4・甘い芳香は硝煙に溶けて甘
結局マスターの店先の満開の桜を眺めながら、ようやくゆっくり一服出来たってワケさ。
さてとマスター、下知を取られるのも何だから消えてもら……マスター、その銃はどこから出したんだい? あたしの目に留まらない速さで銃を抜ける奴なんて、二人目だよ。
もう一人は……なるほど、あの目出し帽の射撃教官がマスターだったわけだ。面白い手品じゃないか、もういっぺんやっておくれよ。
何で左手でやるんだい? そこは悪党のお約束でもう一度やって見せようとして、スキを見せるところだろう。
? リキュールグラス?
いつも思うんだが、目の前で止まるのは、何か機械仕掛けになっているのかい?
これが末期の酒ってヤツ?……ジジ臭いけど、遠慮なく頂くよ。
…………
…………
美味いよ、これ! ウィスキーなのにまるで熟成したワインのような芳醇な甘い香りと味わい!
有難うよ、マスター。ここまで用意されちゃあ、なにも文句は言えないよな。
まぁ、なんだい、自分語りをする奴のオチなんてのは、大概決まっているものだからね。それにしちゃあ想定内の銃弾と、とんだ想定外の贈り物だ。
遠くの地の戦争を憂いながら戦争のゲームをするような、凄惨な事件に胸を痛めながら、サスペンスに夢中になるような。そんな素晴らしくも狂ったクソみたいに眩しい世界だ。
『やめとけ』? やだよ、敵わなくてもクソッタレな女の意地は通させてもらうよ。
バズン!
…
……
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…………
おわりだよ。
自分の体が崩れるように倒れてゆく。
こぼれたウィスキーの甘い芳香が硝煙に溶けていくのを感じながら。
了