こんにちは。連載の合間の雑記です。
今回は少し趣向を変えて、文体についての雑記を書いてみようと思います。『戦闘妖精・雪風』の一節を題材に、硬質な文章と柔らかい文章、説明する文章としない文章——それぞれの特徴を比較してみました。
誤解してほしくないのは、どの文体が優れているか?という話ではないということです。どの文章にも読者の好みがあり、作家の個性があります。ただ、自分がどんな文章を書きたいのか、それを考える材料になればと思います。
【原文】
深井零少尉はコクピットの外を見る。濃紺の空が広がる。ほとんど黒だ。星が見える。下は黄金色の惑星フェアリィが明るい。やがて空と同じ色になるだろう。
【極端なラノベ風】
零はコクピットの外を見た。
「……真っ黒じゃねぇか」
濃紺とか言ってみたけど、どう見ても黒だ。星がポツポツ見える。
視線を下げると、眼下には惑星フェアリィが黄金色に輝いていた。
「綺麗っちゃ綺麗だけど……」
でもこの光、どうせそのうち空と同じ色になって見えなくなるんだろうな。物理的に考えて。
零はそんなどうでもいいことを考えながら、操縦桿を握り直した。
【青羽が目指すところ】
零がコクピットの外を見ると、濃紺の空が広がっていた。ほとんど黒だ。星が瞬く。眼下には黄金色の惑星フェアリィ。鮮やかな輝きが、静かに闇へ沈んでいく。やがてすべてが空と同じ色に染まるだろう。
神林長平の原文が優れている理由:
・無駄な形容詞ゼロ
・感情の押し付けゼロ
・説明の最小化で読者の想像力を信頼
・深井零という人物の性格(感情を表に出さない)が文体そのものに表れている
・現在形の使用で「いま、ここ」の臨場感
「極端なラノベ調」が失うもの:
・静謐さ
・緊張感
・キャラクターの深み
・読者の想像する余地
・文学性
私の改稿は感覚を重視したものです。原文の簡潔さを残しつつ、「瞬く」「鮮やかな」など感覚的な語彙を追加しました。これは私の癖であり、好みでもあります。
ただ、実際は原文のままの硬質さが好きです。
硬質な文章は戦闘シーンや緊張感を作る場面でこそ使うべきで、その他の場面ではより感覚的な描写を目指すべきだと考えています。
おまけ:
【現代ライトノベル風H(異世界転生風)】
俺——深井零は、コクピットの外を見て驚愕した。
「うそだろ……これが宇宙ってやつか……!」
濃紺、いや、ほとんど黒に近い空間。星が無数に輝いている。地球では見たことのない光景だ。
そして眼下には——
「黄金色の惑星……フェアリィ、だっけ?」
異世界召喚されてから三日。まさか自分が戦闘機のパイロットになるなんて思ってもみなかった。
この惑星の光も、やがて闇に溶けて消えるんだろうな。まるで俺の元の世界での記憶みたいに——。
問題点: 不要な一人称視点、「俺」口調、転生設定の押し付け
典型例: なろう系テンプレ
もう一度いいます!
誤解してほしくないのは、どの文体が優れているか?という話ではありません。
作家は自身の好きな表現、自分が一番リズムよく読めるもの、脳内再生の精度が高いもの、感情が揺り動かされるものを目指すべきだと考えています。
例:灰の傭兵と光の園2期より抜粋
『ナナが飛び込んできた。息が荒く、目が乾いている。怒りで走ってきた顔だった。』
この「目が乾いている」ですが、読者が何を見るかだと思います。
私はこの一行で、ナナが「泣いて同情を求める少女」ではなく「怒って文句を言いに来る少女」だと表現しました。私は身体描写をよく使いますが、これもまた「説明しない描写」という私のこだわりの一部です。
私自身が目指す創作というものの先にあるのは、「問い」です。
読者自身が想像してその世界が一人一人の「オリジナル」になっていくことです。読む人が違えば、一つの描写が生む想像は読んだ人の数だけある。そう信じて書いています。
連載の合間の創作雑記でした。
お付き合いありがとうございます。
こんな青羽が現在書いている作品はコチラ。↓
「鳴らないホイッスル」SFの恋愛ものです。言うほど大したものじゃない、っという感情が芽生えた方はそっとブラウザバックをお願いします(笑)
https://kakuyomu.jp/works/822139843177860512