薄いグラスの割れる音が好きだ。
儚く、涼やかに、パリンと割れるあの音が堪らなく好きだ。
人に言えば、「割れる音が好きなんて……」と、たいてい眉を顰められる。
それでもやっぱり、好きなものは好きだ。
あの乾いた、どこか柔らかい音を聞くだけで、思わず微笑んでしまう。
いつからかと聞かれたら、答えはあの時からだ。
薄いグラスを洗っていたときに、手元でそれが割れた、まさにその瞬間。
グラスは割れた勢いで、私の指を深く裂いた。
滴り、流れていく鮮やかな血を見つめながら、私はただそこに立ち尽くしていた。
「何やってんだ!」
飛んできた家族の怒鳴り声に、ハッと意識が現実に引き戻される。
私は、笑って振り向いた。
>殺愛奇譚 更新しています。
覗いていただけますと幸いです。
第三章、舞鶴での逗留もはや10日
https://kakuyomu.jp/works/2912051597472997616d
>現在連載中です!宜しければこちらもご覧下さいませ。
「京都 怪異の坩堝(実話ホラー短編集)」
https://kakuyomu.jp/works/822139841671394640
>エッセイ「理不尽を食べて生きる 不条理クロニクル」
https://kakuyomu.jp/works/822139843585266179
>完結済の作品『棲か:根絶やしの家』です。
宜しければご覧になってください。
https://kakuyomu.jp/works/822139842994029143