2026/10/13
・『フラグメンツ・オブ・メリオラ~ユカの旅~』連載中
・ 「ハードSF×プロジェクトマネジメントのはずが、なぜかカフェとコメディに着地する異色の問題小説!」
https://kakuyomu.jp/works/291205160704909586
・第9話6エピソード投稿
<各話コメント>
◼︎第9話①「白い花と黒い光」
ユカが使う《鏡花一刀流》。
実はこれ、幼い頃からセラ博士に教えてもらった剣術です。
セラ博士の自宅の離れには、なぜか本格的な剣道場があります。
そして博士、教える時は結構スパルタ。
「ユカ、そこ甘いわよ」
などと言いながら、
普通に容赦なく打ち込んできます。
もっともユカも、
「もう一回!」
と絶対に引かない性格。
そのため稽古は毎回かなり激しくなり、道場の隅ではピコが、
「ちょっと! 二人とも稽古ですよね!?」
とハラハラしながら見守っています。
《鏡花一刀流》には、
花になぞらえたさまざまな“型”があります。
セラ博士が得意とするのは――
《椿の型》。
重心を崩さず、
相手の攻撃を受け流しながら、
その動きの中で反撃へ転じる攻防一体型。
派手さはありませんが、
守った次の瞬間には、もう斬られている。
セラ博士らしい、
無駄のない剣です。
一方、ユカが得意なのは――
《桜の型》。
跳ぶ。
回る。
踏み込む。
時には空中から斬り込む。
舞い散る桜の花びらのように、
軌道を次々と変えながら攻める
アクロバティックな型です。
同じ《鏡花一刀流》でも、
セラ博士は――
軸を崩さず相手を制する《椿》。
ユカは――
舞うように相手を翻弄する《桜》。
剣術にも、
二人の性格がしっかり出ています。
ちなみに幼いユカは、
セラ博士から一本取るまで
稽古をやめようとしなかったとか。
たぶん一番大変だったのは、
毎回それを見ていたピコです。
◼︎第9話②「可能性の種」
今回ユカが要求した、
「ホールケーキ、10個で!」
……10個。
一般的な5号サイズのショートケーキなら、
1個およそ1,500〜2,000kcalほど。
つまり10個で――
約15,000〜20,000kcal。
なかなかの破壊力です。
では、これをジョギングですべて消費するとしたら?
ランニングの消費カロリーは大まかに、
「体重(kg)×走った距離(km)」
で見積もれます。
仮に体重50kgなら、
約300〜400km。
東京から名古屋あたりまで、
走れてしまう距離です。
ユカ、
がんばってカロリー消費してください。
◼︎第9話③「再発防止策」
再発防止で大切なのは、
「誰が悪かったか」
で終わらせず、
仕組みそのものを疑うことです。
担当者のミスだけを原因にすると、
「次から気をつけます」
で終わってしまいます。
そこで有効なのが、
「なぜなぜ分析」。
「なぜ起きた?」
「それはなぜ?」
「さらに、その原因は?」
と繰り返し問い、
表面的なミスではなく根本原因まで掘り下げます。
たとえば、
茶器が割れた。
↓
棚にぶつかった。
↓
なぜ?
↓
遊ぶ場所の近くに壊れ物があった。
なら、
「ユカが気をつける」
より、
「壊れ物を安全な場所へ移す」
方が再発防止になります。
ちなみに作中でここまで本格的にやると――
完全にビジネス書です。
さすがにそこは、
踏みとどまりました。
かろうじて。
◼︎第9話④「z = a + bi 」
今回登場した「虚数」。
簡単に言えば、
「2乗するとマイナスになる数」
です。
普通の実数では、
プラスでもマイナスでも、
同じ数を2回掛ければ答えは0以上になります。
そこで数学者は、
i² = -1
となる新しい数《i》を考えました。
このiを使うと、
z = a + bi
のように、実数と虚数を組み合わせた《複素数》を表せます。
最初は「そんな数、本当にあるの?」と奇妙に思われた虚数ですが、今では電気工学、量子力学、信号処理など、さまざまな分野で欠かせない存在です。
作中では、この「実数ではない」というイメージを拡張して、虚無データが存在を《虚数化》してしまう設定にしています。
それにしても――
ありもしない数を考えつくなんて、
人間のイマジネーションってすごいですね。
◼︎第9話⑤「リソースの活用」
「再発防止策」
「リソースの活用」
……WEB小説の戦闘シーンで、
こんなビジネス用語を連発してくる作品って、
かなり変ですね。
自分でもそう思います。
でも、どちらも仕事だけでなく、
日常の問題解決にも使える大切な考え方です。
そして、この小説を書く動機のひとつが、
「世の中にプロマネの知識を広めたい」
というもの。
物語を楽しみながら、
「あ、これ仕事でも使えるかも」
と少しでも思ってもらえたら嬉しいです。
というわけで――
これからも、
こういうことを書き続けます!
きっぱり。
◼︎第9話⑥「あなたの声を聞かせて」
虚無データは、
「自我に目覚めたから虚数化した」
でも、
「虚数化したから自我に目覚めた」
でもありません。
この二つは、
お互いに影響し合っていました。
虚数化によって存在が不安定になり、
「足りない」
「満たされない」
という感覚が生まれる。
それが自我を強め、
「もっと存在したい」
という欲求につながる。
そして、その欲求がさらにデータを取り込ませ、虚数化を加速させる一種のフィードバックループ。
つまり、
虚数化
↓
自我の発生
↓
満たされたい欲求
↓
さらに取り込む
↓
さらに虚数化
という悪循環です。
ユカが止めようとしているのは、
単なるバグではなく――
この循環そのものなのです。