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SS‐この人は攻略対象じゃありません‐

【小さな贈り物‐ジェード視点‐SS】

地面を覆う色づいた葉を踏むとかさりと音がした。
もうすっかり季節は冬になろうとしている。

場内の木々たちも赤や黄色、代々に色づいては地面を暖色の絨毯で埋めていく。
その光景を眺めていると不意に後ろから小突かれた。身構えてすらいなかった私は少しよろめいてしまう。
小突かれた後頭部を抑えながら振り返るとダニエルがこちらを軽くにらんでいた。
「職務怠慢だぞ」
「…申し訳ありません」
素直に頭下げればダニエルは肩を竦めて私の眺めていた方向に視線を向ける。
「これだけ艶やかに色づいていれば、見惚れてしまうのも分かるがな…だが仕事中だ、気をつけろ」
「はい」
気合を入れなおす為に一つ深呼吸すればひらりと私の腕の中に赤い葉が一枚飛び込んできた。葉先に向けて黄色にグラデーションが掛かったそれを私はそっと騎士服のポケットに仕舞う。
ひらひらと舞う姿が、彼女の姿を連想させ払いのける事など出来なかった。勤務が終わったらこれで栞を作ろう、そしていつも差し入れをくれる彼女に贈ろうか。
豪華な装飾品でも、宝石でもないけれどきっと彼女は喜んでくれる。
その笑顔を思い浮かべながら私は職務をこなすのだった。

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ハロウィンネタが全く書けないまま終わってしまったので秋っぽいお話を。
SS(ショートストーリー)はある程度溜まったら本編にも掲載しようと思います(=゚ω゚)ノ

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