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ドラ嘘Tips:姫と騎士はなぜくっつかなかったのか

おはようございます文遠です。今日はドラ嘘を最新までお読みいただいた読者さんからの疑問、

「どうしてフィールーンとリクスンは恋愛関係にならなかったのか」

について語っていきたいと思います。

☆☆ご注意☆☆

本編6章『炎の還る場所』の全体ネタバレが含まれます。お読みになる予定がある方( ありがとうございます♡)はぜひ読了後にこちらの記事をご覧くださいませ、いつでもお待ちしております!m(_ _)m(気にならない方はどうぞお読みください)

あといつも通り長いです。うん知ってる。あ、最後にはイラストに関するおまけの小話があります(汚ねえ





第1章にいただいた感想を見てみると、「フィールーンとリクスンはくっつきそう」という内容が散見されます。作者が言うのもなんですが、これって何気に正論なんですよね笑。苦悩のお姫様と、幼い頃から彼女を支えて護ってきた騎士――デカい斧を振り回して城の一部を倒壊させたどこかの竜人よりよっぽどヒーローみがあります(言っちゃったな)

そんな騎士リクスン。6章まで読んでくださった方はご存じの通り、エルシーとの恋愛ルートへ進む流れになっております。これは最近考えた設定ではなく、作者の中では最初から決定している(いわゆるサブカップル)ものでした。まあ1章の掛け合いがベタだったので、気づいた方はすぐ気づいたと思うのですけど^^; 

しかし冒頭で書いた通り、フィルとリンの関係性を考えればくっついて当然というか、意識しないはずがないんですよね。

さて、二人が恋愛関係に至らなかった理由は実はふたつあります。どちらもセイルたちと出会う前、過去のことです。

1:恋愛よりも尊敬の念が強い&リクスン自身が恋を禁じている
2:フィールーンの初恋相手がカイザスだった

順番に書いていきますね。

1:恋愛よりも尊敬の念が強い&リクスン自身が恋を禁じている

この解を投げてくれるのが 本編6章に出てくるリクスンの過去です。彼は貴族でもなんでもなく、小さな村の長の息子という平凡な生まれです。普通の子よりは厳しく育てられ、礼儀と正義心が少し強い男の子というくらいの特徴。しかし病に冒された山賊たちの略奪により、 家族と村をすべて失ってしまいます(最初は妹がいるという設定でしたが、書いてみたらここでの死に方がえげつなくてしんどくなったのでやめたという裏話を急にしておくよ)

自身も死を覚悟した瞬間、騎士隊長カイザスが現れ命を救われます。その後は彼の家に引き取られ、義弟として生きていくことに。そしてこのカイザスに命令(お願い)したのが、まだ幼いフィールーン姫でした。城の大人の誰もが諦めた村への騎士派遣を成した王女、その気高さにリクスンは心を打たれます。そして今後の人生をすべて捧げてお仕えしようと騎士見習いの道へ。

そういうわけで、フィールーンはリクスンの人生上もっとも大切な恩人です。カイザスについて回る毎日の中では彼女に遭遇する機会も多く、少年と少女は自然と仲良くなっていきます。フィールーンの父であるラビエル王も娘に友ができることを喜び、二人は王女と騎士見習いという垣根を越えて仲を深めていきます。

……ここで通常なら、物心つく頃には自然とお互いに恋心が芽生える展開キター!ですよね笑 どんどん可愛く、そして賢さを増していくお転婆な姫の姿に、もしかしたらあのリクスンも数度くらいはTOKIMEKIを感じたかもしれませんw しかし彼は残念ながら、ただのロマンスを夢見る騎士見習いではなかったのです。

故郷を無残に失った恐怖。大事な人を守れなかった後悔――そして自分だけ生き残ってしまった罪悪感。真っ直ぐ剣を振る毎日の中でも、心の奥でそれらが重い枷のように少年を縛り続けました。平たく言えば、自分は人並みの幸せを享受すべき人間ではない、と思っていたんですね。読者さんに教えていただいたのですが、こういった自責の念を「サバイバーズ・ギルト」と言うらしいです。うーん辛いなあ……。

つまりリクスンは普通の少年なら恋心を含め、抱いて当然のわがままだったり欲望だったりを全部押さえ込み、ただただ「騎士」としての役割に徹しながら生きてきた青年です。それに加えフィールーンが竜人化する例の事件が起こり、ふたりは恋だのなんだのを楽しめる子供ではなくなったのも大きな要因です。

義兄が輝きすぎてるのでかすみがちですが実は顔は悪くないので、城の侍女たちから好意を向けられることもあったんじゃないかな。それらをどう断ってきたか…もうお察しですね笑。


2:フィールーンの初恋相手がカイザスだった

この話、どこかでしましたっけ?とりあえずしておきますね。フィールーンの初恋はずばりリンの義兄、カイザスである――――――と、とある大国の王は語っているそうです。ちょっと話をきいてみましょうか。

「なにっ!? そなた、その話を聞きたいと申すのか!? ふふーんよかろう、カイに見つかる前に話してやろうぞ。えっ……今、余が何をしているのかだと? 気にするな、ちょっとした隠れんぼなのだ」

「さて、娘の初恋の話だったな。そう、あれはあの子が7つの頃……とにかく可愛い子でな、少しお転婆なところがあるがまさにその姿は天ノ国の御使いそのもの、あるいは虹の妖精がヒトの姿をとったものかと……ぬ、少し飛ばせと? まあ焦るでない。あの子の黒髪を知っておるか? なんとも美しい――」

(早送り&カット処理)

「……そんな愛らしい我が娘にもついに、愛の神のささやきに気づく瞬間が訪れたのだ。その日、城の長廊下を余はひとり、娘と食べたい秘蔵のおやつを持ってウキウキと歩いておった。ん、なぜ護衛もつけずにだと? まったくそなたは細かい性格だな。王様だってそういう日もあるのだぞ。……で、見てしまったのだ……我が娘に、一輪の薔薇を差し出すカイザスの姿をッッッッ!」

「完璧な所作で跪き、長い手で優雅な薔薇を掲げるあの男の姿はなんというか、男の余から見ても素晴らしい魅力にあふれておった。当然、うぶな娘はポッと頬を赤らめてな。もじもじしながらも、その薔薇を受け取ったのだ!そして恥ずかしくなったのであろう、そのままタッと走り去ってしもうた。だがこのラビエル王が断言しよう、娘はあの瞬間、愛の女神の祝福を享受したのだ! ぐす……な、泣いてなどおらぬわ……」

「探しましたよ、陛下。おやつの時間までもう一踏ん張りではありませんか」
「はっ、カイ! くそ、もう見つかったか……。少し待て、余はこの者に歴史が変わった瞬間の話をしておるのだ」
「またフィルと私の“ろまんす”とやらの話でしょう」
「うっ……そなた、なぜいつも話を先回りするのだ」
「何度も申し上げたはずです。あの薔薇は調薬室への届け物で、私は鍛錬場への道すがら配達を承っただけ。その途中で出会ったフィールーン姫様――お父様と同じく、“隠れんぼ”の最中だとおっしゃってましたが――に、一輪譲って欲しいと頼まれたのです」
「ぬう……」
「その一輪をどうなさるのかと興味でお尋ねしましたら、姫は嬉しそうに笑って仰いました。“掃除人たちはろうかの花びんにお花をいれてくれるのに、彼らのおへやにはお花がないから”……と」
「うおおおん、うちの娘、かわいいッ! 愛いが過ぎるッッ」
「さあ陛下、これでご満足でしょう。早く書類を片付けて、お茶にいたしましょう」
「ううう……」

「……うん? これが真相かと? はっはっは、君も姫様に似て好奇心旺盛だな!」

――とのことです。はてさて、美しい騎士と幼き姫の間に、本当に恋の蕾が存在していたのか。それは皆さんのご想像と、そのうち彼らが体験することになる物語の中にて明かされる……かもしれないし、そうじゃないかもしれない٩(^‿^)۶



まとめ

そして時は流れ、なんやかんや辛い思いを抱えているフィールーンとリクスンの元に現れたのが謎多き木こり兄妹。兄のセイルはフィールーンと、妹のエルシーはリクスンと、なにやらふかーい関係を築いていけそうな動きをみせております。

…作者的なメタ情報で言えば、実はほんとに最初の最初(プロット作り始めぐらい)はリン→フィルの矢印も存在していて、結果セイルに取られて余るっていう可哀想な役だったんですが、三角関係を楽しむための作品ではないのでそういう要素は排除しました。ヒーラーの女子がしっかりした性格(ここも、前作のメルと反対にしたかったという裏話が)だからくっつかせて喧嘩ップルにしてやるぜと思いついてこうなったとかなんとか……。

今の『ユノハナ』編でもそれぞれにラブのアクションが起こりますし、次の本編7章ではリクスンとエルシーの二人の関係が決着します。そうしたらいよいよ主人公たち……って世界も救わな。忙しい若者たちです。

だ、大丈夫かな、これで伝わったでしょうか…割とおふざけ抜きにして真面目に書いてみたのですけど、いかがでしたか。作者的には私の作品でどんなIFを想像していただいても嬉しいので、読者さんがそれぞれニマニマできるカップルで楽しく見てもらえれば幸いです。そしてそれを私に遠慮なく聞かせてくださいお願いします←

いつも長いのにもしかしてここまで読んでくださった御方、あなたが神か。ありがとうございます〜っ!よければお気軽にコメントなどお待ちしております(ここでもTwitterでも)


おまけ:おんぶイラストの小話

「姫さま……おつらいでしょうが、城までもう少しがんばってください」
「ごめんなさい、リン。わたしが、木からおちたりするから……」
「おれはたまたま、木の下に“立っていた”だけです。それより、あなたにひどいケガがなくてよかった」
「あなたまで、おとうさまにおこられちゃう」
「いっしょに怒られましょう。そうすれば……辛さも半分です」
「リンは悪くないのに」
「おれはあなたの騎士です。……まだ見習いですが、いつかきっと」

6件のコメント

  • うおおお、この文読んでラスト読むと来ますね…尊い……
    なるほど、リンは騎士道ですね…😏(再び❤️)
    姫と騎士もの恋愛って王道だし、どうしてもそう思っちゃうことありますが、この二人は少し違うようですね❗いろんな喜怒哀楽の時間を共に乗り越えた分、恋愛を越えたような深い絆を感じますね😊
    その辺をたぶん私は楽しみたいのかもしれないな(笑)
    親子とも違う、恋愛ともまた違う、兄弟とも違うし、ただの従者でもないし、言葉にできない深い関係性だ…❤️尊い…
    たくさん色々読めて楽しかったですー😆
    王様相変わらずお茶目でかわゆい❤️
    書いてくださりありがとうございます~😆
  • 私、姫様とリン君の関係が結構好きで(うちの金狼と王の関係に近いと勝手に思ってる)、これは恋愛には発展しない関係だろうなぁって思ってたんですよね。特に序盤のほうはコミカルな傍目よりずっと重くて繊細な関係なんじゃないかなぁって。
    それを言い表すイメージが上手く出てこなかったのですけど、最近読んだお話の中で「神様」って表現が出てきて、それだ、と納得するなど。恋愛という関係性に収まるものではなく、きっと互いが互いを奪われたら魂が死ぬんじゃないかなと思ってて、六章はずっとハラハラしていたのでした。

    リン君にとって姫様は生きることを許してくれた神様みたいなもので、姫様にとってリン君は守るべき臣下かなって。姫様はリン君の前では常に主君であろうとするだろうし、そこに恋愛感情が入り込むゆとりはなさそうだなぁと。
    でも六章でだいぶ本音をぶちまけたので、もしも恋愛発展があるならここからのような気がします。とはいえもう互いに気になる相手は別にできてるので、やっぱり恋愛は経由しない唯一無二の大切な人なのでしょうね。

    という妄想を勝手に脳内で繰り広げてました。
    主従っていいですよね^ ^
  • >凛々さん

    お返事おそくなりましたー!!おお、一番見て欲しかった方からコメントいただけるなんて嬉しいですありがとうございますーー!!

    恋愛を越えた深い絆……まったくもってその通り!運命がド畜生気質だったため二人にはありがちなロマンスが芽生えませんでしたが、だからこそちょっと変わった深い関係になっているのかなと思っています。

    フィールーンがどんな軟禁生活を送っていたのか書きたいなあと思うのですけど(そのほうがリンの存在意義がわかるので)、あまり絵的に映えず書けずじまい…😅なので今回は事件が起こる前、まだフィルがおてんば姫だったころの一場面を落書きしてみました。楽しんでもらえてうれしいー!!
  • >羽鳥さん

    わーーー!!!ちょ、めちゃめちゃ全部汲み取ってくださったコメありがとうございます、うれしい……////『きっと互いが互いを奪われたら魂が死ぬんじゃないかな』って部分でうんうん頷いてしまいました。フィルの矢印は現在セイルに向いてはいるのですけど、たぶんリンのことはこの先もずっと特別なんですよね。ハラハラさせてしまって申し訳ない…!;

    『生きることを許してくれた神様』っていうところもまさしく!リンは無宗教ですがたぶんフィルが世界の頂点でしょうね笑 昔彼女から「生きていることがうれしい」という言葉をもらえなければきっとリンはここには…もしかしたら、この世のどこにもいなかったかもしれませんし。あ、悲しくなってきた…w

    恋愛に発展する主従も多いですけど、とことん平行線の忠義で結ばれているふたりというのが性癖の中の性癖です。はとりさんちの金狼さんと王さまの関係、たしかにツボってたけどそういうことだったのか…🤔←学びを得た顔

  • 人間同士の多様な可能性の中で、恋愛ではなく、ただの友情でもなく、あるいは一方的な尊敬というのでもなく、彼らだけの信頼関係を結んでいるのが印象的です。互いに互いの剣であり楯であり、力であり心であるような主従関係、格好良いじゃないですか。
  • >キツネさん

    はっ、こちらにも嬉しいコメントがーー!!!ヽ(;▽;)ちょ、ゾッとするほどかっこいい……////この主従関係はまさしくそういう天秤の上に成り立っています。フィールーンのほうでも、リンがいてくれなければ心が折れていた期間(軟禁期間)もありますし。お互い無二の関係というのがぴったりかもしれません。

    『互いに互いの剣であり楯であり、力であり心であるような』ばちくそかっけえええ……(ほれぼれ)
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