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⭐️500記念!!全てを失う悲劇の悪役による未来改変  原作編

これは、本来あったであろう小説、ヴァニティファロスの本編。転生したアクセルが如何に奮闘し、悲劇になるはずであった未来が変わったかが分かる……そんな残酷で虚しい、救いようのない物語。





「あ、姉上?」

イベルアート家の屋敷に響いた声の主は
レステンクール家の次男、アクセル。

彼は足取りが重いと感じながらも血を吐いて倒れている実の姉、マリアの身体を起こす。

「……姉上……起きてください…!姉上っ、姉上!!」


場は騒然としていた。
ジークは門にいる騎士にリアーヌやアルマン、バレロナを呼ぶように指示をする。

ソフィアはその現実を受け入れられないのか、身体をガクッと落として、マリアの方を見ている。

マエルはイベルアート家に問い詰めるが、ディミトリィは何が何だか分からない様子……しかし、マリアの同級生、セミカは表情を醜くしながら弧に歪ませて、マリアを見下ろしていた。


「……ざまぁないわっ」

そしてそれは、その場所にいるバレロナも同じで彼らを見下ろしていた。





その後、レステンクール家は混沌としていた。
マリアは毒を摂取したことで死亡、それによるレステンクール家は多大な精神ダメージを負ってしまう。

また、バレロナの働きにより、彼らが治るレステンクール領にいる人達はレステンクール家を不穏に思い始める。

それにより、支持率の低下。不穏な空気が常に漂い始める。

また、ゼノロアに加担している貴族の調査は禁止。

「何故…何故なのですバレロナ様!!奴らはここまで証拠を残してるのですよ!!何故、許可を貰えないのですか!?」

アルマンが声を荒げるがバレロナはまるで諦めたようにふぅっと息を吐き…

「……そんなことをしたって、娘は帰ってこないではないか」

そんな、後悔と雑念が混じり合った声色にアルマンは何も言えなくなってしまい…結局のところ、調査は行わず、そのまま闇の中に葬られる。

その後、マエル率いるレステンクール家はそのまま街に帰還。

だが、その不穏な空気の悪さに唖然としてしまう。

「……ペレク家め」

その呟きと共に、マエルは未だに優れてない顔色をしながら、兄のアルマンと泣き崩れている母のリアーヌと共に屋敷に帰還する。

「……私たちも、一先ず駐屯区に帰還します」

ジークがそう言い放ち、モルクと共に去っていく。

残ったのは、今も感情を感じ取れない無表情のアクセルとそんな兄を心配そうに見つめているソフィア。

「……お兄様、帰りましょう?」

そう言い、ソフィアは彼の手を取って再び歩き始める。





「ヒャッハー!!こいつらは貰っていくぜ!!」

そう言いながら、ソフィアとリアーヌを連れ去ろうとしている盗賊ども。

アクセルは彼らにバレないように隠れているためなんとか生き延びていた……しかし、地面を見ると……。

「……ち、父上?兄上?」

ピクリとも動かない、血溜まりが出来ている程の血を流し続けているマエルとアルマン。

「……父上!!兄上!!」

——レステンクール家は崩壊寸前となっていた。

大量の盗賊の襲来と、彼らの協力者である魔族の弱体化の魔法薬により、騎士は全滅。

「団長……い、生きてください…!」

「だ、駄目だ!生きろ、頼む生きてくれ…!
くっ、離せ!私はまだ……まだ…!」

騎士の団長であるジークはマエル達を守れなかった後悔により、死闘を繰り広げていた。

しかし、彼女に恩があった騎士達により、彼女は彼らの犠牲により、生きることとなる。

住民も大量に殺され、建物の被害も過去最大。残ったのは、のこりわずかになった住民と、森にいるであろうジーク、そして…‥アクセルだけめあった。





「いやぁ、今日も気持ちよかったぜ!まさかあんな別嬪二人が手に入るとはな!」

「あーあの大人の女の方は最高だったぜ。喚き散らかすし、弄りがいがあった……だが、子供の方も堕とし甲斐があってたまらん。いやーやっぱりペレク家様々だな!!」

そう言うのは、盗賊であった者達だ。
彼らは新たに王になったゼノロアにより昇進し、今では彼の立派な騎士に。

……ここイメドリアは彼らの策略により革命が起こり、そしてゼノロアはその国王となっていたのだ。


「…おい」

どこからか声が聞こえた。振り向くとそこにはボロボロな布を着ている彼らからしたら一人の少年
がいた。

「あ?なんだお前?餓鬼がこんなところにくんじゃ……」

すると、その少年は持っている武器を彼の頭に刺して、もう一人の男を押し倒す。

「おわっ!お前ぇ…!」

「……妹と母はどこだ…‥教えろ!」

その少年‥アクセルはそう聞くが、それに対して男はバカにしたように笑い……。

「はっ!最近発見された洞窟にいるんじゃねぇか?まぁ死んでるだろうがな!ハハハハ!!」

「ッ!あぁああああ!!」

その後、その男を滅多刺し。その勢いのまま王都を飛び出す。

(まだだ……まだ、二人は無事なはずだ……!早く助けにいかなきゃ…!)


あの後、隣町の村に魔物の住処で発見されたジークとともに保護されたアクセル。


しかし、ジークはその生真面目な性格により、後悔を積もらせ、そのまま首を吊って自殺。


アクセルはそのジークの姿にショックを受け、しばらく寝たきり状態になるが、二人を探さなければという思いから村を出て、三年かけて、二人を探していた。


そして洞窟についたアクセル。
持っているのは一本のナイフのみ。
だが、ここに母や妹がいると思えば、まだ希望は持つことが出来た。

その思いはアクセルを強くさせた。

洞窟内にいる盗賊は一人残らず全滅させ、その中にいたリーダーであろう盗賊も死闘を繰り広げ、無事に倒すことが出来た。


「…はぁ、はぁ……母上……ソフィア」

彼らとの戦いにより負傷したせいで身体が重い。
だが、やっと二人を助けることが出来る。


その一心に今もじっと身体を動かさずに待っているであろう二人のところに行く。


「……ッ!母上、ソフィア!助けにきま……」

だが、言葉は続かなかった。

そう……それは、受け止めきれない現実を突きつけられてるようであったのだから。

無惨な姿となって……母のリアーヌと妹のソフィアは……発見された。


「は、母上…!ソフィア!起きてくれ!頼む、二人がいないと、俺…!」

だが、その声は届かない。
それを理解したのだろう、アクセルは地面に膝をついて、そのまま上を向く。


「……は、ははは……はははは」

























「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」


あぁ…どうして、こんなにも現実は残酷なのだろうか?

聞いたことがある。現実は残酷だ、けれども美しいと。

……これのどこが、美しいんだ?

残酷な現実なんて……美しくともなんともない、ただ……虚しいだけじゃないか。



「……もう、いいや」

——この世界、壊そう







「……お兄様」

そう呟くのは、おそらく勇者であろう者の仲間である……死んだはずのソフィア。


「……生きてたのか、ソフィア」

生きてることなら驚きつつも、ただそれだけだと理解して悲痛に埋もれている彼女を見つめる。

「お兄様……こんなことやめましょう?まだ、やり直せるはずです。私と一緒に…」


「やり直して、何になる?」

ソフィアの言葉を遮るように、俺は目に光を灯さない黒い瞳を宿しながら答える。


「こんな世界、残酷で何もないじゃないか?
姉は毒で死に、父と兄は殺され、ジークは自殺…そして母とお前は奴らの遊び道具にされた」

「そ、それは……」

「……現実は残酷だ。そして、それ以上に…‥虚しいものなんだよ、ソフィア」


それを、あの時理解できた。

全てを失い、残ったのはこの心の中にあるポッカリと空いた空虚。

「もし俺の妹なら……俺の邪魔をしないでくれ」

そう言って、十二種類の魔法を展開するアクセル。

だが、ソフィアと勇者であるアレス達は俺に立ち塞がるように構え出す。

「……力ずくでも、止めて見せます。貴方を……だって……そんな悲しそうな表情をしているのですから」

「……ふっ、それはきっと昔の面影を見ているだけだソフィア。さぁ、来い勇者ども」





「この俺、虚無のアクセルがお前達を……破壊してやる」





世界は救われた。
闇という脅威は去り、さらにその上の脅威であった混沌の魔女も無事に葬り去ることに成功した。


一見これだけ見ればハッピーエンドだろうが……何故なのだろうか。


この物語が……虚しさしか残されていないのは。



END

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