この物語は、私が読みたいものをとにかく詰め込みつつ、整合性を取りながらどうにか書き上げたものです。
といっても、そう苦しかったものではなく、執筆中はとにかく毎日続きが書きたくて仕方がない、という状況で筆を走らせていました。なんだったら、これから行う語りと、今後生まれるかもしれない二次創作が見たくて書いた節が……2割はあります。嘘、もっとあるかもしれません。
物語の構想
メイド・バトル・百合、をどう融合させるか、ということばかりを当初は考え続けていました。同時に、私は「世界設定を作る」のが好きで、「魅力的なキャラクターを生み出す」のはとても下手なので、どうしたらキャラクターが生き生きする世界を作れるか、ということばかりに意識を向け続けていました。
その結果が、なんちゃってヴィクトリアン世界と、そこで行われる能力バトル的なものになりました。もっとも、どちらも中途半端ですけど……一応、イメージとしては18世紀後半~19世紀のイギリス・フランスあたりを想像して書いています。技術もなるべくそのあたりに、でも便利すぎるものは発展しない(レムナントの利便性が技術の大発展を阻害している)、といった具合です。
レムナント
もともとは全く違う設定のために生み出したものでした。もっとがちがちに固めたファンタジー世界の設定で……女神たちの言葉と教えを伝える「神官」たちが持つ力、というものでした。それが政治外交の力としてうまいことマッチしたのは嬉しい誤算でした。
もしかしたら、このティーメイドとコーヒーメイドの世界は、本来のファンタジー世界と地続きの未来なのかもしれません。だとすると、宗教色が出ていないところを見るに、しっかりと神学、宗教学が政治と切り離されて発展した世界なのかもしれません。
キャラクター
もうご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、トーヴェはかのムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン、ヴィヴィカはそんなトーベの恋人、ヴィヴィカ・バンドレルから名前をお借りしました。
さて、そんなトーベ・ヤンソンが挿絵を担当した本の一つに、不思議の国のアリスがあります。私の大好きな本の一つで、他のキャラクターはここから名前を拝借しました。
チェシャはわかりやすいですね。にやにやしながら消えるチェシャ猫です。
タピラはレムナントである「物を縮小・拡大する力」からわかる通り、キノコの上で水煙草をふかしていたイモムシ、ca”terpillar” から。
メアリーとアンは白ウサギの侍女メアリー・アン(作中で登場はしませんが、アリスがこの子と間違えられています)から。
イスタはオイスター、ワルルスは英語でセイウチ(発音としてはワールスです)、ダイクはそうなるとおのずと、セイウチと大工の大工からです。
ビスケッタはわかりづらいですが、鏡の国のアリスで「同じ場所に留まるために」、全速力で走る女王とアリスのエピソードから。ここで女王が、喉が渇いたアリスにビスケットを渡しています。確かビスケットだった気がする……クッキーだったかな……?
エルシーは最初、眠りネズミがモデルでした。眠たげな描写がその名残なのですが、ドーマウスはあまり上手に名前を弄れず……眠りネズミが作中でアリスたちに語る物語の中に、井戸の底に住む三姉妹の話があり、その中からエルシーという名前を使わせていただきました。
アリス、ロレーナ、イーディスは物語が贈られた少女、アリス・リデルとその姉妹たち。ベルマン氏はルイス・キャロルの別作品である「スナーク狩り」に登場する、スナーク狩りを行う一団のリーダーの男の名前です。
そして敵として登場したミンスター・ウェスト。彼はアリスの派生作品である「ウェストミンスター・アリス」から。これは読んだことがないのですが、アリスのキャラクターでイギリスの政治を風刺した内容、ということで、ヴォーパル家へ敵対する存在としていいのかな、と思いました。ただ、研究者になってしまったのは、物語の都合ですね。本当は政治的に敵対するキャラにしたかった。
反省
この通り様々な思惑を混ぜて生み出した「ティーメイドとコーヒーメイド」ですが、反省も多々あります。物語として鮮やかに、素晴らしく完結した一方で、もっと政治的な戦いを描いたり、キャラクターの個性を前面に押し出したりしたかったな、と思っています。能力バトル、メイド、百合を「珈琲豆と紅茶の価格競争」でひとまとめにしようとしたのがうまくいきませんでしたね。発想としては美しいとは思うのですけど、上手な人が書けばおそらくもっときれいにまとまるんじゃないか……? と思ってしまいます。
一方で、仮面ライダー鎧武でも戦国・フルーツ・ダンスの三つの要素を強引にまとめようとした結果、虚淵さんですら「戦国とフルーツはどうにかなったけどダンスはどうしても難しかった」とおっしゃるくらいなので(要出展)、素人である私はまぁ、よく頑張った方なんじゃないかな、と自らを励ますことにしています。
今後
愛着と伸びしろのあるこの世界なので、勢いそのままに続きを書いています。ミンスター・ウェスト伯爵の研究がヴィヴィカたちを襲った「能力バトル」的な側面とは違い、もっと政治バトルに寄った内容になっていっている……と今(2026年1月)は思っています。今後これがどうなっていくのか……自分でもわかりませんが、私が一番楽しみにしています。もちろん、完成したら公開する予定ですので、もしこれを読んでくださっている稀有な方がいましたら、ぜひともお待ちいただければ幸いです。