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とある世界を創作したある一人の独白

「いつまでじっとしているつもり?」

「こんな所にいないで、君の大切なお姉さんの所まで行って声をかけてあげなよ」

「無理? そんなはずないよ。だって僕は君の一部でもあるんだから」

「僕ができた事を、君ができないはずがない」

「たとえ君がその世界に存在しなかったとしても」

「ただの幻にしかすぎなかったとしても」

「これを見ている彼等に向けて、君が何を考えているのかぶつけてみなよ。そして、本当の願いを口に出して訴えてみたら? 声をあげなきゃ、行動しなきゃ、誰も聞いてくれないし、足をとめてなんてくれないよ」

「君にしかできない事があるんじゃないの? 幻でも仮初でも、君はいまここに、確かに存在してるんだ。出来る事なら、きっとある」





 勝手な事言うなよ。
 僕の劣化コピーでしかないくせに。

 何で僕より……

 ……

 ……

 ……

 生まれたかった。

 この世界に存在したかったよ。
 ーーと一緒にいたかったよ。

 でも、無理なんだよ。
 僕はこの世界に生まれなかったんだから。

 なのに、なんで本物の僕に出来なかった事がお前にできるんだ。
 創作物でしかないお前が。
 仮初の命しか持たないお前が。
 吹けば飛ぶような、ちっぽけな命しか与えられなかったお前が。

 存在しない事を運命づけられたうえでこの世に誕生したお前が。

 ああ、そうだよ。
 助けたいよ。

 偽りの存在でしかないけど、本当は生きてすらいないし、生まれすらしなかったけど。

 それでも、僕はーーを助けたい。

 これをみている誰か。
 誰でもいい。
 どうかーーを気にかけてやってください。
 どうかーーを助けてください。

 隠された犯人を探し出してください。

 もしも、そんな奇跡がおこるというのなら。
 
 僕とーーが出会える奇跡もおこるのかもしれない。
 僕がこの世界に生まれる奇跡もおこるのかもしれない。

 都合の良い夢物語だと思うけれど。


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