現在連載中の長編多文化ファンタジー『帰還の蝶』第3章第5話を掲載しました。
お楽しみいただけましたら幸いです。
<執筆こぼれ話>
本作には、クラムビル紙、ファールサ紙、羊皮紙、ターング紙と、様々な種類の紙が登場します。
一口に“紙”といっても、原材料はそれぞれ異なります。例えば、クラムビル紙はクラムビル(ココナッツ)の木の繊維が元ですし、ファールサ紙は叩いたぼろ布でできています。
クラムビル紙は創作ですが、ぼろ布を原料にする製法は、実際に存在します。751年のタラス河畔の戦いで、アッバース朝に唐の製紙法が伝わったことにより、開発されました。
水も植物も乏しい中東地域にとって、大量にある羊毛から生産可能な布を原料に自給できるというのは、当時としては、かなり革命的だったかもしれません。
紙が普及したことにより、口承から文字へと、伝達方法に変化が起きます。9世紀には、書籍は一般的な商品となりました。
出版市場が形成されたことで、娯楽としての読書が広まりました。アッバース朝時代では、文人ジャーヒズの著作を始め、様々な作品が生まれています(『けちんぼども』は、何度聞いても「可愛いw」と笑顔になってしまいます)。
現代と違う点は、縦置きではなく、平積みして保管することでしょうか。
ノールで使用される羊皮紙は、いわずもがな、そのまま羊皮紙です。クラムビル紙やファールサ紙と同じように、手紙などで製本しない時は、巻いた状態で紐で留めて使用します。
ターング紙は、ターング(唐Tang)製の、いわゆる現代と同じ意味の紙です。本作では、最高級という設定です。大量の水でざぶざぶ漉く紙は、きっとすべすべな良質の紙面だったことでしょう。
紙が違えば、筆記具も、それぞれの文字と風土にあったものを使用しています。またの機会にお話ししますので、楽しみにしていてくださいね。
○主に参考にした動画
【溢れる異国情緒】イスラームの専門家と行く9世紀のバグダード観光/ゲームさんぽ×アサクリ ミラージュ①
https://youtu.be/EholQfg35vQ?si=7lvkfblou4UN-ZX0
(該当部分は27:27~30:01)