プロローグ:何故 “It’s Only Love” なのか?
この物語を書き始めるまで、私は自分に「初恋」と呼べる記憶があるのかどうかを、真剣に考えたことがありませんでした。
三月末生まれの私は学年でも最年少で、海外へ渡航した小学三年生までの同級生の記憶は、ほとんど残っていません。
海外では4年間、男子校のミッション・スクールに通っていたため、同級生として女の子に接する機会も皆無でした。
そして帰国後、編入された小学六年生のクラスで、初めて璃子を見かけた時の感動が、消去法で辿り着く私の「初恋」だったと思います。
決して特別な出来事ではなかったはずなのに、あの瞬間に感じた違和感だけは、今でも驚くほど鮮明に残っています。
そこで、第一部全体を貫くモチーフとなる John Lennon の楽曲から、Beatles 時代に書かれた “It’s Only Love” を選びました。
本編では触れていませんが、私は当時、彼女を泣かせてしまったことがあります。
今にして思えば、それは “Why am I so shy when I’m beside you.” の裏返しだったのでしょう。
https://youtu.be/Uv46hTWP7uk?si=b49xz2mwvjIzYM96
たかが恋心。
されど恋心。
John が歌った通りの、取るに足らない、しかし確かに人生に刻まれた感情だったと思います。
第1章 :The End の必然性
Francis Ford Coppola 監督のベトナム戦争を題材にした映画 Apocalypse Now「地獄の黙示録」の主題歌として有名な名曲です。
作者である Jim Morrison と監督がUCLAの同期だったことはよく知られています。
本作の日本公開が1980年春でしたから、彼女が去った時から何度も映画館に通ったのを覚えています。
そして ”I’ll never look into your eyes again.” の一節には、いつも魂を抉られました。
この楽曲自体は、The Doors のデビュー作に長尺のラスト曲として収録されています。
1967年という時代と、引用した歌詞が私の両親に対する心情とあまりにも重なっています。
https://youtu.be/ZeMlQEWEg2Q?si=Oi-5c5_MDSblXYas
やはり両親に恵まれなかった、John Lennon の “Mother” にも通じるものがあります。
第2章:Bridge over Troubled Water「明日に架ける橋」
国で一二を争う大富豪の家主でありながら、たかが日本人の私を我が子の様に慈しんでくれた彼等を、最も適切に喩える名曲だと思います。
https://youtu.be/kqADL0gfGF0?si=rBsl8xaKfrDNO0om
第3章:Dear Prudence の優しさ
この楽曲を初めて聴いたのは、確か姉が入手した "Ob-La-Di, Ob-La-Da" ブラジル盤シングルのB面に収録されていたからだと記憶しています。
本文中にもある通り、John の作曲であり、その旋律は愛犬の仕草とあまりにも重なって、今でも涙が溢れてきます。
https://youtu.be/eVP05ziY9ig?si=PUecEqXSSpQMZMA9
第4章:Sympathy for the Devil「悪魔を憐れむ歌」
Rolling Stones の “Beggars Banquet” でオープニングを飾る名曲です。
1968年の時代背景と、高慢で外面だけの父を形容するには最適な選曲です。
https://youtu.be/Jwtyn-L-2gQ?si=tKcioPtJoOgQyiay
第5章:Sentimental Lady の余韻
Fleetwood Mac の ”Bare Trees” に収録された Bob Welch のラブ・ソングであり、1977年には彼自身のソロ作でもリメイクされています。
1972年という時代に、目の前に現れた彼女の手の温もりと、目を逸らせば直ぐに何処かへ行ってしまう切なさを、絶妙に表現しています。
最も苦労した選曲だけに、思い入れのある文章となりました。
https://youtu.be/eXbXfTYOlng?si=SbX9ixDNP3gyhHe6
尚、1973年に初めて自から購入した Pink Floyd「狂気」The Dark Side of the Moon は、私を本格的に音楽の世界へと導いてくれた作品です。
第6章:Cause We’ve Ended as Lovers「哀しみの恋人達」
1975年春、祖母に買って貰ったSL-1200に初めて載せたレコードが、Jeff Beck の新譜 ”Blow by Blow” でした。
哀しい恋の行く末を暗示するかのような Stevie Wonder の言葉なき楽曲が、あまりにも切な過ぎます。
https://youtu.be/VC02wGj5gPw?si=U745_hp7AYpy2bNa
そして Genesis「月影の騎士」Selling England by the Pound は、タイトルからして英国的ユーモアがあり、今でも文学的価値の高い作品です。
第7章:The Real Me の本音
The Who が1973年リリースした、ロック・オペラ「四重人格」Quadrophenia からの選曲です。
“Can you see the real me, Doctor?” のDoctorをFatherに変えてあり、思春期の青年の複雑な心境を克明に再現しています。
https://youtu.be/Z5nMh0UItjc?si=VN9tLB9Dxj07qnsB
そして Abbey Road と同じく、第二部の Brighton への聖地巡礼と挙式へと繋がる布石となります。
第8章:She‘s a Rainbow と希望
サイケデリック期 Rolling Stones の可愛いらしい楽曲です。
Nicky Hopkins の美しいピアノの旋律が、大人になった彼女の容姿と見事なまでに重なり合っています。
私にとって彼女は、時代を照らす虹そのものでした。
https://youtu.be/6c1BThu95d8?si=C318033FLeM04n16
第9章:二十歳のBirthday
第3章の ”Dear Prudence” に続き White Album から2番目の選曲です。
純粋に彼女の二十歳の誕生日を祝っています。
https://youtu.be/zGwtwBJDBDA?si=07HJdqpY06JhRzOD
第10章:Is This Love?「これが愛ですか」
Bob Marley & the Wailers が、1978年リリースした "Kaya" 収録の真夏に相応しい名曲です。
カリブ海近くで育った私にとって、レゲエは日本人における演歌のような存在でした。
そして、下心なく “I wanna love you and treat you right.” が本心でした。
https://youtu.be/69RdQFDuYPI?si=hCeMnsXfskGwHwxo
第11章:Ain’t That So?「そうじゃないよね」
1979年の入学と同時期、Roxy Music がリリースした “Manifesto” 収録曲です。
Bryan Ferry 独特の距離感と気取った佇まいが、二人の未熟な駆け引きを象徴していると感じます。
振り返ればそれは、相手を試す行為ですらなく、ただ自分の不安をごまかすための身振りです。
"How soon we fool ourselves how slow we tread."
この一言に、すべてが帰結します。
https://youtu.be/YO2huHlPDW0?si=pn6X_XTETwKLY9NE
第12章:異邦人〜Jealous Guy
久保田早紀の「異邦人」は、異国の風景を借りながら、実は“居場所を見失った心”を静かに歌った名曲だと思います。
彼女の隣にいながら、私はどこかで常に部外者でした。
言葉も、距離の取り方も、感情の扱い方も分からない。
ただ好きだという気持ちだけが、場違いにそこにあった。
https://youtu.be/HgvzyBkYsKU?si=g5rKqVgkGl1WxfmV
後に、その姿に John Lennon の “Jealous Guy” が重なります。
“I was trying to catch your eyes, thought that you were trying to hide.”
それは彼女への非難ではなく、未熟だった自分自身を引き受けるための告白でした。
https://youtu.be/wADRRYNHhOA?si=ttxOSCZRbmoARX7-
異邦人だったのは、彼女ではなく、私自身だった。
そう気づいた時、この物語の第一部は静かに終わります。
第13章:君は天然色
1981年当時、ドライブの定番だった大瀧詠一の ”A Long Vacation" から選曲しました。
Phil Spector 調なのに「思い出はモノクローム、色を付けてくれ」が悲しすぎる名曲です。
https://youtu.be/L-hyY-1luHs?si=8wD_L9geG_IRp2xW
そして Bryan Ferry の歌う "Jealous Guy" は、「こんなのあり?」と唸らせる程の出来栄えでした。
https://youtu.be/hRzGzRqNj58?si=XQAwud7SDQl_8GZ8
第14章:You Make Loving Fun
1977年の記録的作品 ”Rumours" 収録のFleetwood Mac から2度目の選曲です。
Christine McVie が愛犬との思い出を歌った、可愛すぎる楽曲です。
https://youtu.be/ZsDJLaqw5Tc?si=9AVA001uCMPXAP1V
エピローグ:Avalon そして終焉
1982年リリース、Roxy Music の最終作 "Avalon" のタイトル曲になります。
もう何も申し上げることはありません。
https://youtu.be/bpA_5a0miWk?si=RtpWjLvbqCFCdxQh