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《空陰り紫陽花濡らす昼下がり》 推薦レビュー 

《空陰り紫陽花濡らす昼下がり》
推薦レビュー 

この句集を推薦するのは、第1に作者のスケッチブックに自分の経験をそのまま写し取った今しがたできたばかりのような新鮮さを持って読者の前に出現していることだ。
まるでプロヴァンスの出来立てのフランスパンと午後の紅茶のアールグレー茶のような良い香りがしてくる。写生俳句の提唱者である正岡子規を彷彿させる句と言えよう。作者の思い入れとかいうものは一切ここでは排除され、ただ情景だけが描写されている。
例えば学術論文でもそうであるが 優れた論文 というものは他の論文でのその論文の引用数が多いのが特徴である様に、優れた句はそれが読者のインスピレーションを呼び起こして新たな詩歌を紡ぎ出し、海王星の詩海へと我々を導いてくれるそういう魅力的な句となっている。
この句では紫陽花が主役であるが、それを脇役に転じることで一つのドラマが
例えば以下のようなストーリーが
朝食前に浮かんで来たのだ

昼下がりの不倫の後
ホテルを出たら
雨上がりの
濡れた紫陽花が
美しかった
駅までは
ひとりだった


昼下がり雨音が紫陽花となり
朝まで濡れたふたり寝の宿

あじさいの雨音を聴く夜勤まで
彼の記憶にうずもれながら

《空陰り紫陽花濡らす昼下がり》
アールグレー茶に浸されながら






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