『かわりに嘘』鈴木七月
※先々月からの持ち越し分です。
ざっくりあらすじ。極度の心配性な大学生・夏目と、嘘ばかりつく謎めいた叔母・宇曽川ひかりが繰り広げるアットホームミステリです。
ミステリ……じゃないかも。なんだろう。自伝風の日常もの、またはエッセイ風小説。ジャンル分類が難しく、読み手の度量と技術が試される一冊です。
白状してしまうと、自分はこの本をほんわかミステリとして読み始めてしまい、一度大きく失敗しています。三分の一を読んだところで『自分はこの本のターゲット層の真逆にいる』ことに気付かされる。扉の奥には何があるのか、という謎の提示に引っ張られ過ぎて、いつものバカ正直に細かい情報を拾いながら読む癖を発揮してしまい、折り返しに差し掛かる頃には頭がパンクしました。
主人公も登場人物も世界観含めて全体的におっとりはしているのですが、情報量自体はとても多い。おいおい伏線になるのだろうかと細かく拾っていたのですが、それっぽい兆しも進捗もなく、段々と不安になってきます。
これ、自分は読み方を間違えているのだろうか、と。その予感は当たります。全然間違えてました。なんてこったい。
折り返しにきても何かが進んでる気がせず、なんだか謎の敗北感と徒労感を感じて一度読むを止めてしまいました。すいません。読了記録が遅れたのはこれが原因となります。
今度は読み方を改めて再チャレンジ。とにかく残りページや、メッセージやテーマ性を無理に読み解こうと頑張らない。文章だけを楽しむという気持ちで読むと、なんとなくこういう読み方かと思えるものが見えてきて、世界観を楽しむことが出来ました。
ふらりと寄った喫茶店で、隣の人が話している会話を聞くような感覚。あるいは知らない街の町内会で聞き耳を立てる感覚。
情報を無理に拾おうとせずに、流れに身を任すのが大事。こういう小説もあるのですね。
もしかしたら他にも沢山こういうのがあるのかも知れませんが、いかに自分の読んできたものが偏ってきたのかを思い知らされました、読書の世界は奥が深い。
最後にこの物語はフィクションです、といういわゆるフィクション免責条項が書かれているのですが、絶対に飛ばさないことをお勧めします。これがエピローグになり、読後感を決定付けるものとなります。このあたりも試される読者の度量という感じがしました。読者への信頼が凄い。