雨上がり。
大きな青い葉の上に、こんもりと膨らんだ水滴が一粒。
それは今にも零れ落ちそうな危うさを孕みながら、
「自分」という形状を保つことに、必死で耐えている。
ふと覗き込めば、その巨大な水滴の中に、
小さな蝶が閉じ込められていた。
もがくわけでもなく、逃げ出す風でもない。
蝶はただ、レンズのように歪んだ水の中で、
自らの美しさに酔いしれるように、弛(たゆ)んでいる。
そこが、世界のすべてだと思い込んでいるかのように。
私は、その完結した美しさが、ひどく目障りだった。
指先で、そっと葉を揺らす。
耐えきれなくなった水滴は、重力に従って地面へと落下した。
その刹那。
蝶は嘲笑うように、力強く羽を広げた。
砕けた水滴を置き去りにして、
「空気」という名の、果てしない自由の塊へと溶け込んでいった。