本作に登場する「霊流し(オンソン)」は、実在する祭礼ではなく、本作のために創作したものです。
着想のもとになったのは、長崎の精霊流しや広島の灯ろう流し、各地に伝わる人形流しなど、「水に祈りを託して流す」という古くからの風習。
ただ、それらをそのまま取り入れるのではなく、西暦800年前後の海辺の村を舞台に、当時の暮らしを想像しながら再構成しました。
当時の村では、薪は煮炊きや暖を取るために日々必要なものであり、油も灯火などに使われる貴重なものです。
そのため、現代の祭りのように大量の薪を焚いたり、油を使った灯火を海辺に並べたりするのは、日常の暮らしから考えても容易ではありません。
そこで本作では、火を使うのではなく、葦で編んだ小舟に木札を添えて海へ流し、満月の月明かりが海面を照らす情景として描いています。
そして祭りの中心にあるのは、船を流すことそのものではありません。
村人たちが皆で歌い、踊り、祖先へ祈りを捧げること。
小さな海辺の村で、人々が一つになって祈る――そんな祭りとして「霊流し(オンソン)」を創作しました。
史実として記録された祭礼ではありません。
けれど、「もし西暦800年前後のどこかの海辺の村で、こんな祭りが行われていたら――」
そんな想像から生まれた、本作ならではの祭りです。