このシリーズは、ごくごく一部、事実に基づいております。
事実そのままじゃありませんよ。僕が現実に遭遇したことや、ネットで見聞きしたことをヒントに、何十倍にも膨らませたり大幅に改変したりしてフィクションに仕立ててるんです。
今回の話もヒントがあります。
ほんとにね、いたんですよ、こういう奴が!
宴会の席、つまり食事をしてる最中に、「ヴェルサイユ宮殿にはトイレがなかった」なんて話をしてきた奴が! 年下(たぶん三〇歳ぐらい)のゲーム業界の人間でしたが。
そいつは「ダンジョンにトイレが無いのはおかしい!」「ダンジョンの中はモンスターや冒険者のうんちだらけのはずだ!」と力説するんです。繰り返しますが、食事中にです。
しかも僕に、「山本さん、書いてくださいよ! ダンジョンの中の冒険者のトイレ事情を!」と要求してきやがるんですよ。冗談じゃなく、本気で。僕が「そんなの書きたくないよ」と断っても、何度も何度もしつこく。
どうも自分の思いつきに夢中になってしまって、どうしてもそれを作品にしないといけないと思いこんでしまったらしいんですね。具体的に作品にした場合にどれほど下品なものになるかが想像できてないし、僕がなぜ断るのかも理解できない様子。
ね、面倒くさいでしょ?
僕に書かせようとする理由は、自分に文才がないから。「俺、山本さんの小説が大好きなんです!」「山本さんの才能を尊敬してるんですよ!」などと歯の浮くようなお世辞を並べ立てるんですが、そんなの信用できるわけがありません。
だってそいつ、僕が〈BISビブリオバトル部〉というシリーズを書いてることすら知らなかったんですから(笑)。
ちなみに、僕が「有川浩」という名前を口にしたとたん、いきなりスマホを取り出して、僕の目の前で検索をはじめたのも実話。
そこまでは我慢してたけど、その瞬間にぶち切れました。「お前、有川浩も知らんのか!?」と。
「『図書館戦争』って聞いたことない?」
「ああ、アニメは一度だけ観たことあります。でも俺、アニメの監督の名前とかに興味ないんで」
って、本当に言いやがりましたよ! 有川浩さんをアニメ監督だと思ってる!?
アニメや小説に何の興味もない人間ならともかく、ゲーム業界の人間ですよ。ジャンルは違っても、創作を生業にしてるはずじゃないですか。それがここまで無知って……。
もう本当にむしゃくしゃして帰ってきたんだけど、そうした実話をそのまんま書いても面白くならない。そこで思い切り誇張してコメディにしてやろうと思いついたわけです。
ね、腹が立つ話も、こういう風に書けば楽しめるでしょ?