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今日の詩( 物語 )🪷( 過去作品から1部引用 )


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『失いたくないモノなど、そうは無い。 ……――そうだろう? 蓮──……』


 ――“我が主は世界を潤す、無限の雨の如し。

 我は天に届かぬ、鼬の王。

 主の潤す世界の中で、時に貴方が降らせた雨の餌食──

 貴方の掌の中で抗うも、未だこの牙は届かず。


 我は小さき世界を駆ける。

 貴方に突き落とされた先の、泥水にもがきながら。


 ──そこで瞳をひらけば、泥水に咲いた、蓮の華。

 “なんて美しい事だろう”。

 貴女こそまさに、その名の通りの泥中の蓮 。

 哀れ貴女は、泥水にしか咲けぬ華──


 貴女がこの手を取ったのは、私が汚れた世界の泥水であったから──

 貴女がこの手を放したのは、都合よく扱えば良かっただけの泥水を、そうだと割り切る事が、出来なかったから──


 この手を離れ、無惨に手折られた、蓮の華。


 ─―華も咲かぬ泥水に、再びもがくだけ。

 王は空にも届かず、沈むだけ。


 ──世界は変わりはしない。 戻っただけだ。 嘆きはしない。

 そこに一輪の蓮が、咲いているのか、いないのか、それだけで、見える景色だけは、天と地ほどにも、変わったとしても──

 見渡す限りの泥水の景色から、一輪の蓮が消えたなら、これ以上は何が消えようとも、気に病む事は何も無い”――


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※【今宵は瞳をとじて × 愛していると囁いて ─完結編 Ⅱ ─】より🪷

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