意外と、皆さん没原稿の方にも興味があるみたいで、前回結構イイネを頂きました(笑)
やはり物書きとしては没案を晒すのには抵抗が有るのですが……
他の人がやらない分、ちょっと楽しいんですよね(笑)
なので今回も晒させてもらおうと思います。
今回はガッツリと内容を変えたパターン!
ま、この文字数を一から消しちゃうから毎日投稿できなくなっちゃうんですが(笑)
あ、流石に何度も没案を晒すのは恥ずかしいので、このネタは今回がラストと言う事で(笑)
読み比べて楽しんで頂けたら没にした甲斐もあります(´_ゝ`)b
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畑の様子を一通り見た後、クリンは例によって一族総出の夕食に招かれ、少年の環境では珍しい賑やか過ぎる食事となっていた。
最も、クリンは単にご馳走になるだけでなく、幾つか料理を披露している。何故かと言えば――
「いやぁ、ボウヤから包丁ってやつを貰って以来、料理ってやつが面白くなっちまってね! 刃物の切れ味が良いだけであんなに料理が楽になって、気のせいかもだけど普段の料理が一味上がった気がするんだよ!」
と、最初から大歓迎の上機嫌状態の奥さんにより、
「それに前に作って貰ったエダマミィ料理やレイシィ料理は本当に美味しかったから。お客さんとして来て貰った所悪いんだけれど、出来ればまた料理を教えて欲しいんだよ!」
と言うお言葉を頂いたためである。
「まぁ別に構いませんが……どう言った料理が宜しいですかね?」
「そりゃぁ勿論レイシィ料理さ! 前に教えてもらった……チャハーン? とか言うのは美味かったけど、アレでウチの連中がレイシィ好きになっちまってねぇ! 去年収穫した分で何度か作っているんだけど、流石にレパートリーが少なくてねぇ。レイシィが食べられる事を知っていたボウヤなら他にも食べ方知っているだろう?」
と、言う事で米料理を作る事と相成った。しかし、現在は露店帰りにそのままこの場にお邪魔しているので、農具の修理用の道具一式と露店で使用した鉄鍋位しかない。
調味料やハーブの類いは全てテオドラの手習い所に置いて来たし、材料もない。幸い食材に関しては農家であるこの家に大量にあるのだが、農家だけあってほぼ野菜だけだ。
「ふむ……と、なると野菜のパエリア辺りが良いかも知れませんねぇ」
頭を悩ませたクリンは、現状で一番作りやすそうなメニューをチョイスした。本場スペインではパエリアを作るのならサフランは必要不可欠とされる。
サフランは染料としても使われるが、香辛料としても古くから使われている。また薬効も高いとして鎮痛、鎮静剤の材料としても用いられている。
勿論この世界にも近在種が存在しており、前世地球と同じく高価な香辛料で、一グラム程で銀貨一枚(約千円)で取引されている超高級品だ。
幾ら手広くやって設けているこの農場でも流石にそんな物は無い……と、言いたい所なのだが、実はある。
何せこのサフランは香りが良く鎮痛効果もあるし鮮やかな黄色が出る為に古くから人気のある香辛料。そんな物が量産されない訳が無い。
しかし、栽培も難しいのがこのサフラン。なのだが。実は品質を考えなければ割と普通に育つ。最高級品の、真っ赤な花弁を持つサフランは確かに一グラムで銀貨が持って行かれる。しかし、古くから親しまれている香辛料がそんな値段では暴動が起きる。
そこで前世地球と同じく、こちらの世界でも品質が著しく悪い粗悪品が、庶民向けとして流通している。
上級品はほぼ王侯貴族にしか買えないが、中級グレードなら庶民でも富裕層が買え、下級グレードになれば庶民でもチラホラ買える者が出て来て、最下級の粗悪品であるのなら一束幾らで買える。ただ、ココまでになるとほぼサフランの匂いが少しするだけの、薄い何かになってしまうのだが。
野菜売りのオヤジの家には下級品のサフランが常備されている。これで布を染めれば虫に食われにくくなるし、食べ物の痛みを抑える効果に虫歯や腹痛、頭痛の時の鎮痛剤としても使われるので、大体の農家ではサフランはお守り代りにストックしているのがこの辺りの習慣だそうだ。
因みにこの習慣は前の村周辺には無い習慣で、クリンも野菜売りのオヤジの所に来るまで知らなかった事である。
「ま、流石に最高級程の香りは無いですが、パエリアっぽい香りは付くでしょうから、使わせていただきましょう」
人数が人数であり一度に作るのは無理として、持参した鉄鍋の他にもこの家の大鍋を四つ借りて別の家の竈も併用しながら作る事にする。
「作り方自体は難しくありません。乱暴な言い方をすれば米……レイシィをスープで煮るだけです。色々と具材を変えればバリエーションが幾らでも作れます」
そう説明しながら先ずは鉄鍋で何時もの様に干し肉を煮て出汁を取り、その中にレイシィを入れる。低品質の物とは言えサフランも使うので予め研ぐ事はしない。
「理屈はわかりませんが、本来臭い糠もサフランと似る事で香りが合わさって丁度良くなるとか。日本の……ボッター村のコメでやってもぶっちゃけ旨くは無いので、恐らくこの種類のレイシィにあった調理法なのでしょうね」
此方の世界の米で作るのは初めてだが、ゲームでは米の香りも再現されており、長粒種(とクリンは思い込んでいるが実際は中粒種)との相性がいい事は知っている。
「う~ん……アタシもこの前ボウヤから教えて貰ってから干し肉だの塩漬け肉や骨なんかで出汁ってのを取る様になったけど、腕の違いかねぇ。ボウヤがやると香りが違うね」
クリンが取っている塩漬け肉の出汁から香る匂いにウットリと目を細めながら奥さんがそう言うが、実の所クリンは干し肉以外にも香味野菜を入れて煮込んでいる。
「多分下処理の差だと思いますよ。塩漬け肉と言っても全く傷まない訳では無いので、それらの匂いを打ち消せる様な香味野菜と煮ているからこの匂いが出ているだけですよ」
まだ匂い消しと言う概念がこの辺りにはないので、この少年の様に食べない野菜を煮込む意味が理解出来ていない為、この奥さんが作る時は省かれている。
「ふぅん、そうかい。勿体ないと思っていたけどココまで違いがある事が分かるとなればアタシもやってみるかねぇ」
料理に目覚めたというの本当らしく、クリンの言葉に興味深そうに頷いている。出汁が取れたら塩漬け肉はそのまま具材にし、香味野菜だけを取り除く。
「勿体ないと思うなら煮込んだ野菜を刻んで小麦粉で練って団子にして、油で揚げ焼きにして汁物に入れれば具になりますし、面倒ならそのまま汁に入れてしまえばいいです」
「成程、そうすれば具にもなるし、面白いかもねぇ」
奥さんが感心している間に、汁の中にレイシィを入れて煮込んでいく。このまま汁気が無くなるまで煮込んでいくだけだ。
勿論これだけでは現状ただ煮汁で米を煮ているだけだ。その合間に野菜売りのオヤジの畑で取れた人参、玉ねぎズッキーニなどを厚めの輪切りにし別の鉄鍋でグリルしていく。
「焦げ目が付いたら、この煮詰めているパエリアの上に乗せて、後は塩を振りかけて味を調えて、あとは汁気が無くなるまで待つだけです」
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没の理由=飯テロにしようかと思ったけど、この後さらに修理編書くんだから別に無くても良くね?
です(笑)