あ、死んだ、と思った次の瞬間、俺は不思議な空間に浮かんでいた。
目の前に光る玉のようなものがあって、それを見て「あ、神様だ」と理解する。
『あなたは死にました。そこで、次の世界に転生するための手続きを行います』
「それって、もしかして、なにか特典とかもらえるんですか? すごい力が使えるとか」
『いいえ。死後、あなたがどういった存在に転生するかはすべて無作為に決定されます』
「むさくい……?」
『ランダム、ということです』
実際に見たほうが早いでしょう、と、目の前に光る文字がずらっと表示された。
長いので一部だけにとりあえず注目すると、
性別:男性 最大身長:178㎝ 最大身体能力:一般戦士級 最大魔力:並
生まれ:貧民 家庭環境:やや良し
『転生後の世界は、魔法や魔物が存在する、いわゆるファンタジー世界です。
ステータスのうち「最大」と表記されているものに関してはあくまでも理想値です。実際には、栄養状態や適切な訓練が行われたかどうかなどによって変動すると考えてください』
「なるほど。……じゃあ、あんまり良くなさそうだな」
『なにか希望がありましたか?』
「そりゃあもちろん、生まれ変わるからには強い男になって女の子をいっぱい侍らせたい!」
ぐっと拳を握ると、神様は少しだけ沈黙したように思えた。
『無作為の結果が希望に沿わない、そもそもそちらで操作しているのではないか、という声もよくありますので、やり直しが可能です。今のステータスを含めて合計10回分まで』
「つまり、あと9回やり直せる?」
『そうです。ただし、やり直した場合、いまの結果は破棄されます。いまの結果を選ぶか、あるいはやり直すかの二択ですのでご注意ください』
「なんだかゲームみたいだな」
取り消しがきかないっていうのは怖いけど、あと4回もあるんだからリセマラしないともったいない。
俺が「やり直します」と告げるとすぐに光る文字が別の内容に切り替わった。
それをまたまじまじと見て、
性別:女性 最大身長:153㎝ 最大身体能力:やや良し 最大魔力:やや高い
生まれ:下級貴族 家庭環境:最悪
『貴族ですね。かつ、魔力量もそれなりです。いい結果なのでは?』
「いや、ちょっと待ってください。『性別:女性』って……」
『無作為ですので、当然女性になることもあります』
ぐ、と、俺は黙った。
女になんかなったらハーレムどころか、男と結婚させられかねない。あと、家庭環境が最悪すぎる。最大身長も153じゃ、実際は150割りかねないじゃないか。
当然、
「やり直し」
性別:ふたなり
「うおおおおおおっ!? やり直し!」
種族:昆虫族
「そんなのありかよ!?」
『人間に近い種族ほど高確率になっていますので、昆虫族はかなりのレアですね。おめでとうございます』
「嬉しくない! やり直し!」
性別:男性 ペニスサイズ:最大11㎝ 精力:低 最大魔力:高い
「これ絶対遊ばれてるだろ俺!」
『そう言われましても、すべてが望み通りの結果になる確率はかなり低いですので。どこかで妥協していただきませんと』
それはその通りだけど、さすがにこんな結果じゃだめだ。活躍はできても一生童貞で終わりかねない。
「やり直し」
そこで俺は、また新たな項目に目を留めた。
それは、
記憶の継承:なし
「こんな項目ありましたっけ……?」
『ありましたよ。ほら、前回までの結果を閲覧だけは許可しましょう』
あった。どうやら記憶を引き継げるかどうかまでランダムらしい。ただ、全6回分のデータを見る限り、少なくとも一部は引き継げることが多い。完全に引き継ぐのもそんなに難しくはないんじゃないか。
「っていうかもうあと4回か……。とりあえずやり直し」
性別:男性 最大身長:163㎝ 最大身体能力:英雄級 生まれ:孤児 家庭環境:悪い
ペニスサイズ:最大17㎝ 精力:高 記憶の継承:一部
「お! う、お、おおお……!? す、すげえ中途半端!」
悪くない。今まではいちばん望みの結果に近い。でも、生まれが孤児だ。
家庭環境はまあ、家庭なんてないに等しいだろうから仕方ないとしても、記憶の継承も一部だけ。
ちゃんとした家庭なら記憶がなくてもやっていけるだろうけど、孤児でこれじゃ幼い頃に野垂れ死にかねない。
悩ましい。悩ましいが……俺は、涙を呑んでやり直しを選択。
「次!」
生まれ:王族 家庭環境:悪い 育児費:潤沢
「お、王族!? ……ってこれ、あれか。ちゃんと王族として育ててはもらえるけど、親からも『使えるか使えないか』でしか見られてないし、下手すりゃ子供同士で暗殺とかするやつか」
無理、次!
「やり直し……!」
性別:女性 容姿:平均よりやや下
「……強ければ女の子は寄ってくると思って気にしてなかったな。うわ、あっという間に追い詰められたじゃんこれ」
俺は遠い目になった。やり直せる回数はあと1回。つまり、次の結果は必ず受け入れないといけない。
『大人しく昆虫族にしておけば良かったのに』
「ない。昆虫族だけは絶対にない! ええい、これだけ微妙な結果が続いたんだからそろそろいい結果が来るはずだ! やり直し!」
悩みに悩んだ末、俺は最後のチャンスに賭けた。
その結果は、
『おお、これはすごい。こんなに良い結果が出るのはめったにありませんよ。最後まで粘った甲斐がありましたね。心から祝福を贈らせてください』
結果は……あああああ!?
性別:女性 最大身長:161㎝ 最大身体能力:一般人としては高い 最大魔力:かなり高い
生まれ:中級貴族 家庭環境:良し 容姿:美人
記憶の継承:完全
最大バストサイズ:105㎝
「あああああああああああ!?」
『良いではありませんか。これならば英雄として活躍することも不可能ではないでしょうし、普通にしていても良い縁談が見込めます。王族から婚約を申し込まれてもおかしくありませんよ。順風満帆な生活ですね』
「……そうですね。結婚相手が男でさえなければ、悪くないですね」
これならいっそふたなりのほうがまだ女の子と付き合える目があったんだじゃないか。っていうか、このステータスで見た目まで良いって逆に男がほいほい寄ってくるじゃないか。
「あ、あの、なんとかもう1回やり直せませんか?」
『だめです。それに、やり直した結果、リザードマンのメスとかになるかもしれませんよ』
俺は死んだ目になりながら「……人間の女の子でいいです」と言うしかなかった。
『では、お別れですね。良い来世を』
来世ガチャとかクソだ。俺は心からそう思いながら、将来巨乳が約束された美少女に生まれ変わった。