無自覚系最強主人公は、本当に“気持ちよく読める存在”なのだろうか。
今日もランキングを巡回する。今回開いた作品はこちら。
『異世界英雄のやり直し。日本に転生したので今度こそ職人として生きます。
〜学生レベルの装備を実用レベルに調整したら国家機密級の価値がついた件〜』
付与魔法や錬金術での物作りが好きだった異世界の英雄ノア・ウォーカーは、死の直前、自らが生み出した「理外の刀」で死の理を断ち切り、日本の探索者養成学校に通う少年・神木乃空へと転生する。
舞台を現代日本へと移し、今度こそ「モノづくり」に没頭する人生を送ろうとする――そんな導入だ。
ジャンルは現代ファンタジー。
元英雄ということで中身は最強のおじいちゃんだ。
そして無自覚系主人公でもある。
正直に言えば、無自覚系の時点で私の好みからは外れている。
それでも読み始めた理由はひとつ。私の好きな“ものづくり”作品だったからだ。
本作の面白い点は、異世界の「感覚的な術式」と、地球の「論理的な数式」を融合させることで、新しいアイテムを作り出していく、という発想だ。
異なる体系の知識を掛け合わせるという点がどのように描写されるのか、期待を持って読み進めていった。
しかし、読み進めるうちにどうしても引っかかる部分が出てきた。
それはやはり主人公の性格だ。
いわゆる「俺また何かやっちゃいました?」系の無自覚主人公。
このタイプが成立するかどうかは、作品のトーンに大きく依存する。
たとえば『陰の実力者になりたくて!』のように、徹底したギャグコメディであれば問題はない。
『嘆きの亡霊は引退したい』のように、勘違いそのものを笑いに昇華できる構造でも成立する。
だが本作は、そこまでコメディに振り切ってはいない。
むしろ作品全体のトーンは、真面目な物作りだ。
主人公は異世界の技術を使い、地球ではあり得ない性能の装備やアイテムを生み出していく。
ビルすら切断する武器。
空間収納できるカバン。
これらが社会に与える影響は、少し考えれば誰でも想像できる。
ひとつの技術で、防犯・軍事・国家運営そのものが揺らぎかねない。
それにもかかわらず、主人公には倫理観や大局観といった視点がほとんど見られない。
あくまで「また何かやっちゃいました?」というだけだ。
このズレが、読んでいてどうしても引っかかる。
私には、迷惑系ユーチューバーを見て楽しむ構造と同じに見えてしまう。
例えば、好き勝手に物を作るドワーフ職人がいたとして、それがサブキャラなら味になる。
だがそれが最強主人公になると、コメディとして笑えるラインを越え、周囲が振り回されている状況がそのままストレスとして伝わってくる。
ヒトクローンが技術的に可能でも誰も実行しないのは、そこに明確な倫理とルールがあるからだ。
「ものづくり」とは、本来社会を良くするための営みである。
その前提を無視した行為は、もはや創造ではなく害悪に近い。
読み進めているうちに、「次は何を作るのか」という期待よりも、
「これでまた周りが振り回される」
という感覚の方が先に立つようになってしまった。
この感覚が出てきた時点で、私との相性は外れていたのだと思う。
結局期待していた「ものづくり」も、「感覚的な術式」と「論理的な数式」の具体的な組み合わせは描かれず、中身は魔法でポンという印象に留まった。
残念ながら今回は、キャラクターの思考と行動に違和感が積み重なり、途中で読むのを止めてしまった。
ただし、刺さる読者ははっきりしている。
異世界魔法術式×現代理論という発想に魅力を感じる人。
そして、無自覚系主人公に振り回される周囲の大人たちをコメディとして楽しめる人。
そういった読者には、この作品は十分に面白く映るはずだ。
ランキング作品を読むことで、こうした“相性の違い”も含めて新しい発見がある。
それもまた、ランキング巡回の楽しさのひとつだ。
さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。