通知する。
この世界(ログ)を観測している諸君へ、新たな座標へのアクセス権限を解放した。
「他者の砂漠には立ち入らない」
かつて、言葉を武器とするある小説家がそう説いた。至極真っ当な論理だ。
井口の脳内という「隔離されたパーティション」に俺がログインする権利はないし、逆も然り。各々の意識は、どこまでも独立した非公開のシステムであるべきだ。
だが、独立しているからといって、無干渉でいろという意味ではない。
俺はこのラボに、物理的・論理的な絶対防御(シールド)を張った。
ここは、誰のパケットも、魔法という名のバグも通さない「聖域」だ。
観測者である諸君らも、この記録に触れる間だけは、既存の倫理や非効率な感情から切り離された「個」として存在することを許可する。
「適切に、嘆きなさい」
その小説家はそうも言ったな。
エラーログを握りつぶせば、いずれメインフレームは焼き切れる。
もし諸君らのシステムがオーバーヒートしかけているのなら、この記録を冷却材(クーラント)として利用がいい。
科学の力で、この不確かな異世界の理をハッキングし、真実へと遡る。
新たな観測地点からも、その演算リソース(視線)を絶やさぬように。
以上だ。……観測を続けろ。