現在連載中の長編多文化ファンタジー『帰還の蝶』第5章第6話を掲載しました。
お楽しみいただけましたら幸いです。
<執筆こぼれ話> ※後半、下半身の話を含みます。
物語を書く時、その文化に根ざした表現になるよう注意しています。
例えば、英語圏でない国をモデルにしている場合は、ベッドではなく「寝台」と言い換えたり、パンはフランス語なので、英語圏の国では「ブレッド」を使用したりするとか、そんな具合です。
言語には、使用する人々の文化の中で育まれた、特有の雰囲気があります。
フェンシングの試合では、やっぱり「アレ!(allez/フランス語)」がしっくりきますし、ラグビーなら、「クラウチ、タッチ、セット!(crouch,touch,set/英語)」で構えれば、肉体のぶつかり合う様が迫力をもって感じられます。
フィクションでも、「帝国」と呼ばれる国が北に位置しがちなのは、そういう理由なのかなと思います。ゲルマン系の硬い発音が格好よく、強大に聞こえるというか。
そういうスティンヴァーリ帝国も、北国ですしね。
ちなみに、かの有名な漫画『HELLSING』の少佐の演説は、様々な言語で聴けますが、やっぱりフランス語よりドイツ語の方が、「戦争するぞ、うおおおッ!!」って気持ちになれます。
フランス好きとしては、戦に弱いと改めて認識させられて、忸怩たる思いですが(苦笑)
こんな感じで、言語の持つ雰囲気は、意外と侮れません。
もし、いまいち世界観に深みが出ないとお悩みの書き手さんがいらしたら、言語系統を統一してみるのも、ひとつの手かもしれませんね。
それで、どうしてこの話をしたかというと、男性の下半身の突起物を、どう表現するかに繋がるからです。
物語である以上、どんな表現にも情緒は必要です。特に、性描写はよくよく気をつけないと、ただのポルノになってしまいます。
もちろん、一般的な読書体験を提供するために書いているわけで、それだけは絶対に避けなければなりません。
ただ、やっぱり世界観に沿った表現はほしい。そうしてこねくり回した結果が、本作での三言語三様の単語なのです。
棒状の強い武器に喩えるのが、古今東西の常。
というわけで、ファールサ語は騎馬民族ゆえの「弓」、ノール語は平民も含めて装備する「槍」、ヤワ語は殺生を忌避するので、生命力の源である「根」を当てました。
拙作『暁の月』のように西欧中世風ファンタジーなら、間違いなく「剣」でしょう。実際、主人公フェリックスが言及している場面があります。
やっぱり「大事なところ」ですから、重んじる武器に喩えたいという心理を思えば、よい選択だったかなと思います。
それぞれの文化が透けて見えるような単語。他文化の影響を受けにくい卑語だからこそ、こだわっていきたいものですね。