きみの声

あれ?きみの声が聞こえてきてきみを捜すもそちらの方向にきみは見つからず、代わりにきみではない、もう1人の今のわたしの好きな人が忙しそうに立ち働いていた。きみは今日ほとんど姿を現さなく、いつものように帰り際に廊下で待ってることもなかった。そしてそんなことはこの会社に入って初めてのことであり少し、切ない。もう1人の好きな人は、なんだか今日ご機嫌斜めでいつになくわたしに辛く当たった。いつもならきみに慰めてもらえるところだ。わたしは別に好きな人に振られても構わない。きみと一緒の職場は、あと16日ほど。月を越えたらわたしはもう既に、新しい派遣先への入職が決まっている。辛く当たられたことくらい何でもないが、今日はなんとなく姿を現さないきみの姿を捜してた。わたしの言う世迷言なぞきみは本気にしない。少なくともその筈だと、さきにはしっかりときみに告げられている。なんか情け無くて涙が出るが、たぶん今日の下降気流のせいだと、頭のどこかで分かっている。きみに言いたいこと・言いたかったことは全部、きみに渡されずにわたしが持ったままだ。こんなにキラキラした想いたち。きみは『言わずとも分かってる。』と、わたしに申した訳だった。今日のわたしはなぜかすっきりとした気持ちで、どこかの誰かに振られるように振られ、涙は滲むも心晴れやかに、いつかきみの言った、“瞬間(とき)”が来るのを待つ構えだ。

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