『名前のない皇統 ―六百年目の偶然―』
2026年の夏ごろ、皇室典範の改正のニュースや、その周辺の議論をテレビでよく見ていました。
女性皇族がどうとか、男系がどうとか、旧皇族がどうとか。
正直、全部ちゃんと理解できていたわけではないんですが、ニュースを見ながら、
「もし南朝の男系の子孫が、実はずっと続いていたらどうなるんだろう」
と思ったのが、この話を考え始めたきっかけです。
しかも日本の中だけで続いていたのではなくて、琉球、中国、東南アジア、ヨーロッパと移動して、その土地の人たちと結婚しながら、それでも父から子への系譜だけは残っていたら面白いな、と。さらに、その末裔本人は何も知らない。
その人がたまたま現代の皇女と出会ったらどうなるんだろう。そんな感じで考え始めました。
ただ、皇室とか皇統とか、結構扱いの難しい題材なので、陰謀とか権力争いとか、ものすごく悪い人が出てきて話を引っかき回すような方向には、できるだけしないようにしました。誰かを悪者にするより、研究者ならどう考えるのか。記者ならどこまで書くのか。政府や宮内庁ならどう扱うのか。世間は最初は騒ぐだろうけど、そのあとどうなるのか。
そんなことを、自分なりに考えながら作っています。
「こういうことが本当に起きたら、偉い人たちは何を考えるんだろう」とか、
「結局、日本人ってこういう話題が出たとき、最後はどうするんだろう」
みたいなことも結構考えました。
歴史や制度の話も出てきますが、最終的に書きたかったのは、誰が皇位を継ぐとか、失われた地位を取り戻すとか、そういう話ではありません。
六百年前に生かされた一人の子供と、そのあとを普通に生きてきた家族。
それから、自分たちの知らないところでどんどん歴史的な意味をつけられてしまった二人が、それでも最後は自分たちで人生を選ぶ。
そんな話です。
全編はすでに書き終わっています。
順番に更新していきますので、もし少しでも気になったら、最初の数話だけでも読んでもらえたら嬉しいです。