろしいでしょうか」
「駄目です」
ヴァルドが匙で中身をすくった。
三秒ほど見つめる。
「……歴代勇者でも、ここまで我を苦しめた者はいない」
「そんなに?」
「食べてみろ」
レオンが食べた。
「……すみません」
その日の魔王城では、予定になかったパンが大量に消費された。
――――――
たぶん、こんな日もあったと思います。
第二章では、レオンだけでなく、力を失った元勇者たちについても描いています。
力がなくなった。
神に選ばれなくなった。
だから人生が終わるわけではない。
失敗した人にも、その後の生活がある。
第59話のタイトルを『神に選ばれなかった勇者』にしたのも、そんな理由からです。
「選ばれなかった」という言葉を、敗北ではなく自由として描きたかった章でした。