濡れ鼠

少しでも、この地球から離れていたい――。将来への大きな不安が、僕を空へと駆り立てる。

全てを擲ってでも、手に入れたかった。花の香りに酔いしれ、堕ちていく男の物語。

迫りくる戦火、海辺で求めた色。世界の日没のひとときを。

わかれて、また交わって。心細い夜半、僕は故郷の川に思いを馳せる。

それは、流星群の美しい夜のことでした。流れ星のように刹那的な一夜、交わした約束。

ずっとこの季節を待っていた。蝶々もリスも祝福している。さあ、一緒に外へ飛び出しましょう。

機動隊が突入してくる妄想だけが、僕の心の支えだった。受験勉強に追われる毎日、繰り返される破壊の果てにやって来たのは――。

腕時計ですらも、重く感じる。朝から晩まで労働に勤しむ僕の、長いようで短い１日。

よく頑張ったから、ねえ――。母の介護で疲れ果てた私による、自らの解放。

僕に与えられた任務は、豚を処刑台まで導くことだった。

夜の住宅街を駆けるバイク、静寂を切り裂く銃声。無法者たちの行き着く先とは。

澄み渡る海、きらびやかな花火――。七夕祭りの日、友人と過ごす大切な１日。

残りの人生を賭けた勝負に出るため、僕は雨の中飛行機に飛び乗り、熊本に旅立つ。

豪雨が街を取り込んだ日。災害現場に向かった夫、私はその無事を祈ることしかできない。

虐待、貧困。夢も希望もない日々を送る僕の元へ現れたのは――。

覚醒剤に溺れる両親。嵐のさなか、僕は英語の副読本を手に、自室に籠城する。

悲惨な事故から15年、白いカーネーションを手に私が向かったのは――。

山は、上りの方が好きだ――。とあるバス運転士が物語る、下り坂の人生。