はい、というわけで、タイトルそのまんまです。
個人サイト作成中です。
できるかどうかはわかりませんが、ここまで来てやっぱり作りませんでしたってなったら、なんとなく各方面からどつかれそうな予感がしてます(笑)
最近はカクヨム不在も多く、他の方々の近況ノートも小説もあまり読んでいない状況です(すみません)
あ、でも、コメントとか通知は相変わらずばしばし受け付けておりますゆえ!!!(ぱたぱた)
何かありましたら、お気軽にご連絡いただければと思います(ぺこぺこ)
↓↓(プチSS追記)
歯の間に何かが挟まっている。
舌先を口の中で動かしながら、歯茎のあたりを行ったり来たり。
もう少しで取れそうで取れないもどかしさに、歯がゆい思いをしながらベッドの上で一人座り込んでいた時のことだった。
「……何してるんだ?」
「エルス」
部屋に入って来たのは見慣れた黒髪の少年。
無表情ながらも妙なものを浮かべてみせる彼に、ティアは素直に答えた。
「なんか……歯の間にお肉が挟まってるみたいで、取れないんですよ」
「どこだ?」
「奥歯です」
エルスがティアの隣に座り、言ってくる。
「とりあえず口開けてみろ」
ぱか、と言われた通り、ティアは口を開いた。
エルスはティアの歯列をざっと眺めた後、すっと手を持ち上げた。
そして、当たり前のような顔つきで指をティアの口の中に入れ――
「………あ」
蘇るのは、自分とうり二つの顔をした金髪碧眼の青年。
その昔、ティアの口の中に指を入れて、小骨を取った後、血の気が引いた様子で何かの興奮ないし衝動を押し殺していた青年の顔。
――今後、男に指でもそれ以外の部位でも、口の中に入れられたら。
「エル……」
――たとえ相手が僕でも、容赦なく噛みちぎっていい。
ところで、ティア・ロートレックは他人に従順である。
少なくとも、彼女の面倒を見ていたイリーナはそう思っていた。
ティア・ロートレックは、その指示を出した相手のことを信頼しているかどうか関係なく、とっさに他人の言うことに従う悪癖がある。
気持ち悪さや不快感を抱いたとしても、逆らわずに相手の行為を受け入れる。
彼女に感情がないわけでも、ましてや思考力がないわけでもない。
ある者は、それを幼《すなお》さと呼び、あるものは拙《おろか》さと呼び、
――ある者は、歪《かなし》さと言った。
そして、その従順さは、時にこのような場面で発揮される。
つまり。
がぶり、と。
ティアはエルスの指に噛みついていた。
*
エルス・ハーゼンクレヴァは、無意識のうちに他者に絶対的な信頼を寄せる悪癖がある。
少なくとも、ルーシー・ウィシャートとフェイはそう思っていた。
この場合、ティア・ロートレックが、積極的に、もしくは自らの意志で、エルスに危害を加えてくることはない、という信頼だった。
彼に思考力がないわけでも、ましてや他人に対する疑心がないわけでもない。
ある者は、それを愛《おか》しさと呼び、ある者は賢《まっすぐ》さと呼び、
ある者は――愚《きよら》かと言った。
そして、その愚かさはこのような場面で浮き彫りになる。
つまり。
がぶり、と。
エルスはティアに噛みつかれた。
皮膚に甘噛みとは呼べない痛みが走った瞬間、反射的にエルスは指を引き抜いた。
とっさにティアの喉を締めあげてベッドに押し倒そうとする防衛反応を理性で押しとどめ、ティアの様子をうかがう。
「あ…あの……っ、ごめんなさ――!」
心が割れそうなほど悲痛な顔でティアが叫ぶ。
ティアはエルスの手をぎゅっと祈るように握りしめた。淡い光と共に痛みが引いていく。
「ごめんなさい…っ、ごめ……っ、……そんなつもりじゃ……」
「いや、俺もいきなり指入れたし」
「ごめんなさい……」
見てわかるほど肩を落としてティアが謝ってくる。
エルス自身が気にしてないのもあってすっかり忘れていたが、ティアは一度エルスの腕をずたずたにしたことがある。
ティアにとって、誰かに怪我をさせるというのは鬼門だ。
大人しく治癒されながら、エルスは自身の思考回路が信じられなかった。
生き物の本能として、口や急所や敏感なところに触れられたら反射的に逃げるか攻撃されるのは当然だ。
だというのに、口の中に指を突っんだ。
つまり、この少女が自分に危害を加えてくるという可能性を、露も考えなかったことになる。
思いもよらない形で何かの甘さを痛感した瞬間だった。