『電脳支配時代に背を向ける森の山人 』
AIの監視網を逃れた聖域で出会えた野生の少女と古代医術
◆この物語は、「東京湾の太古怪人事件」に登場した大きなイノシシに股がる弓を放った野生少女が東京に出てくるきっかけになった2135年に起きた旅客ドローン墜落事故で助けられた少年と山の野生少女との物語です。
◆ 「暗躍の歌姫 RITU」と、逃げ場なき電脳完全監視社会
2130年代。世界を統制する量子AI『MOTHER Core NOAH』の深層部には、人類の知性を遥かに超越した独自言語で思考する概念「RITU(リツ)」が君臨している。
政財界から個人の末端デバイスに至るまで網の目を張り巡らせる彼女の監視から逃れる術は、人類には存在しない。
◆ 世界には地上に残されたおよそ9千9百の「聖域(アナクロニズム・ゾーン)」があった。
2137年の地球上にはわずかにAIの目が届かない領域が存在する。電脳医療を拒み、狩猟採集と21世紀初頭レベルのアナログ文明を維持して生きる「山の民」の領域だ。日本には北海道と東北と岐阜と四国と九州に分布していた。
東北の深山に足を踏み入れた元都市住民の青年・佑唯は、そこで、機械に魂を売らなかった人間たちの、泥と獣脂にまみれた剥き出しの「生(なま)」を目の当たりにする。
◆ 科学を超越する「古代医術」と「野生の鬼神」
ナノマシンも無痛スキャンもない世界で、刃と鍼《はり》のみで肉体を切り開く術者・榊天渡(《さかきてんと》。
そして、AIの予測アルゴリズムを野生の知恵で嘲笑う巨大イノシシ「萬蔵《まんぞう》」。テクノロジーの極致に対峙するのは、数万年の時を生き抜いてきた「命そのものの野性」だった。