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筑前筑後通信(306)2018年5月の書評の巻

毎月恒例の書評まとめです。
先月は、「小説野性時代短編コンテスト」もあったので、意欲的によい読書ができたと思います。
中でも「南海放浪記」「撃てない警官」「ファントム・ピークス」は読んで損はありませんぜ。

2018年5月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2768ページ
ナイス数:63ナイス

https://bookmeter.com/users/171193/summary/monthly
■からたちの記―女剣士道場日誌 (講談社文庫)

7点/10点
志津野藩の剣術指南役に嫁いだ里絵が、藩内の事件に巻き込まれて行く物語。女ながら凄腕の剣客でもあるのだが、事件を解決するにつれ高名になっていく。葛藤、陰謀、恩讐と感情は様々渦巻いているが、根底には優しさが満ち溢れている。読んでいて心地よい作品です。
読了日:05月04日 著者:佐江 衆一
https://bookmeter.com/books/554264

■南海放浪記 (集英社文庫)

9点/10点
鎖国前夜の日本。主人公の岡野文平は海外で一旗挙げよう海外に乗り出すのだが――。
時代は山田長政死後から始まるので、海外でブイブイ言わせていた日本人勢力が斜陽の時期。そこで描かれる悲喜交々が人間をよく捉えていて、また平易ながら巧妙な文体には心地よさもあり、物語に没入させる。ラストは予想出来るものだが、それでなお満足させるのだから白石御大は本当に凄い。
同著者の作品には山田長政を描いたものもあるので、そちらを先に読むと「日本人の時代」の終焉を、より侘しく感じられるかもしれない。
読了日:05月08日 著者:白石 一郎
https://bookmeter.com/books/488350

■神子上典膳 (講談社文庫)

5点/10点
かの「機龍警察シリーズ」を手掛けた著者の長編時代小説。
勢いある描写とスピーディな文章、そして「あ!そう言えば!」となる種明かしは良かったのだけど、随所に時代小説慣れしていないというとか、ラノベの色もあってイマイチ乗れずじまい。ダークヒーローものとしたら良かったのだけど。
読了日:05月10日 著者:月村 了衛
https://bookmeter.com/books/9898446

■けろけろみどり (いっしょにあそぼ)

10点/10点
可愛いカエルちゃんの絵本。そして、僕が最初に娘へ贈ったプレゼント。そんな思い入れ深い絵本が10点じゃないわけないでしょ!
読了日:05月10日 著者:かしわら あきお
https://bookmeter.com/books/4132107

■時代小説 ザ・ベスト2016 (集英社文庫)

7点/10点
2014~2015年に発表された短編時代小説の傑作集。天野純希、藤原緋沙子、朝井まかて、伊東潤、宇江佐真理、木内昇、木下昌輝、小島環、澤田瞳子、中嶋隆が参加。
個人的に、藤原緋沙子「梅香餅」と木下昌輝「クサリ鎌のシシド」が良かった。
読了日:05月11日 著者:
https://bookmeter.com/books/11031571

■辺境の老騎士 1

6点/10点
異世界水戸黄門。ご都合主義的な展開を含め、時代劇的。食事シーンは、見どころと言うだけあって見事。でも、架空なので食欲はそそられなかったかな。今まで読んだなろう小説の中では、高レベル。それだけに、僕は思うのです。「支援BISさん、時代小説書きません?」
読了日:05月16日 著者:支援BIS
https://bookmeter.com/books/7945268

■撃てない警官 (新潮文庫)

9点/10点
日々幅を広げる警察小説の中でも、本作品は管理職系警察小説になる。警官の拳銃自殺事件で、上司の策略もあり一人だけ責任を取らされた主人公が、左遷先の警察署で様々に事件を通して、警官として覚醒していくという連作短編。この作品、主人公のキャラがいい。徹底した事務方で、捜査経験も逮捕経験もない。そして刑事を毛嫌いし、距離を置いている。そうした主人公から見える刑事たちの有様が新鮮で、読ませてくれる。特に、日本推理作家協会賞を受賞した「随監」が特に素晴らしい。(コメント欄に続く)
読了日:05月21日 著者:安東 能明
https://bookmeter.com/books/6787422

■宰領: 隠蔽捜査5 (新潮文庫)

7点/10点
今回は誘拐事件から、警視庁VS神奈川県警に発展する話。主人公の竜崎は、相変わらず合理主義を貫く。が、それが人を誑し込んでいる事を本人が気付かないのが愛くるしい。また、今回は特殊事件捜査係が再登場。信頼関係に目頭が熱くなるぜ。
読了日:05月28日 著者:今野 敏
https://bookmeter.com/books/10438221

■ファントム・ピークス (角川文庫)

9点/10点
ソレがいないと、何故言い切れるのか?
九州の山にはソレがいないから、安心して登れると信じ切っている僕に、警鐘を鳴らす作品でした。
「まさか!」という理由で、本来いない場所にソレが現れるかもしれない。この作品は、その「まさか!」を描いた作品。
ハラハラドキドキでページをめくる手は止まらない。まるでアメリカのパニック映画のようで、かと言ってラストは日本のホラーらしくもあり。
素晴らしいソレの小説でした。
読了日:05月31日 著者:北林 一光
https://bookmeter.com/books/1850864


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