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聖獣とともに歩む隠者2巻発売記念SS・先生の昔

2巻発売記念SSです!
どうぞお読みください。
多分、書籍版の2巻を読んでからのほうが場面がわかりやすいと思います。

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「うん、先生の解説はやっぱりわかりやすいのです!」

「本当に、先生の解説なしだとこの本をどう読み進めればいいかわからないものね」

「申し訳ありません。その本、入門編といいながら、ある程度の知識と技術を持った技術者向けに書かれた本ですから」

 先生が私の家を出ていく前日の夜、アトリエでエリナちゃんと一緒に先生からいただいた教本についていろいろ説明を受けているのです。
 先生の言う通り、この教本はある程度の知識を前提として書かれた本らしく、私たちの知識じゃさっぱりわからないところもあります。
 でも、そんなところを先生に解説してもらうとすんなり読めるから不思議なのですよ。

「先生、ここはどういった内容なのです?」

「ああ、ここはポーション作製時の注意点ですね。傷薬を作る時とポーションを作る時、どちらも似たような素材でやるのですが、魔力の流し方が違うんです。知識として覚えておくのはいいでしょう」

「わかったのです」

「あの、先生、こちらは?」

「これは……なんで入門編にこんな内容を書いているのか」

「先生、どうしたのですか?」

「ああ、すみません。これは薬草からよりたくさんの魔力を抽出して純度を上げる方法です。魔力水の品質と錬金台の出力、作り手の腕が合わされば一般品の薬草から高品質のポーションなどを作ることが出来る手順になりますね」

「そんなこともできるんですか!?」

「出来ます。でも、はっきり言って入門編で学ぶような内容ではありません。これも知識としてそういうこともあるのだな、程度に覚えておいてください。エリナちゃんにはまだ早すぎる……といいますか、薬草栽培で高品質な薬草も手に入る環境が整うのであればあまり必要とされない技術です」

「わかりました。ありがとうございます」

 この調子でどんどん質問していき、入門編の内容はあらかた聞き終えたのです。
 あとはエリナちゃんとふたりで必要なところを抽出し、反復練習あるのみですよ!

「……そういえば、先生の故郷ってどんな場所なんですか?」

「エリナちゃん、急にどうしたのです?」

「ああ、いや。先生ってすごい知識も豊富で薬草栽培なんてことまで出来るんだし、すごく様々な技術が発達した国か地方の出身なんじゃないかなって」

 そう言われてみればそうなのです。
 薬草栽培なんて方法どころか出来ることさえ知らなかったのですよ。
 錬金術以外の教本も難しいのですが、ものすごい高度な技術も書かれていてこの近隣の地域とは比べものにならないのです。
 先生ってきっと別の国の出身なのですよ!

「どんな場所、ですか。あまり答えられる内容はありませんが、少なくともこの国よりも様々な面で技術が発達していたのは間違いないでしょう」

「そうなのですか?」

「はい。例えば錬金術を例にしてみると、薬草栽培ができるようになったあとは錬金術師ギルドの卒業試験が最高品質のポーション作りだと聞きました。装備品だって少し高級品を買おうとすれば、簡単なエンチャントをかけたものが買えます。高度なエンチャントや複数のエンチャントを同時にかけた装備はやはり高いようですが、それでも注文して作ってもらえば金額はともかく手に入るものらしいですね」

 すごいのです!
 私は家で寝込んでいたのであまり詳しくはないのですが、エンチャント付きの装備品が気軽に買えるだなんて信じられません!
 でも、先生が言うのですからきっと本当のことなのです。
 やっぱり、先生の故郷は技術が発達しているのですよ。

「先生、気軽に買えるってどの程度の気軽さなんですか?」

「うーん。一番初歩的な装備用のエンチャントでしたら、金貨数枚程度の差だったと聞いています。服にかけるもっとも初歩的なエンチャントになると、大銀貨数枚でかけてもらえるらしいですね」

「金貨や大銀貨って……この国じゃエンチャントが使える職人なんて聞いたことがありませんよ?」

「そうなんですよね。僕の故郷ではわりと普及していたのですが」

 先生も故郷のことにはあまり触れてほしくないのか、これ以上は話してくれなかったのです。
 でも、代わりに先生の昔話を聞けました。

「僕が幼かった頃は錬金術の実験が遊びに近かったからですからね。四歳の頃からお婆さまのアトリエに出入りしていろいろ学んでいました」

「四歳なのです!?」

「それって大丈夫だったんですか?」

「常に誰かそばにいましたから。それに、その頃はまだポーション作りも出来ず、魔力水の作製に苦労していた頃ですからね」

「四歳の頃から魔力水作りなのです……」

「ボクたちとは年季が違うね」

「僕の家が裕福だったのもありますけどね。僕の故郷には簡単な錬金術を行うための『簡易錬金布』という道具もありました。最初の頃はそれで蒸留水を作って魔力水を練習していましたね。もちろん、職業が授けられる前ですしうまくはいきませんでしたが」

「さすがに普通なのです」

「それでも出来ていたらちょっとすごすぎます」

「あはは。ともかく、僕は子供の頃から文字や言葉の勉強、剣術の訓練、錬金術の勉強ばかりで過ごしていました。アリアと出会ったのは五歳の時でしたが、アリアと出会ったあとも一緒になって訓練ばかりしていましたね。おかげで六歳なのに一般的な魔術書が読める変わり者がふたり出来上がりましたが」

 うーん、先生の昔話はどうもうさんくさいのです。
 でも、それくらいしていないといまの時点でこれくらいの実力にはなっていないとも思うのですよ。
 先生の年齢は十三歳だと聞いていますし、私やエリナちゃんとは二歳しか差がありません。
 それなのに、圧倒的な知識と技術の差があるのは幼い頃からの勉強量の差なのでしょう。
 でも、私たちだって先生の弟子になったのです。
 先生みたいに立派な錬金術士になってみせるのです!

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皆さん、よろしければ買ってくださいね!

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