第4話「放置」で一番苦労したのは、過去の話をどうやって続けるかでした。
第1話、第2話では、藤黒と山城の過去を回想として描いています。
でも、第4話でも同じように過去へ場面を切り替えて、その続きを描く。
それでは面白くないと思いました。
過去の続きを描きたい。
でも、もう「過去回想」という形ではやりたくない。
そこで考えたのが、現在進行している物語の中で、二人の会話として過去を描くことでした。
そのために使ったのが、手錠を壊す場面です。
やっていること自体は単純です。
石を持ち上げて、手錠の鎖へ叩きつける。
また持ち上げて、叩く。
それを何度も繰り返す。
物語としてはほとんど同じ作業が続くのに、なぜか見ていられる。
そんな場面を作ってみたいと思いました。
そして、その単純な作業の最中に藤黒と山城が昔の話をすることで、第1話、第2話から続いていた過去の物語を進めています。
現在では手錠を壊している。
会話の中では二人の過去が進んでいる。
この二つが自然に重なるように作るところは、かなり苦労しました。
もう一つ、第4話で意識したことがあります。
それが、羆牢のルールを誰かに説明させないことです。
こういう特殊な制度を舞台にすると、政府や管理する側の人間が登場して、
「ここではこういうルールです」
「あなたたちはこれからこう生活します」
と説明することもできます。
でも、それだけはやりたくないと最初から決めていました。
何も説明されない場所に突然放置された人間たちが、自分たちの置かれた状況を見て、考えて、少しずつ「ここはどういう場所なのか」を推測していく。
読者にも、彼らと一緒に羆牢を知ってもらう。
第4話「放置」は、そんな作りを特に意識した回です。