現在連載中の長編多文化ファンタジー『帰還の蝶』第4章第4話を掲載しました。
お楽しみいただけましたら幸いです。
<執筆こぼれ話>
ファールサは、アッバース朝をモデルにしているため、シャフリカシャン(shahr-i-qashang美しい都)の街並みは、バグダードを想定しています。
ティグル川(Tigr)とフラト川(Frat)に挟まれたベインネルード平原(Beinerud)に位置する、という設定で、街の水源は2つの川に依っています。
円城の直径は約20kmで、その中心に約2kmの内壁がある、二重構造になっています。
円城の外には平民の居住区があり、円城内には、高級官吏や側近軍団に所属する軍人といった特権階級が居住しています。特に、軍事上の要衝である北側には軍人が、国内の交易を担う南側は文官が、多く住んでいます。
外国出身者及び許可のない者は、円城内に居を構えたり、商いをすることはできず、円城内への立ち入りも制限されます。
家屋の構造は、中庭を囲むように建物が並ぶ形が基本です。回廊や屋根付きの広縁、吹き放しの広間といったスペースによって、内と外を区切っています。
この片仮名の“ロ”の字構造を入れ子にして、宮殿関連の各施設は、シャフリカシャンの円城の内壁に収まっています。
各部屋の用途は決まっておらず、調度品を変えることで、寝室にも居間にもなります。大きな屋敷では、季節によって、過ごしやすい部屋に移動することもあります。
水資源の乏しい地域にあって、庭に張り巡らされた水路は権力の象徴であり、宮殿を始め、後宮と〈薔薇の宮〉、離宮にも、水流の豊かな美しい庭園が備わっています。
ちなみに、作中に登場する噴水は、アルハンブラ宮殿のライオンを参考に描写しています。
なお、身分にかかわらず、基本的には2階建て。高層建築は聖堂や宮殿のドームくらいで、街並みは比較的平坦な印象です。
また、「女性の素顔は、人目にさらされてはいけない」という聖典ハーンの記述から、木製の格子を利用して、外を眺めるスペースがあります。
これも、身分にかかわらず備えつけられており、直接対面せずに、買い物のやり取りができる出窓があります。
屋根や庇があるとはいえ、かなり開放的な構造の家屋。乾燥していて、降水量の少ない地域だからこその構造と言えるでしょう。
○主に参考にした資料
フリードリヒ・ラゲット(2016)『アラブの住居―間取りや図解でわかるアラブ地域の住まいの仕組み』東京マール社
【溢れる異国情緒】イスラームの専門家と行く9世紀のバグダード観光/ゲームさんぽ×アサクリ ミラージュ①
https://youtu.be/EholQfg35vQ?si=kKaKouedxcsnja2e
(特に17:54~19:15)