実家の近所に変わった場所があります。
そこは、川が大きく曲がっていて、その上を鉄道の線路が通っています。
誰かが飛び込んだのでしょうか。
線路の脇にはいつも仏花とペットボトル飲料が供えられていて、花はいつも新鮮で萎れているところは見たことがありません。
きっと亡くなったのは幼い子だったのでしょう。
執念や後悔は呪いになる気もします。
複雑な気分にさせられますが、そこでは冬以外
沢山の麝香揚羽(ジャコウアゲハ)を見ることが出来ます。
毒蝶である彼らは、優雅にゆったりと飛び、
黒いアゲハではありますが、少し透かしが入っていたり毒々しい赤やオレンジの模様はどこか妖艶です。
そんな蝶がまさに乱舞しています。
麝香揚羽は夕方や曇りの日によく飛ぶ蝶です。
その湿っぽい優雅さは蝶というより蛾のそれに近い気もします。
実際、麝香揚羽にそっくりな揚羽擬(アゲハモドキ)という蛾もいます。
きっと麝香揚羽を羨んだのでしょうね
しかし、麝香揚羽は蛾ではありません。
その湿っぽさは生来のものというより後天的に獲得したような、酸いも甘いも知って色々なことを取るに足らないことと理解した上で、敢えて演じているような気がします。
近づき難い美女でもあり、無邪気に戯けて悪戯をしかけてくる幼子でもある、
そんな黒い天使を見に私は度々散歩に出掛けます。