※本編に関係が無く本編の流れを断ち切る閑話はこちらに移動しました。
※作者が意図したわけではないのですがこの作品は現在男性が年下のカップルしかいません。ルイ・マッテオのカップルは最終的には対等な立場のカップルにしたいと思います。いつまでも年下男がウジウジしているのもつまらないと思いますので。
※タイトルに閑話とついている作品は読み飛ばしても本編に影響しません。
いつものようにマッテオは昼休みを利用してルイに勉強を教えてもらっている。マッテオの表情はルイの言葉を逃さないように必死だ。
何せ教わったばかりの事を間違えると冷たい視線で「ふーん、それ、解けないんだ」と一蹴される。マッテオは見捨てられたような気持になりとても悲しくなるのだ、実際はすぐに懇切丁寧に間違えた個所の解説をしてもらえるのだが。
場所は学生が集うカフェテリアだ、最初は図書館でと思ったがおしゃべり厳禁なので暇を見つけてはルイはマッテオを指導している。ルイはマッテオが首席で卒業してもらってある程度領地運営を任せて自分は卒業後はしばらく国の研究所でお金を湯水ごとく使って好き放題インフラ整備などの研究をしたい為に教師役を買って出ているだけである。
当然、学生はアヤノ・ロッシ両家のあの事件を知っている。噂では戦争になるのでは?とまで囁かれていた。
「おい、マッテオの奴まらルイさんと一緒に勉強してるぜ?」「何か無理やり婚約させられて週数回アヤノ家に通うように強制されているらしいぞ」「おいおい、あいつ死んだわ」「ロッシ家の長女のせいでアヤノ家の長男って....私なら無理だわ、そんなところの空気吸うだけで死んじゃう」「もしかしてアヤノの長男と同じ年になったらやってしまうとか・・?」
好き放題言われているのである、同じ国内なのにアヤノ家は悪鬼羅刹がいるかのように思われているようだ、この場にオリバーがいたら笑い飛ばすだろう。
「悪鬼羅刹?ハハッ、そんなのいたら親父にぶん殴られて消滅しちゃうよ」
その親父が悪鬼羅刹の類だと周囲は思っているようだが。
その晩アヤノ家にて。
「マッテオ君はこの前のテストで順位を上げてベスト3に入りました。勉強を教えたかいがありました」
「そう、頑張っているようね、ルイ、そろそろ追加の飴をあげましょう。次の運動はお休みをしてお買い物デートをしていらっしゃい」
「デートですか?そんな時間があれば勉強を教えたいのですが」
「前も言ったでしょ、飴と鞭だって、男に限らず人間は鞭だけでは動かないの、たまに飴があるから頑張れるのよ」
「そうですか、デートといわれましても、どこに行けば?まさか私の趣味に合わせるわけにも」
「最初はそれでいいわ、次はマッテオ君の趣味に合わせればいいの、どうせ本屋とぬいぐるみが置いてある雑貨屋でしょ?そこを巡って最後はカフェでお茶して帰って来なさい」
「お母さまは何故私がぬいぐるみ店を行くことがわかるのですか?」
「母親だからよ、そういう物なの(あれだけ部屋にクマのぬいぐるみがあれば誰だってわかるわよ、そろそろ兄離れさせないとね、頑張ってねマッテオ君)」
「それときっとマッテオ君は頑張ってかっこつけて奢ろうとしてくるからそこはピシッと”私たちはまだ学生だからお互いの物は自分のお金で買いましょう、将来期待してるね”って言いなさい、将来期待してるねって言えば男の子のプライドを傷つけないから絶対言うのよ」
「そんなものですか、私も年下の男の子におごられるのはいい気分じゃないのでしっかりいいます」
後日カフェテリアでいきなりルイが生徒たちが大勢いる前で「デートをしましょう」と言うとマッテオを含め周りは軽くパニックになった。
その晩マッテオは家族に相談をする。
「デートってどうすればいいんだ?ルイさんは最初は私の事知ってもらいたいから私の趣味のルートでいい?って言ったけど、どうすれば、何を話せばいいの?運動と勉強の話しかしてないよ」
(マッテオの奴、とうとうあの地獄の特訓を運動って言いだしたか、ずいぶんとアヤノ色に染まったな)
「ま、まぁそれは母さんの方が詳しいだろう、教えてやってくれ」
「そうね、初デートだしきっとルイさんはオシャレをしてくるはず、まずはかわいいねって褒めなさい、ルイさんの性格からしてどこが?とかめんどくさい事が言ってこないはずだからこれで大丈夫よ」
「ルイさんは常にカワイイんだけど」
「あっそ、それならいつにも増してカワイイね、でいいんじゃない?それとルイさんの提案には可能な限り聞く事、きっと合理的な事しか言ってこないだろうけど、後はルイさんが買おうとしているものがあって不思議に思ったら質問してみる事ね、あの手のタイプは自分の好きな事になったら凄く早口で話し始めるから」
(私の息子ながら凄い根性してるわね、あのアヤノ家に行って速攻ルイさんに惚れるなんて、多分ヘレナさんの策かな?惚れているならいいけど、マッテオは尻に敷かれそうね、幸せならいいけど)
「懐かしいねぇ、私にもあんな頃があったよ緊張したもんだ」
「あなたは初デートの時は褒めてもくれなかったし、返事もハイとイイエとそうですねくらいしかなかったじゃない」
「緊張していたんだよ、言わせるな恥ずかしい」
「ふふっ、ごめんなさいね、当時はちょっと悲しかったけど今ならわかるわよ」
親がイチャコラするのを無視してマッテオは自室に戻り勉強にとりかかったが次の日のデートの事で頭がいっぱいになりそれどころでは無かった。
そして翌日の放課後、デートの時間になり待ち合わせの場所にマッテオは30分も早く到着していた。
(最初は軽く挨拶をしてから「ルイさん、いつにも増してカワイイですね」って言えばいいんだな、でもよく考えたらルイさんなら制服のままくるんじゃないか?そうしたらどうしよう?マジでわけわからないよ、デートの教科書とか売ってないの?)
マッテオの懸念通りルイは制服のままで出かけようとしていたが母のヘレナが察知していてちゃんとおしゃれをさせて送り出した。
二人は待ち合わせ場所で会う事ができた。
「先に来てたの?ごめんね待たせて」
「そ、そんな事ないよ、僕も今来たばかりなんだ、ルイさんはいつもに増してかうゃうい.....」
マッテオはここで緊張のあまり舌を噛んでしまう、かなり焦って言いなおそうとするがルイに止められる。
「大丈夫、何を言おうとしたかわかるから、ありがとうね、マッテオ君もかっこいいよ」
「そ、そうかな、ありがとう」
マッテオは冷静に返事をしたがルイの「かっこいいよ」しか頭に入っていなくてすごく舞い上がっている。
その後マッテオはぎこちないながらもルイをエスコートしようと必死になる。
(確か男は車道側を歩くんだったよな、それで.....)
ルイ行きつけの本屋についたのでさっさとルイは本屋に入って行った。
(こういう時は男がドアを開けてあげるんだったよね、できないよそんな事。考える事多すぎるよデートって!)
ルイは本棚に向かわずにまっすぐカウンターに向かい店員に話しかけている。
「注文した本が届いてると聞いたのですが」
「はい、こちらですね、先日ジパンから届いたばかりの本です、申し訳ないのですが当店にはジパン語が分かる者がおりませんのでご確認してもらっていいですか?」
ルイはパラパラと本をめくる。
「問題無いです、私が欲しかった本です、ありがとうございます」
「ルイさん、何の本を買ったのですか?ジパン語らしいですけど読めるのですね、凄いです」
「まだ、読むのには時間がかかるけどね、向こうの農業関連の本、こっちに持ってきたジパンの作物の赤芋の育て方を知りたいの」
「赤芋ですか?どのような作物なんですか?」
「美味しくないけど荒れた土地でも大量に育つ食べ物だよ、飢饉の時ように育てているの、一応連作障害とか無いか知りたいの」
マッテオも基本的にが文官家系でマルコに似ている所がある、気になる事は思わずどんどん質問するのであった。
「次はここ、ちょっと時間がかかるかもだけどごめんね」
「いいよ、雑貨屋だし僕も欲しい物あると思うから大丈夫だよ」
これがハジメとオリビア、もしくはオリバーとリリィのデートなら彼はニコニコしてパートナーと一緒に行動したであろう。普通の女子ならもしかしたら初デートで各自自由行動を提案されたら気を害するかもしれないがルイにとっては各自自由行動は心地よい返事であった。
マッテオはすでに婚約者がいて結婚秒読みの兄からも助言を受けていた。
「母さんはああ言ってたけどそれとなくルイさんが欲しそうなものを観察して銅貨1枚分でいいからそれに近い小物を買え、いつも勉強を教えてもらっている礼だとか言えばいい」
基本的に素直なマッテオは兄のいう事をちゃんと覚えておりそれとなくルイを見ようと思っていたが見張るまでも無かった、ルイはクマのぬいぐるみコーナーで微動だにせずにガン見している、多分厳選しているのだろう。
どれだけ時間が立っただろうか、ルイは店員を呼んで柔らかい素材でできた剣と盾を持った大きなクマのぬいぐるみを自宅配送してもらう手続きを済ませていた。
その後はカフェで休憩となった、各々好きな飲み物を注文して、学院の事やアヤノ式運動が今後上のステージに上がる事などを話して退店しようとなった時にマッテオは勇気をだしてプレゼントを渡そうとする。
「ルイさんは最初は各自のお金でと言いましたが普段の勉強を見てもらっているお礼です、受け取ってください!」
小さなクマがついたキーホルダーである、銅貨1枚程度の物だ。ルイは少し考えた後に受け取ってくれた。
「そう、ありがとう。大事にするね」
(え?やっぱり変だったかな?ルイさんは表情にでないからわかりにくいよ)
その晩ロッシ家では珍しく仕事が忙しくて早く帰ってこない父の姿もあった、マッテオはその理由をしらない。マルコなりに今回のデートの結果は気になるようだ。
「それで最初のカワイイよは噛んじゃっていえなかったんですよ、言いなおそうとしたのですけどルイさんは”大丈夫、何を言おうとしたかわかるから、ありがとうね、マッテオ君もかっこいいよ”って言って最後まで言わせてくれませんでした」
「我が子なが初々しくて可愛いわね、ルイさんにマッテオの思いが届けばいいのだけど」
「そうか、マッテオ。大丈夫だ、ルイ嬢は忖度はしないタイプだ、城で見ているからわかる、ありがとうと言ったのなら通じているぞ、気にするな」
(その後のかっこいいよは絶対ヘレナさんの策略なんだろうな)
「それで、最初にルイさんからはお互い学生だから奢るとかは無しねって言われたんだけどどうしてもお勉強のお礼がしたくてルイさんを観察していたらクマのぬいぐるみコーナーで厳選してるようだから銅貨1枚程度のクマのキーホルダーをプレゼントした、その時もそっけなく大事するね程度の返事だったからいいプレゼントかどうかわかんないだ」
「あら?マッテオにしては気が利くじゃない、あなたくらいの年頃なら十分なプレゼントよ、クマのヌイグルミコーナーで厳選してたのでしょ?それなら大丈夫よ、ルイさんはカバンに何かをつけているの?」
「いえ、特に何もつけてないです。学校指定のカバンをそのまま使っています」
「もし明日あなたのプレゼントしたキーホルダーが付いていたら大丈夫よ、つけてくれてありがとうくらいは言いなさいね」
「わかったよ」
その晩マッテオはあのキーホルダーが明日ルイのカバンについているかどうかが気になって中々寝付けなかった。
そして運命の朝、眠そうに登校するマッテオの後ろからルイが声をかけてくる。
「おはよ、マッテオ君眠そうだね」
「あ、おはようございますルイさん、ちょっと寝付けなくて」
マッテオの目線はルイのカバンにくぎづけだ、そして.......
「ルイさん!キーホルダー使ってくれてありがとう」
「うん、カバンに何かつけるのは初めて、好きな物をつけるのっていいね、ありがとマッテオ君」
マッテオは「すきなもの」と「ありがとマッテオ君」だけで眠気はすべて吹き飛んで自分も吹き飛びそうなくらい嬉しいのをなんとか我慢した。
そしてその日からルイとの勉強により身が入るようになり、ある日の抜き打ちテストで学年でただ一人満点をとるのであった。そしてその日の昼休みはいつもより急いで決まったカフェテリアの席に走る、そしていつものように無表情で席に座っているルイを見つけ......
「ルイさん!今回の抜き打ちテスト学年で僕だけが満点だったんですよ!ルイさんのおかげです!」
ルイは普段見せない笑顔で答える。
「よく頑張ったねマッテオ君、抜き打ちテストで100点なんてそうそう取れないよ、凄いよ、おめでとう」
マッテオはその晩ルイの笑顔を何度も思い出しながらまたしても眠れない夜を過ごすのであった。