このシリーズの出発点は、学生時代にまとめた論文と研究ノートでした。
三国志は広く親しまれている題材ですが、その一方で、正史よりも演義の印象が強く、またインターネット上には誤情報も少なくありません。翻訳書の中にも、一次史料と照らし合わせると疑問符をつけたくなる箇所が見受けられることもあります。そのためこのシリーズでは、できる限り自力で一次史料を読み、訳した内容を土台として執筆しております。
執筆にあたって大切にしてきたのは、史料の積み重ねと生活感の再現です。人物の言動だけでなく、地域差や身分差、日常のあり方まで含めて、その時代を生きた人々の姿に少しでも近づければと思いながら書いてまいりました。
目立つ作品ではないかもしれませんが、自分にとっては長いあいだ大切に温めてきた題材です。
物語の登場人物としてではなく、かつて確かにこの世界に生きていた一人ひとりの人間として、彼ら彼女らに関心を持っていただけたなら嬉しく思います。もしさらに興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一次史料にも触れてみてください。後世の語られ方とはまた異なる、生身の人間の姿がそこにあるはずです。
いつも読んでくださっている方、そしてこのシリーズを見つけてくださった方に、心より感謝申し上げます。
※参考までに、執筆時に参照した一次史料公開サイト名と、2019年に台湾・故宮博物院で撮影した史料展示の写真をあわせて載せておきます。作品の背景にある調査の雰囲気も、少し感じていただければ嬉しいです。
参考サイト
漢籍全文資料庫